クランクシャフトとは:エンジンの構造・仕組み・役割、バランスと振動対策

クランクシャフトの構造・仕組み・役割を図解で詳述。バランス調整や振動対策(カウンターウェイト、トーション/バイブレーションダンパ)まで解説。

著者: Leandro Alegsa

エンジンの中で、ピストンの上下運動を回転に変換する部分がクランクシャフト(以下「クランク」)です。「クランク」とだけ呼ばれることもあります。クランクは中心の主軸(メインジャーナル)から外側へ張り出したクランクピン(オフセットシャフト)とそれらをつなぐクランクウェブ(フランク)で構成されます。ピストンはコンロッド(連接棒)を介してクランクピンに連結され、ピストンが上下するとコンロッドがクランクピンを押し、クランクが回転します。クランクの「ストローク」はクランクピンの回転半径(クランクの屈曲量 × 2)で決まり、これがエンジンの排気量や圧縮比に影響します。

構造と主要部位

  • メインジャーナル:エンジンブロックのメインベアリングで支持される軸部分。回転支持と荷重伝達を担います。
  • クランクピン(コンロッドジャーナル):コンロッドが接続するオフセット部で、ピストンの力がここから回転トルクに変換されます。
  • クランクウェブ(フランク):ジャーナル同士をつなぐ肉厚の部分。カウンターウェイトがここに設けられることが多いです。
  • カウンターウェイト:往復運動するピストン・コンロッドの質量を相殺して回転の慣性を平滑化するための重り。
  • フライホイール接続部・プーリー・タイミングギア:クランクはフライホイールやトランスミッション、補機類駆動のプーリー、タイミングチェーン/タイミングベルトのスプロケット等を介して車両全体に動力を伝えます。
  • クランク角センサー(クランクセンサー):回転位置を検出し、点火や燃料噴射のタイミングに利用されます。

材料・製造方法

クランクは高い強度と疲労耐性が求められるため、一般に鍛造鋼が用いられます。中低コストの車両ではダイキャストや鋳鉄で作る場合もありますが、鍛造品の方が疲労特性に優れます。近年は切削加工(ビレット)や特殊熱処理(窒化や焼入れ)を施し、表面硬化・耐摩耗性を高めることが多いです。ジャーナルは精密研磨され、フィレット部(曲げ部)は疲労割れを防ぐために最適なR(曲率)が付けられます。

潤滑・支持

クランクはオイルポンプから供給されるエンジンオイルでベアリングを潤滑されます。内部には油路が穿たれ、メインジャーナルからクランクピンへオイルを供給する構造が一般的です。ベアリングは通常、三層(銅層やアルミニウム合金、軟質表面)で作られた薄いシェルベアリングが使われ、適切なクリアランスで回転および油膜を保持します。

振動とバランス対策

ピストンの往復運動は回転にパルス的な負荷を与え、クランクにはさまざまな振動(一次振動、二次振動、ねじれ振動、ロッキングカップルなど)が発生します。これを放置すると騒音・振動が増え、ベアリングやタイミング系、軸受にダメージを与えます。

  • フライホイール(フライホイール):回転慣性を増やして出力を滑らかにし、ギヤチェンジ時のトルク変動を緩和します。
  • トーションダンパ/バイブレーションダンパ:クランクのねじれ振動(トーション振動)を吸収する装置で、フロント側に取り付けられることが多いです。文章中のトーションダンパやバイブレーションダンパはこの役割を指します。
  • カウンターウェイト:クランク自体に設けた重りで、往復質量のアンバランスを相殺します。ただしカウンターウェイトが大きくなると慣性質量が増え、部品重量や応答性に影響します。
  • バランスシャフト:特に直列4気筒などで発生する二次振動を打ち消すために、エンジン内部に回転するシャフトを追加して振動を低減します。
  • クランクの設計(平面クランク vs 十字クランク等):V8エンジンのクロスプレーン(十字)クランクやフラットプレーンクランクの選択によって振動特性や排気脈動、パルス感が変わります。

