甘粛(かんしゅく、ガンス)(簡体字:、繁体字:甘肅、ピンイン:Gānsùウェード・ジャイルズ:Kansu)は中華人民共和国の省である。省都は蘭州で、黄河沿いの省中央部に位置する。

面積は約454,430km²。人口は2010年時点で約25,575,000人、2018年の推計で約26,257,000人であり、沿海部の省と比べると人口密度は低めである。住民の大多数は漢民族だが、回族(ヒューイ)、チベット族、東郷族(ドンシャン)、土族(トゥ)や撒拉族(サラル)などの少数民族も分布している。

地理

甘粛省は中国北西部に位置し、地形は非常に多様である。北部と西部にはゴビ砂漠の一部を含む乾燥した砂漠・半砂漠地帯が広がり、中央部には黄河が東西に蛇行して流れる河谷地帯(蘭州周辺の肥沃な灌漑地)がある。東・南部は山地や丘陵が多く、祁連山脈や隴山系などの山岳地帯が連なる。甘粛は古くから東西を結ぶ交通の要所で、特に「河西回廊(ヘシ回廊)」はシルクロードの重要ルートだった。

省内には歴史的・文化的に重要な遺跡や景観が多く、敦煌の莫高窟(莫高窟)や嘉峪関(嘉峪関)、天水の麦積山石窟など、シルクロード関連の世界遺産・名所が点在する。

気候

甘粛は大陸性気候が支配的で、総じて乾燥している。北西部の砂漠・半砂漠地域は降水が極めて少なく、昼夜の気温差が大きい。黄河流域の都市部や東南部の山間地では四季の変化がはっきりしており、冬は寒冷で乾燥、夏は比較的高温で降水は主に夏季に集中する。標高が高い南西部の高原や山岳地帯では、より冷涼・高地性の気候となり、冬季には厳しい寒さと積雪が見られる。

歴史と文化

甘粛はシルクロードの重要区間であり、古代から東アジアと中央アジア・中東を結ぶ交易路として栄えた。敦煌の莫高窟に代表される仏教美術や、嘉峪関の長城要塞など、交易と防衛に関わる遺構が多数残る。文化的にも多民族が交錯する地域であり、イスラム文化を伝える回族の集落やチベット文化の影響を受けた地域など、地域ごとに特色ある伝統が息づいている。

経済・産業

農業は黄河流域の灌漑地を中心に営まれ、小麦、トウモロコシ、ジャガイモ、マメ類などが生産される。他に畜産(羊・牛など)や果樹栽培も行われる。一方で、鉱業(石炭、金属鉱物)や石油・天然ガスなどの資源開発、化学工業・エネルギー産業も経済の重要な柱である。近年は交通網の整備や観光振興により、地域経済の活性化が図られているが、沿海部に比べると経済水準は低く、開発の余地が大きい。

交通

蘭州は甘粛の交通・物流の中心であり、鉄道(陇海線、蘭新線など)や高速道路が省内外を結ぶ。蘭州中川国際空港をはじめとする空路も整備され、国内各地へのアクセスが確保されている。歴史的には河西回廊が東西交流の要衝となっていた。

観光・見どころ

  • 敦煌・莫高窟(世界遺産) — 仏教壁画と石窟群
  • 嘉峪関 — 万里の長城の西端に近い関所跡
  • 蘭州 — 黄河に沿った都市で牛肉麺などの郷土料理も有名
  • 天水・麦積山石窟 — 石窟寺院群
  • 祁連山の山岳風景やゴビ砂漠の独特な自然景観

まとめると、甘粛省は黄河の流域、砂漠・回廊、山岳高原が混在する多様な地理と乾燥した大陸性気候を持ち、シルクロードの歴史遺産や多民族文化、資源・産業といった面で中国北西部の重要な役割を担っている。