テルライト(テルル酸塩イオン TeO3^2−)とは:性質・生成・テルル石(TeO2)の特徴
テルライト(TeO3^2−)の性質・生成法を解説。弱酸化剤としての挙動、HTeO3−や亜テルル酸の形成、希少鉱物テルル石(TeO2)の色・産状も詳述。
テルライトはイオンの一つで、化学式は TeO32-(英: tellurite ion)です。これは酸化数 +4 のテルル(Te(IV))を中心にした酸素配位体で、より酸化されたテルル酸塩(テルラート、Te(VI))や還元されたテルル化物と比べて中間的な性質を示します。テルライト塩は一般に弱い酸化剤として振る舞い、加熱や強い酸化剤の存在下でさらに酸化されてテルラート(TeO42- など)になります。
性質と構造
TeO32- イオンは、中心のテルル原子が3つの酸素と結合し、1対の孤立電子対を持つため、三角錐形(ピラミッド形)に近い構造を取ることが多いです。多くのアルカリ金属テルライト(例: Na2TeO3, K2TeO3)は水に可溶で、淡黄色から白色の固体として存在します。テルライト塩は毒性があり、微生物や生体細胞に対して毒性を示すため取り扱いには注意が必要です。
酸塩基・平衡
テルライトは塩基性条件で安定し、酸性度によって以下のようなプロトン化平衡を取ります。
- 中性〜弱酸性では、プロトン化されて水素テルライト HTeO3- が存在します。
- さらに強い酸性条件では、二水和体としての弱酸であるテルル酸(テルル(IV)酸、概ね H2TeO3 と表される形)に近い形態が支配的になります。
一方、酸化剤により酸化されるとテルライトはテルラート(Te(VI))に変わり、逆に還元されると元素テルル(Te)やテルル化水素、テルル化物になることがあります。
生成と代表的な反応
テルライト塩は二酸化テルル(TeO2)を塩基と反応させることで得られます。典型的な反応例:
TeO2 + 2 OH- → TeO32- + H2O
また固体反応や加熱条件下で金属酸化物と反応させることにより、対応する金属テルライト塩(例: Na2TeO3)が得られます。酸化剤(例えば過酸化水素や過マンガン酸塩)を用いると Te(IV) から Te(VI) へ酸化され、テルラート種が生成します。
用途と安全性
- テルライト塩は微生物学で選択培地の成分として利用されることがあり、一部の細菌に対して選択的な抑制効果を持ちます。
- ガラスやセラミックスにテルル酸化物を添加すると高屈折率や特異な光学特性が得られるため、光学材料やアクースト光学素子などに利用されます(主に TeO2 に関する用途)。
- しかしテルル化合物は一般に毒性があるため、取扱い時は吸入・経皮吸収・誤飲を避け、適切な防護具と廃棄処理が必要です。
テルル石(鉱物)について
テルル石は、天然に産する稀な鉱物で、成分は主に二酸化テルル(TeO2)です。外観は黄色〜白色で、酸化帯(鉱床の酸化された上部)に産することが多く、近傍にはテルル化物鉱物や遊離テルル(ネイティブ・テルル)が見られることがあります。結晶は斜方または正方晶系に属する場合があり、光学的・物理的性質から鑑定されます。
まとめると、TeO32-(テルライト)はテルルの +4 の酸化状態を示す重要な酸素配位イオンで、化学的には酸塩基反応や酸化還元反応に敏感に振る舞います。実験や工業応用ではその毒性と反応性を理解した上で取り扱う必要があります。


鉱物としてのテルル石
関連ページ
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