アーメッド・ゼワイル:フェムトケミストリーの父、1999年ノーベル化学賞受賞者
アーメッド・ゼワイル — フェムトケミストリーの父。レーザーでフェムト秒の化学反応を可視化し1999年ノーベル化学賞受賞。科学革新と教育振興の軌跡を紹介。
Ahmed Zewail(1946-2016)は、エジプトの化学者である。フェムトケミストリーを発明し、1999年にノーベル化学賞を受賞した。 生涯の大半を米国での研究と教育に捧げ、カリフォルニア工科大学(Caltech)の教授として後進の育成にも尽力した。原子や分子の運動がごく短い時間スケールでどのように変化するかを観測するために、超短パルス光を用いる実験手法を確立し、化学結合の生成・消失や遷移状態の直接観察を可能にした。
化学反応はわずか数フェムト秒の間に起こるため、かつては測定不可能と考えられていた。ゼワイルはポンプ・プローブ法などの時間分解分光法と、超短パルスを発するレーザーを組み合わせることで、反応の進行を「フレームごと」に撮影するように観測できる技術を開発した。これにより、分子が反応中にどのように構造を変え、エネルギーがどのように移動するかといった動的過程を直接的に明らかにした。レーザー技術を用いたこのアプローチは、化学だけでなく物理学・生物学分野の超高速現象の研究にも大きな影響を与えた。
ゼワイルの業績と影響は次の点にまとめられる:
- フェムトケミストリーの確立:化学反応の極短時間領域を実験的に研究する新しい学問領域を切り開いた。
- 実験手法の開発:ポンプ・プローブ法をはじめとする時間分解分光技術を発展させ、遷移状態の観察を可能にした。
- 国際的な教育・政策への貢献:米国政府の科学顧問団(大統領の科学技術諮問委員会など)に参加し、科学政策の助言や教育振興に努めた。また、母国エジプトでの科学教育・研究基盤の強化に熱心に取り組み、若手研究者の育成や研究機関の設立支援を行った。
ゼワイルは多数の国際的な賞と栄誉を受けるとともに、学界外でも科学の社会的意義を説き続けた。2016年に逝去したが、彼が開拓した方法と考え方は現代の化学反応解析や超高速現象研究の基礎となり、今日に至るまで多くの研究者に影響を与え続けている。彼の功績は「フェムト秒スケールで進行する現象を“見る”ことを可能にした」点にあり、化学反応の理解を根本から変えたと言える。
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