地形への制御飛行(CFIT)とは:定義・原因・事例・防止対策
CFIT(地形への制御飛行)とは何か、主要原因と衝撃的事例、実践的な防止対策を分かりやすく解説し、航空安全の向上に役立てます。
地形への制御飛行(CFIT、通常はシーフィットと発音する)とは、パイロットの制御下にあり飛行能力を有する航空機が、不用意に地面、山、水域、または障害物に衝突する事故のことである。典型的なCFITの状況では、乗員はそれを回避するには手遅れになるまで危険に気づかないことが多い。この用語は1970年代後半にボーイング社の技術者によって造語されたものである。
機械的な故障やパイロットのミスにより、衝突時に航空機が制御不能になった事故(いわゆる地形への無制御飛行)はCFITには含まれない。また、テロ行為やパイロットによる自殺など、操縦者の故意の行為に起因する事故もCFITとは見なされない。
ボーイング社によれば、CFITは致命的な航空事故の主要な原因の一つであり、民間ジェット機時代以降で9,000人以上の死亡者を出している。1993年から2002年の間、米空軍のクラスA事故の約25%がCFITであったと報告されている。
CFITが起きる主な原因
- 状況認識の喪失(Situational Awarenessの欠如):地形や高度、機体の位置を正確に把握できないまま進入や巡航を続けることで発生します。
- ナビゲーションエラー:誤ったウェイポイント入力、チャートの誤解、古いデータや機器の誤表示など。
- 視界不良や夜間飛行:悪天候、霧、夜間、地形と雲や雪との「視覚的錯誤」により地形が認識されにくくなる。
- 不適切な自動操縦/オートスロットルの使用:自動操縦状態の誤操作や、期待した動作をしていないことに気付かない場合。
- 運用手順や管制との誤解:非標準的な手順、言語の障壁、ATC指示の誤認など。
- 人的要因:疲労、過信、判断ミス、クルー間コミュニケーション不足(CRMの欠如)。
- 環境・機材の制約:不十分な地形データ、障害物情報の欠落、航法援助の制限。
代表的な事例(概要)
- 歴史的に知られるCFIT事故には、視界不良や不適切なアプローチが原因で山岳地帯に衝突した事例が複数あります(例:視界を失ったままの山岳接近による事故など)。
- 1990年代には、ナビゲーションデータの入力ミスやチャート誤解が原因で都市近郊の山腹に衝突した旅客機事故が発生しました。これらの事例は乗員の状況認識喪失と自動機器の誤使用が重なった典型例です。
- 軍用機でも、低空飛行や訓練・作戦中の高度管理ミスでCFITに至る事故が継続して報告されており、これが統計上の一因となっています。
防止対策(運用上・技術上)
- 地形認識警報装置(TAWS/EGPWS)の導入と整備):高度や地形データを基に早期警報を出すシステムはCFITを大幅に減らしました。多くの国で大型機への装備が義務化されています。
- 徹底したプロシージャとチェックリストの運用:アプローチ時の最低安全高度、安定した進入が保てない場合のゴーアラウンド方針等を明確にする。
- クルー・リソース・マネジメント(CRM)訓練:交互確認、意見表明の奨励、役割分担の明確化により状況認識の低下を防ぐ。
- 航法データとチャートの最新化:データベース更新、障害物情報の反映、適切な地形図の使用。
- 自動化の適切な運用:自動操縦やフライトディレクタの動作を理解し、異常時には手動に切り替える判断力を養う。
- ATCとの協調と監視:管制からの助言や地形に対する警告を活用し、必要なら高度や進路の再確認を行う。
- 人的要因対策:疲労管理、言語・手順の習熟、定期的なシミュレータ訓練。
- 運航者レベルの安全文化強化:危険な運航を避ける判断を奨励し、インシデント報告を促進すること。
パイロットや乗客ができること
- パイロットは着陸前のブリーフィング、最低進入高度の厳守、異常時の即時ゴーアラウンド決断を徹底する。
- 乗客は直接CFITを防ぐ手段は限られるが、安全指示に従い、異常を感じた場合は冷静に乗務員に伝えることが重要である。
まとめると、CFITは人的要因と運用上の誤り、環境条件が複合して発生する事故類型です。技術(TAWS/EGPWS)や手順、訓練の組合せにより大幅に防止可能であり、これらの対策が世界的に普及することでCFITの発生率は低下してきています。

このA320は2004年7月10日に黒海に墜落し、乗客105名と乗員8名全員が死亡しました。これはCFIT事故でした。
質問と回答
Q: CFITとは何ですか?
A: CFIT(Controlled Flight Into Terrain)とは、パイロットの制御下で飛行可能な航空機が意図せずに地面、山、水域、障害物などに衝突する事故のことを言います。
Q: 「CFIT」という言葉は誰が作ったのですか?
A:1970年代後半にボーイング社の技術者によって作られた言葉です。
Q: 衝突時に機体が制御不能になった事故はCFITとみなされますか?
A: いいえ、衝突時に機体が制御不能になった事故はCFITとはみなされません。
Q: テロ行為やパイロットによる自殺などの故意はCFITとみなされますか?
A: いいえ。航空機を操縦している人の故意の行為による事故は、CFITとはみなされません。
Q: 民間航空機の時代が始まって以来、CFITによる死者は何人ですか?
A: ボーイング社によると、民間航空機の時代が始まって以来、CFITは9,000人以上の死者を出しているとのことです。
Q: 1993年から2002年の間に、米空軍のクラスAの事故のうち何パーセントがCFITに起因するものでしたか?
A: 1993年から2002年の間に、米空軍のクラスAの事故の25%がCFITに起因するものでした。
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