ねじれ(トーション)振動とその影響

点火・燃焼の衝撃はクランクをねじる力として働き、特定回転域で共振(共鳴)を起こすとクランクに過大な応力が集中します。これを抑えるためにトーションダンパ(ハーモニックバランサ)を用いるほか、クランクの自然振動数を設計段階でずらしたり、フライホイールや歯車の質量配分で制御します。ねじれ振動が原因でクランクに亀裂が入る事故も知られています。

バランスの種類(簡単な解説)

  • 一次バランス:クランク回転と同じ周波数で現れる振動。多くのエンジンで最も支配的。
  • 二次バランス:回転の2倍の周波数で現れる振動。直列4気筒で特に問題になりやすく、バランスシャフトで対策されることが多い。
  • ロッキングカップル:シリンダーバンク等の配置や不均等なクランクレイアウトが原因で発生する回転方向を伴わない揺れ。

耐久性・故障と点検

クランクシャフトの故障は深刻で、主な原因には疲労割れ、オイル供給不足によるベアリング焼付き、過度のねじれ応力、異物混入などがあります。点検・整備では以下が重要です:

  • エンジンオイルの適正交換と油圧管理(油圧低下はベアリング摩耗を招く)
  • 定期的な振動や異音のチェック(ベアリング鳴き、金属音など)
  • オイル中の金属粉のチェック(潤滑不良や摩耗の早期警告)
  • 整備時のクランクの寸法測定(クリアランス、円筒度、振れ)や非破壊検査(磁粉探傷、浸透探傷、超音波検査)
  • 必要に応じたクランクの研磨・摺り合わせ、クラック発見時は交換または専門工場での修正

製造・修理での注意点

クランクは高精度な部品です。メインキャップの正しい締め付けトルク、ベアリングクリアランスの確保、円周方向の振れ止め、バランス取り(静的および動的)などが重要です。修理でジャーナルをオーバーサイズ研磨した場合は対応するオーバーサイズのベアリングを使用します。再使用時に無理に加熱・曲げで矯正するのは危険で、専門の設備による矯正や交換が推奨されます。

まとめ

クランクシャフトはエンジンの心臓部とも言える重要部品で、ピストンの往復運動を回転に変換し、動力をトランスミッションや補機類へ伝えます。良好な潤滑、適切なバランス設計、トーション振動対策、適切な材料・加工が長寿命とスムーズな動作の鍵です。故障を防ぐためには定期的なオイル管理、振動や異音の早期チェック、点検・整備が不可欠です。

クランクシャフト(赤)、シリンダー(青)に収められたピストン(グレー)、フライホイール(黒)。Zoom
クランクシャフト(赤)、シリンダー(青)に収められたピストン(グレー)、フライホイール(黒)。

質問と回答

Q:クランクシャフトとは何ですか?


A: クランクシャフトは、エンジンの中でピストンの上下運動を回転に変換する部分です。

Q: クランクシャフトはどのようにしてピストンの動きを回転に変換するのですか?


A: クランクシャフトには、ピストンに接続する1つまたは複数のオフセットシャフトがあります。ピストンが上下に動くと、ピストンがオフセットシャフトを押して、クランクシャフトを回転させるのです。

Q:フライホイールは何のためにあるのですか?


A:フライホイールは、通常、クランクシャフトの回転を滑らかにするために接続されています。

Q:クランクシャフトの防振ダンパーとは何ですか?


A:クランクシャフトの振動を抑えるために、クランクシャフトの反対側の端に取り付けることがある装置です。

Q:大型エンジンはなぜシリンダーがいくつもあるのですか?


A:大型エンジンは、個々の発射ストロークによる脈動を減らすために、通常、複数のシリンダーを持っています。

Q:クランクシャフトのカウンターウェイトとは何ですか?


A: カウンターウェイトは、ピストンをオフセットしてバランスをとるために使用されます。クランクシャフトの重量は増えますが、より高回転、高出力を可能にします。

Q: カウンターウェイトが重要なエンジンがあるのはなぜですか?


A: カウンターウエイトは、高回転域でのスムーズな動作と、より大きなパワーを得るために重要です。


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