『ザ・パワー・オブ・ワン』とは|ブライス・コートニーの南ア小説と映画化
ブライス・コートニー作『ザ・パワー・オブ・ワン』の小説と1992年映画化の違いや背景、南ア舞台の成長物語と登場人物Peekayの魅力を詳解。
The Power of Oneは、オーストラリアの作家Bryce Courtenayの小説である。1989年に初版が発行され、1930年代から1940年代にかけての南アフリカを舞台に、イギリス系白人の少年の成長を描いた物語として国際的に広く読まれている。主人公はやがて「Peekay」というニックネームで呼ばれるようになる(著者はこの呼び名を、彼の以前のあだ名「Pisskop」に由来するものと説明しており、アフリカーンス語で「小便小僧」を意味する)。映画版では主人公の名前が Peter Phillip Kenneth Keith とされるなど、原作と異なる設定変更がある。
あらすじ(概略)
幼少期に両親と引き離され、寄宿学校や差別の横行する社会の中で育つ少年Peekayが主人公。学校や地域でのいじめや民族・階級による差別を受けつつ、生き延びるために独自の信念と技術を身につけていく。彼はボクシングを通じて自分を鍛え、複数の師や友人から学びながら精神的にも成長していく。物語はPeekayが大人になってから回想する一人称の語りで進み、個人の力と希望が抑圧にどう対抗するかを描く。
主な登場人物(抜粋)
- Peekay:物語の語り手であり主人公。幼年期の被害経験を抱えながら成長する。
- 師匠・仲間たち:Peekayを導くさまざまな年長者や友人たち。彼らから技術や生き方、倫理を学ぶ。
- 差別・抑圧を象徴する存在:学校や社会の構造、時には個別の人物として描かれ、Peekayの成長の障害となる。
テーマと背景
本作は成長小説(ビルドゥングスロマン)であり、以下のようなテーマを扱う。
- 個人の力(The Power of One):一人の人間が持つ影響力と、それが周囲に与える変化。
- 人種差別と社会的分断:当時の南アフリカ社会に根付く人種・民族間の対立や不寛容が重要な背景となる。
- 師弟関係と学び:複数の師や仲間との関係を通じて、技術だけでなく倫理観や生き方を獲得していく過程。
- スポーツ(とくにボクシング):スポーツが自己肯定感や抵抗の手段として描かれる。
文体と語り
小説は一人称視点で書かれており、Peekay(大人になった語り手)が回想する形をとる。その語りは個人的な感情や考えを読者に託す一方で、場所や出来事の詳細な描写よりも人物の内面や意味づけに重心を置いている。感情豊かで叙述的、また時に寓話的な語り口が特徴である。
映画化とその違い
1992年に映画化され、国際的に公開された。映画版は原作の主要なプロットを踏襲しつつ、登場人物名や設定、エピソードの取捨選択が行われており、原作ファンからは「改変が多い」と評価されることもある。原作と映画では描写や重点が異なるため、両者を比較して読む(観る)ことで違った視点が得られる。
評価と影響
公開後、The Power of Oneは多くの読者に支持され、国際的なベストセラーとなった。一方で、物語の描写が簡略化されている、登場人物や社会問題の扱いが単純化されがちである、という批判もある。いずれにせよ、個人の成長や差別への抵抗を描く作品として教育現場や読書クラブなどで取り上げられることが多い。
補足・作者について
Bryce Courtenay自身は南アフリカでの経験を下地にして執筆しており、本作は部分的に自伝的要素を含むとされる。作品は多言語に翻訳され、世界中の読者に読まれている。
原文の構成や登場人物の呼称には、言語や翻訳、映像化の過程で差異が生じる場合があるため、原作と映画、翻訳版を比較して読むことをおすすめする。
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