排除措置命令(差止め要求書)とは、ある個人や企業に対して「違法・不適切な行為を直ちにやめ、今後同じ行為を繰り返さないこと」を求める文書(書面)です。多くの場合、受取人に対して「指定した期限内に要求に従わない場合は訴訟などの法的手段をとる」と警告します。差止め要求書は権利者が私的に送るものですが、行政機関や裁判所などの公的機関が同様の内容で正式に発するものは、一般に排除措置命令と呼ばれ、法的効果や執行力が異なる場合があります。
対象となる行為・権利
差止め要求書は必ずしも著作権侵害を阻止するためだけに使われるわけではありません。知的財産権に関連する以下のような問題で広く用いられます。
権利者は、侵害行為を行っている第三者(権利者と無関係の個人や企業)に対して差止め要求書を送り、ライセンス提供や和解交渉、あるいは訴訟の可能性を示すことがあります。
差止め要求書に通常書かれる内容
- 権利の特定(どの権利が誰によって所有されているか)
- 問題となる具体的行為(いつ・どこで・どのように侵害が行われたか)
- 証拠の提示(該当箇所のURLや写しなど)
- 要求される措置(中止、削除、回収、賠償など)
- 対応期限(通常は短期間に設定される)
- 従わない場合にとる法的手段の予告(訴訟や差止め申立て等)
- 和解やライセンス提案がある場合はその内容
受け取ったときの対応手順(実務的な流れ)
- 冷静に確認する:送信者、要求内容、期限、証拠の妥当性をまず確認します。
- 証拠を保存する:指摘されたコンテンツやログ、やり取りの記録を改変せず保存します(将来の証拠保全のため)。
- 法的評価を行う:自社で判断が難しければ、ただちに弁護士に相談して侵害の有無やリスクを評価してもらいます。
- 対応方針を決める:誤解であれば反論・説明、侵害が認められるなら削除・停止・和解交渉・ライセンス取得などを検討します。
- 期限内に書面で回答する:無視すると不利益になるため、受領確認および対応予定を期限内に通知することが重要です。弁護士を通じた回答にすることが多いです。
- 必要なら訴訟準備を進める:相手が強硬であれば、反訴や仮処分への備えを含め法的措置の準備を行います。
注意点とリスク
- 費用負担:複数の差止め要求書を受け取ると、個別の主張を検討・対応するために相当な時間と費用がかかります。
- 表現の萎縮(チリング効果):企業がオンライン上の批判や消費者の表現を抑える目的で差止め要求書を用いるケースがあり、言論の自由との関係で問題になることがあります。特に商標に関しては、実際の使用がフェアユースに該当する可能性があります(米国では、(修正第1条の下での言論の自由の保護に従う))。
- 行政命令との違い:権利者が送る差止め要求書は法的強制力がないことが多い一方、公的機関が発する排除措置命令は法的根拠に基づく命令であり、従わない場合の制裁や手続きが異なります。
- 承認や和解の内容を慎重に:和解やライセンスを締結する際は、将来の制約(使用範囲、賠償、再発防止条項など)を十分確認してください。
実務的な助言(簡潔に)
- まずは無視せず、到着を記録して対応期間内に初期回答を出す。
- 証拠保存とログの保全を最優先に行う。
- 可能なら弁護士に早期相談する(初期対応での誤った認諾は後で不利)。
- 公開投稿等が問題の場合は、削除・表現の修正を行う前に法的リスクを評価する。
よくあるQ&A(簡潔)
- Q:差止め要求書を無視してもいいか?
A:原則として無視は避けるべきです。対応を放置すると、相手が速やかに訴訟や差止め手続に移る可能性があります。 - Q:すぐに謝罪して削除すれば安全?
A:場合によります。謝罪や削除が和解に資することもありますが、同時に責任を認めたと解釈されることもあるため、弁護士と相談のうえ行うべきです。 - Q:権利者の主張が不当だと感じたら?
A:反論書を送る、証拠を提示する、第三者の専門家意見を得るなどして対応します。必要なら反訴も検討されます。
最終的に、排除措置命令や差止め要求書を受け取った場合は、速やかで冷静な対応が重要です。法的リスクの評価、証拠の保全、期限内の適切な回答、必要に応じた弁護士相談を心がけてください。