電磁波スペクトルとは:定義・波長範囲(オクターブ、検出法、限界)
電磁波スペクトルの定義から81オクターブに及ぶ波長範囲、検出法や短波長・長波長の理論的限界までをわかりやすく解説。
電磁波(EM)スペクトルとは、可能な限りの電磁放射が取り得る波長(あるいは周波数)の範囲全体を指します。電磁波は、音波と同じようにオクターブ(波長が2倍/半分になる区間)に分けて考えることができ、理論的な全域を取れば非常に多くのオクターブにまたがります。多くの物理学者は、数千キロメートルから原子の大きさよりもはるかに短いスケールに至るまでの波長の電磁波を研究しています。実用的・観測的には、短波長側の限界は量子重力が支配するスケール(例えばプランク長)に近く、長波長側の限界は宇宙の大きさに関連しますが、原理的にはスペクトルの概念は無限です。
波長・周波数・エネルギーの関係
電磁波の波長λ(メートル)と周波数ν(ヘルツ)は光速c(真空中で約3.00×10^8 m/s)を用いて次のように結び付けられます。
ν = c / λ。
また、光子一つのエネルギーEはプランク定数h(約6.626×10^-34 J·s)を用いて E = hν = hc/λ と表されます。エネルギーを電子ボルト(eV)で表すと、E(eV) ≈ 1240 nm·eV / λ(nm) という換算が便利です。
オクターブで見たスペクトルの広がり
オクターブは周波数が2倍になる区間(波長が半分)を指します。理論上、最短スケールに近いプランク長(約1.616×10^-35 m)から、観測可能な宇宙の大きさ(直径でおよそ8.8×10^26 m 程度)までを比べると、波長の比は非常に大きくなります。この比の二進対数(log2)を取ると約205オクターブに相当し、現実的に「約81オクターブ」とする記述は過小評価になります。実際の可観測・実用的なスペクトル区分は装置や環境(大気透過性など)によってさらに限定されます。
主な区分(例)
- ラジオ波:数キロメートル〜数ミリメートル(周波数は数Hz〜数100GHz)
- マイクロ波:数センチ〜数ミリメートル(GHz帯)
- 赤外線:およそ700 nm〜1 mm(近赤外〜遠赤外)
- 可視光:約380 nm〜750 nm
- 紫外線:約10 nm〜400 nm(ただし境界は定義が分かれる)
- X線:およそ0.01 nm〜10 nm
- ガンマ線:0.01 nmより短い波長(高エネルギー光子)
検出法と「テラヘルツギャップ」
電磁波の検出法は波長(または周波数)帯によって大きく異なります。以下は代表的な検出原理です。
- 長波長(数mm以上〜ラジオ帯): アンテナによって電流を誘起し、受信回路で信号を読み取ります。これは古くから発達した方法です。
- 中間波長(ミリ波〜赤外の一部、いわゆるテラヘルツ領域): 電子回路で直接検出しにくいため、ボロメーター(熱的検出器)、半導体の遷移、超伝導検出器など特殊な手法が必要で、かつては「テラヘルツギャップ」と呼ばれる未開拓領域でした。21世紀に入ってからの技術進展(高感度受信器、量子カスケードレーザー、光学系と電子系の融合など)で観測・応用が飛躍的に拡大しました。
- 短波長(赤外〜可視〜紫外): フォトダイオード、CCD、光電子増倍管など、光子を電荷に変換して読み取る検出器が用いられます。多くの分光法やイメージング法が確立しています。
- 高エネルギー(X線・ガンマ線): 半導体検出器、シンチレーション検出器、ガス電離検出器など、光子の持つ高エネルギーによる原子の電離や相互作用を利用して検出します。宇宙からの高エネルギー放射は大気で吸収されるため、人工衛星や高空観測が必要です。
- 超高エネルギー粒子(ガンマ線を超える場合や宇宙線): 大気中でのエアシャワーやチェレンコフ光を地上望遠鏡で観測する手法などが使われます。
大気の影響と観測の制約
地球大気は全波長にわたって透過するわけではなく、いくつかの「窓」が存在します。可視光や一部のラジオ・赤外領域は地表から観測しやすい一方、紫外線の短波長、X線、ガンマ線の多くは大気でほぼ完全に吸収されるため、宇宙空間からの観測が必要です。これが電磁波観測の実用上の限界の一つです。
理論的な限界 — プランク長と宇宙の大きさ
理論的には電磁波の波長を無限に短く(高エネルギー)または無限に長く(低エネルギー)考えることができますが、物理法則や宇宙の性質が制約を与えます。最短側では、プランク長(約1.616×10^-35 m)に近いスケールでは古典的な時空の概念が崩壊し、量子重力効果が支配的になると考えられます。最長側では、観測可能な宇宙の大きさが実用的な上限になります。しかし、これらは「原理的な限界」であり、実際の観測可能範囲や用途は技術や環境に大きく依存します。
まとめ
電磁波スペクトルは極めて広範で、波長・周波数・エネルギーの関係を基にさまざまな区分と検出法が確立されています。短波長側の理論的極限はプランクスケール、長波長側は宇宙の大きさに関連しますが、観測や応用は大気透過性や検出技術の発展に依存します。歴史的に検出が難しかったテラヘルツ領域なども、近年の技術革新により急速に開かれてきています。

電磁波
物体のスペクトル
宇宙に存在するほぼすべての物体は、何らかの光を発したり、反射したり、透過したりしています(ブラックホールはしません)。(この光が電磁スペクトルに沿ってどのように分布するか(物体のスペクトルと呼ぶ)は、その物体が何でできているかによって決まる。物体から放射される光の性質に応じて、いくつかの種類のスペクトルがあります。
分光学とは、物質の発光や反射のスペクトルを観察する物理学の一分野です。
質問と回答
Q: 電磁波スペクトルとは何ですか?
A: 電磁波スペクトルは、すべての可能な電磁波の範囲です。
Q: 電磁波はオクターブに分けられるのですか?
A: はい、電磁波は音波と同じようにオクターブに分けることができます。
Q: 電磁波のスペクトルは何オクターブあるのですか?
A: 電磁波は最大81オクターブに分けることができます。
Q: 電磁波の限界は何ですか?
A:電磁波の短波長側の限界はプランク長、長波長側の限界は宇宙の大きさであると考えられます。
Q: 一般的に原子の電離エネルギーを超えることができる電磁波の範囲はどの程度か?
A: 波長が約30μmより短い電磁波は、原子の電離エネルギーを超える能力があります。
Q: 3mmより長い電磁波は、どのように検出されるのが一般的ですか?
A:3mmより長い電磁波は、電流を誘起することで検出されるのが一般的です。
Q: なぜ21世紀まで30μmから3mmの間の放射線はほとんど使われていなかったのですか?
A: 30μmから3mmまでの放射線は、検出が困難なため、21世紀まであまり利用されませんでした。
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