ジョセフ・スワン — 英国物理学者・白熱電球の発明者(エジソンより先)
ジョセフ・ウィルソン・スワン卿(1828年10月31日-1914年5月27日)は、イギリスの物理学者、化学者で、トーマス・エジソンより約1年早く白熱電球を開発したことで知られる。彼の家は、世界で初めて電球で照らされた家だった。
1904年、スワンはナイトの称号を与えられ、王立協会のヒューズ・メダルを授与され、製薬協会の名誉会員になった。1881年にパリで開催された国際博覧会を訪れた彼は、すでにフランスで最高の賞であるレジオン・ドヌール勲章を授与されていた。この博覧会では、彼の発明品が展示され、スワンの発明によって街中に電灯が灯された。
生い立ちと研究の出発点
スワンは化学と光学に関心を持ち、若いころから写真術や光学材料の研究を行った。写真感光材の改良や乾板(ドライプレート)の開発にも携わり、写真分野での実用的な技術改良を多数行ったことが、後の白熱電灯の研究にもつながった。
白熱電球の開発
スワンは炭素化した繊維(綿やリネンなど)をフィラメントとして用い、ガラス球内をある程度真空にして通電することで発光させる方式を研究した。彼は実験を重ねてフィラメントの形状や処理法、ガラス球の改良を行い、実用的な光源として機能する電球を作り上げた。1870年代後半に実用的な白熱電球のデモンストレーションを行い、イギリス国内で特許を取得した。
エジソンとの関係と事業化
トーマス・エジソンもほぼ同時期に白熱電球を改良し、大規模な実用化を進めていたため、特許をめぐる対立が生じた。しかし両者は次第に協力関係を築き、最終的には事業面で合同する道を選んだ。スワンの会社はやがてエジソン側と合併し、イギリスでの電灯の普及と製造に大きく貢献した(合併によって設立された企業は後に電灯製造で重要な役割を果たした)。
写真術とその他の業績
電球以外にも、スワンは写真材料や感光技術の改良、石鹸や紙などの化学工業に関する実用化にも携わった。特に写真乾板の改良は当時の写真撮影の普及に寄与し、工業的生産の基盤を築いた。
評価と遺産
スワンは生前に多くの栄誉を受け、後世にも電気照明の発展における先駆者として評価されている。彼の発明は家庭や街路に明かりをもたらし、夜間活動や都市の近代化に貢献した。死後も彼の名前は電気照明史、写真技術史の重要人物として記憶されている。
補足
- スワンとエジソンの開発は独立して進められた面があり、どちらが「最初」と断定するよりも、それぞれの技術的改良と事業化の貢献を併せて評価することが重要である。
- 本文中の年表記や合併の年次など、細部の年については資料によって表記が異なることがあるため、より詳しい年次や技術的詳細が必要な場合は専門文献や一次資料を参照されることをおすすめする。