渦度とは流体力学の定義・式(カール・ベクトル)と物理的意味・計算例
渦度は、流体力学で用いられる数学的概念で、流体中の局所的な「回転の強さ」や「回転角速度」に対応する量です。直感的には、流体要素がどれだけ回転しているかを示す指標であり、渦やせん断の有無・強さを定量化します。
渦度の定義(循環との関係)
ある小さな面積領域における平均渦度は、その領域境界に沿った循環 を面積 A で割った値に等しく、すなわち
ω a v = Γ A {\displaystyle Γ A {\omega _{av}={\frac {\Gamma }{A}}}}}
面積を無限小に縮めていく極限で得られる点での渦度が、厳密な定義です:
ω = d Γ d A {\displaystyle Γ d A {\omega ={\frac {dGamma }{dA}}}}}
ベクトルとしての渦度—カール(回転)
数学的には渦度はベクトル量で、速度場 v のカール(回転)として定義されます:
ω → = ∇ → × v → .♪♪displaystyle {pos(100,000)}={pos(100,000)}times {pos(100,000)}V}.}
成分で表すと、3次元直交座標系 (x,y,z) における渦度ベクトルは
- ω_x = ∂w/∂y − ∂v/∂z
- ω_y = ∂u/∂z − ∂w/∂x
- ω_z = ∂v/∂x − ∂u/∂y
ここで u, v, w はそれぞれ x, y, z 成分の速度です。
物理的意味と直感
- 渦度の方向は回転軸を示します(右ねじの法則に従う)。
- 渦度の大きさはその点での「回転の強さ」を表し、局所的な角速度 Ω と関係します。剛体回転(固体回転)の場合、渦度は角速度の 2 倍になります(ω = 2Ω)。
- ポテンシャル流(渦度ゼロの流れ)では、境界層や物体周りの分離領域など特定の領域を除いて渦度はほとんどゼロです。これは多くの理想流体理論の基本仮定です(境界層近傍を除く)。
- 渦(vortex)は渦度が集中した領域を指し、実務ではこれらを渦核や渦管などでモデル化します。
例:いくつかの簡単な計算
1) 剛体回転(円筒座標系)
角速度 Ω の剛体回転では周方向速度 vθ = Ω r。円周を一周する循環は Γ = ∮ v·ds = 2π R · Ω R = 2π Ω R^2。面積 A = π R^2 であるから Γ/A = 2Ω。したがって渦度 ω_z = 2Ω となり、Ω = ω/2 が確認できます。ここでは渦度は一定で、回転の強さが一様です。
2) 単純せん断流(2次元)
速度場を (u,v) = (k y, 0) とすると、渦度の z 成分は
- ω_z = ∂v/∂x − ∂u/∂y = 0 − k = −k
したがって一定の(負の)渦度を持ちます。せん断により全域にわたって回転の性質が生じていることを示します。
渦度の時間発展(概観)
粘性のある不均一な流れでは渦度は移流、伸長(vortex stretching)、粘性拡散などの効果で変化します。代表的な渦度方程式(非圧縮性、粘性流体)を簡略に書くと:
Dω/Dt = (ω · ∇)v + ν ∇^2 ω
ここで D/Dt は物質微分、ν は動粘性係数です。左辺は流体要素に随伴した渦度の時間変化、右辺の第一項は渦の伸長・再配列(渦強化や弱体化に寄与)、第二項は粘性による拡散(渦度の平滑化)を表します。
応用と注意点
- 渦度は乱流解析、気象学(低気圧・高気圧や竜巻・台風の回転)、航空工学(翼端渦など)で重要な指標です。
- 数値流体力学では、渦度を直接解く渦度-ストリーム関数法などがあり、特に2次元非圧縮流の解析で有用です。
- 実験では粒子追跡やPIV(粒子画像流速計測)から渦度を数値微分で推定しますが、ノイズに敏感なので平滑化や適切な差分スキームが必要です。
概念的・数学的に、流体のある点での渦度は面積をその点でゼロに近づける極限で定義されます(参照:限界)。また、渦度は速度場の微分から得られるため、速度場の連続性や境界条件に強く依存します。
以上が渦度の基本的な定義、物理的意味、簡単な計算例と応用の概観です。渦度は流れの回転的性質を明確に表す有用な量であり、理論・実験・数値解析の各分野で広く利用されます。
(補記)元の定義や図示に用いられている数式画像は以下の通りです:
質問と回答
Q:渦度とは何ですか?
A:渦度とは、流体力学で用いられる数学的概念で、流体の「循環」「回転」(より厳密には局所的な回転角速度)の量に関係するものです。
Q: 渦度はどのように計算されるのですか?
A: 流体の流れの小領域における平均渦度は、小領域の境界付近の循環量を小領域の面積Aで割ったものに等しくなります。また、数学的には、ある点における速度のカールと定義することができます。
Q: 渦度に関する基本的な仮定はあるのでしょうか?
A: はい、ポテンシャル流の仮定では、境界層や境界層直下の流水面を除き、ほぼ全域で渦度がゼロであることが基本的な仮定となっています。
Q: 渦度がゼロでない領域がある場合はどうなるのでしょうか?
A:渦度が集中する領域なので、渦でモデル化することができます。
Q: Γは何を表しているのか?
A: Γは小さな領域での循環を表します。
Q: ωは何を表しているのか?
A: ωは小領域の平均渦度を表し、またある点での速度のベクトルとカールを表します。