概要

逃げられないは、ディック・パウエル監督による1956年のアメリカのミュージカル・コメディである。フランク・キャプラ監督の1934年の恋愛喜劇一日だけの恋の基本設定を、20世紀半ばのミュージカルとして作り直した作品で、スクリューボール・ロマンスに歌と踊りの場面を織り交ぜている。公開はコロンビア映画によって行われた。

あらすじと主題

物語は、裕福な環境から逃げ出した気の強い若い女性と、彼女の前に現れる執念深い記者を追う。行き違いだらけの二人の旅は、誤解や滑稽な出来事、少しずつ深まる好意に満ちており、先行作のロードムービー的な恋愛劇を思わせる一方で、感情表現とコメディの間合いを強調する музыкальные番号を加えている。主題には、自立、階級差、そして、状況に追い込まれるまで互いへの惹かれ合いを認めない二人の間の滑稽な緊張が含まれる。

キャストと音楽面

主演はジューン・アリスンとジャック・レモンで、いずれもスクリーン上の魅力とコメディの才で知られる。脇を固めるのは当時の個性派俳優たちに加え、コメディアンのヘニー・ヤングマンやヴォーカル・グループのザ・フォー・エースなどで、彼らが音楽的な見せ場を担っている。作品は伝統的な歌と踊りの場面を軽いコメディと交互に配し、俳優たちが演技と音楽の両面を見せられる構成になっている。

製作と歴史的背景

1950年代は、ハリウッドが過去のヒット作を別のジャンルで作り直すことが多かった時代であり、本作も成功した物語を当時の嗜好とミュージカル人気に合わせて再解釈した例である。監督のディック・パウエルは、かつてはミュージカルの出演者であり、のちに俳優・監督へ転じた人物で、ロマンティック・コメディとミュージカル娯楽を融合させる方向へ作品を導き、スタジオ時代らしい感覚を反映させた。

評価とレガシー

公開当時、この作品は主として主演スターとリメイク作品であるという点で注目されたのであり、原作を大きく刷新した作品として受け止められたわけではなかった。1934年のオリジナルほど影響力は大きくないものの、1950年代ハリウッドのミュージカルや主演俳優のファンにとっては興味深い作品として残っている。古典的な筋立てを流用しつつ、新しい観客向けに語り口や見せ方を更新するスタジオの手法を示している。

特記事項

  • 1950年代には、よく知られたコメディをミュージカル化するリメイクが、スタジオにとって新たな魅力を生む手段として一般的だった。
  • 本作は、古典的な恋愛設定と当時のミュージカル様式を組み合わせており、ジャンルの適応を考えるうえで参考になる。
  • 主要な関係者には、当時の著名な出演者と、大手配給会社であるコロンビア映画が含まれる。