グラム染色(またはグラム法)とは、細菌をグラム陽性グラム陰性の2つの大きなグループに分類する方法である。名前の由来は、発明者のハンス・クリスチャン・グラムによる。

グラム法は、細菌の細胞壁の化学的・物理的特性に応じて染色する方法である。まず、バイオレットの染料を細菌に塗ります。この染料は、グラム陽性菌にのみ見られる厚い層であるペプチドグリカンを染色する。最初の染色の後、別の染色(通常はサフラニンまたはフクシン)により、すべてのグラム陰性菌が赤またはピンクの色に染まる。

グラム染色は、ほとんどの場合、細菌生物の同定の最初のステップとなる。しかし、すべての細菌がこの手法で分類できるわけではありません。この方法が使えない細菌は、「グラム可変性」または「グラム不確定性」と呼ばれる。

グラムは、ベルリンの病院でカール・フリードレンダーという科学者と共同でこの技術を開発した。グラムは、の中の細菌を見やすくするためにこの検査法を使った。グラムは1884年に完成した方法を発表した。

原理(簡潔な説明)

グラム染色は主に次の化学反応と構造的差異に依存する:

  • 一次染色(クリスタルバイオレット)は細胞に浸透し、
  • それにヨウ素(ヨウ素溶液)を加えるとクリスタルバイオレット–ヨウ素複合体が形成される。
  • 脱色(アルコールまたはアセトン)により、ペプチドグリカンの厚い層を持つグラム陽性菌では複合体が細胞内に保持されるが、ペプチドグリカンが薄く外膜を持つグラム陰性菌では外膜と細胞壁を通じて複合体が流出する。
  • その後の対比染色(サフラニンなど)で、脱色されたグラム陰性菌は赤〜ピンクに染まる。

標準的な手順(代表的なプロトコール)

ラボによって条件は異なるが、代表的な手順は次の通りである:

  1. スライドガラスに検体を薄く塗抹し、自然乾燥または空気乾燥させる。
  2. 軽く熱固定する(過度の加熱は避ける)。
  3. 一次染色:クリスタルバイオレットを塗布して約30秒〜1分放置し、流水で軽く洗う。
  4. 媒染:ヨウ素溶液(ルゴール液など)を加え約1分放置し、流水で軽く洗う。
  5. 脱色:エタノールまたはアセトン/エタノール混合溶媒を数秒〜20秒程度流して脱色(色が流れ出すかどうかを観察)。過度の脱色は偽陰性を招く。
  6. 対比染色:サフラニンやフクシンを30秒〜1分塗布して流水で洗い、軽く吸水紙で余分な水を取る。
  7. 乾燥後、油浸対物レンズ(100×)で顕微鏡観察する。

(上記の時間は一般的な目安です。正確な手順は各施設の標準操作手順(SOP)に従ってください。)

判定と解釈

  • グラム陽性菌:紫色(クリスタルバイオレットを保持)。厚いペプチドグリカン層を持つ。代表例:Staphylococcus属、Streptococcus属、Enterococcus属、Bacillus属、Clostridium属など。
  • グラム陰性菌:赤〜ピンク(サフラニンで染色される)。薄いペプチドグリカンと外膜(リポ多糖)を持つ。代表例:Escherichia coli、Klebsiella、Pseudomonas、Neisseria、Haemophilusなど。
  • 形態も重要:球菌(cocci)か桿菌(bacilli)か、連鎖や塊の形成などが同定に役立つ。

臨床的意義

  • 迅速に検体の有無や大まかな細菌群を把握でき、経験的抗菌薬の選択や緊急対応(例:髄膜炎の疑いでの即時治療)に役立つ。
  • 痰、喀痰、髄液、膿、尿など様々な臨床検体の直接塗抹で用いられる。
  • しかし培養や同定、抗菌薬感受性検査に代わるものではない。染色で見えない、あるいは誤分類される菌種があるため注意が必要。

制限事項・例外(グラム可変・不確定)

  • 形質上グラム染色に適さない微生物:Mycoplasma(細胞壁を持たない)、TreponemaやBorrelia(非常に細く顕微鏡で見えにくい)、Mycobacterium(厚い脂質リッチな細胞壁で酸性染色が必要)など。
  • 真菌(酵母)は一般に染まるが、真菌と細菌の鑑別には追加の染色や培養が必要。
  • 培養が老化している、抗菌薬投与後の検体、熱固定の過度や過少、塗抹の厚さ、脱色の過不足などで誤った判定(偽陽性・偽陰性)が生じる。
  • 芽胞形成菌(Bacillus、Clostridiumなど)は芽胞部分は染まりにくく、細胞全体がグラム可変になることがある。

トラブルシューティング(実務上のポイント)

  • 脱色しすぎるとグラム陽性菌がピンクに見える(偽陰性)——脱色時間は短く、観察しながら行う。
  • 脱色不足だとグラム陰性菌が紫に残る(偽陽性)——均一で薄い塗抹と適正な脱色が重要。
  • 熱固定を強くしすぎると細胞壁が破壊され、染色性が変わることがある。
  • 陽性対照と陰性対照を同一プレパラートや同日に確認すると信頼性が上がる。

歴史的背景(補足)

ハンス・クリスチャン・グラムは1884年に、グラムは、ベルリンの病院でカール・フリードレンダーと関わりながら、主に肺組織中の微生物をより見やすくする目的でこの方法を報告した。発表当時は組織切片を対象としたもので、後に培養菌や臨床検体の直接塗抹にも広く応用されるようになった。

まとめると、グラム染色は微生物学的診断で基本かつ迅速なツールであるが、結果の解釈には経験と他の検査(培養、同定、感受性試験、特殊染色など)との組み合わせが必要である。