ヨークシャー・デイルズとは|イングランド北部の渓谷・国立公園ガイド
ヨークシャー・デイルズ(Dales)は、イングランド北部、歴史的なヨークシャー地方を中心とした丘陵・渓谷地帯の総称です。地域の大部分は1954年に指定されたヨークシャー・デイルズ国立公園(Yorkshire Dales National Park)に含まれ、イングランドとウェールズにある12の国立公園のひとつとして保護・管理されています。
「デール(dale)」は古い北ゲルマン語(古ノルド語)に由来する語で「谷」を意味し、この地域名は大小の川が作った渓谷(デール)と、それらを隔てる丘陵の連なりから来ています。地質的にはカルスト(石灰岩)地形や泥炭地、ミルストーン・グリット(砂岩)から成り、鍾乳洞や石灰岩の露頭、乾いた谷床など多様な景観が見られます。
位置と行政区分
歴史的には広域なヨークシャーに属しますが、現在は複数の近代的郡にまたがっており、地域の大部分は北ヨークシャーに所属します。その他に一部は西ヨークシャーやカンブリア(Cumbria)などの現行行政区に入っています。国立公園の境界は時期により見直されており、周辺地域と合わせて保全活動が行われています。
主な自然特徴と見どころ
- 石灰岩のカルスト地形:Malham Cove(マルハム・コーブ)やGordale Scarなどの断崖や滝、石灰岩の棚(limestone pavement)が有名です。
- 鍾乳洞と地下河川:Gaping Gill、White Scar Caveなど、洞窟探検が楽しめるスポットがあります。
- 三峰(Three Peaks):イングルボロー(Ingleborough)、ペン・イェン(Pen-y-ghent)、ウェルンサイド(Whernside)など、人気のハイキングコースがあります。
- 主要河川:Rivers Wharfe、Ure、Swale、Niddなどがデールを刻んでおり、川沿いの散策やフィッシングが楽しまれます。
- 野生生物と植物:丘陵地帯の草原や湿地には様々な渡り鳥、猛禽類、希少な植物が生息しています。
文化と歴史
ヨークシャー・デイルズは長年にわたり羊の放牧やドライストーンウォール(石垣)で知られる農業景観が維持されてきました。伝統的な羊の品種(スウェールデールなど)や石造りの村落(Hawes、Grassington、Malhamなど)が地域文化を色濃く残しています。産業面ではかつての鉱山や鉛の採掘跡が点在し、炭坑・鉱山史跡は産業考古学の観点でも興味深い対象です。
観光とアクセス
- ハイキング、トレッキング、サイクリングが主要アクティビティ。難易度別のコースが整備されています。
- 観光のベストシーズンは春〜秋。冬季は道路や山道が悪天候で閉鎖されることがあります。
- 公共交通は鉄道やバスが主要拠点を結びますが、広域にわたるためレンタカーや自転車での移動が便利です。
- 訪問者向けの施設としてビジターセンターや地元の博物館(例:Dales Countryside Museum)があります。宿泊はB&B、パブ、キャンプ場など多様です。
保全と課題
国立公園としての保護と同時に、農業(特に放牧)との共存、観光による環境負荷管理、気候変動への対応などが重要な課題です。地元団体や国立公園当局は、生態系保全と地域経済のバランスを取るための取り組みを進めています。
ヨークシャー・デイルズは、豊かな自然景観と歴史的な農村文化が融合したエリアで、日帰りから長期滞在まで幅広く楽しめます。訪れる際は地元ルール(立ち入りや焚き火、犬の管理など)を守り、景観保全に配慮してください。

デイルズ建築の代表格、ホーズの石造りの家々

ヨークシャー・デイルの西部にある石灰岩の丘と乾いた石壁。国立公園のこの地域は、ヨークシャー・スリーピークがあるため、ウォーカーに人気がある。
デイルズ一覧
- アーケンガースデール
- バークデール
- ビショップデール
- カヴァデール
- デントデール
- ガースデール
- ラングストロースデール
- リトンドール
- マルハムデール
- ニダーデール
- リブルスデール
- スワレデール
- ウェンズリーデール
- ワーフェデール


マルハム近郊のジャネッツフォス

イングルボロー山
関連ページ
- ボルトン城
- スキップトン
- セトル-カーライル鉄道
- ヨークシャー・デールの峰々一覧