グレートアトラクター(GA)は、我々の天の川銀河や周囲の多くの銀河を引き寄せる、局所宇宙に存在する大規模な重力源と考えられている領域です。p60 。一言で言えば、銀河の運動に「特異速度(peculiar velocity)」を与える巨大な質量集中のため、周囲の銀河がその方向へ向かって集まる運動が観測されます。

性質と位置

グレートアトラクターは、数千万から数億光年のスケールで銀河の運動に影響を与える領域で、距離はおよそ1.5〜2.5億光年(約50〜80 Mpc)程度と推定されています。中心に近い候補としては、ノルマ銀河団(Abell 3627)を含む領域が挙げられ、いくつかの大銀河団や超銀河団に相当する巨大な質量を持つと考えられています。GAは単一の「点状」天体ではなく、複数の銀河団やダークマターを含む広がった質量分布(いわゆるや超銀河団の一部)です。

観測で分かっていること

  • 我々の局所銀河群(および近傍の多数の銀河)は、膨張に伴う後退速度(ハッブル流)に加えて、グレートアトラクター方向への特異速度を持っている。これにより全天にわたる速度フィールドに偏りが生じる。
  • 観測上の速度偏差は秒速数百kmに達し、最大で約600〜700 km/s程度の規模で報告されています。これらはハッブル流からの逸脱として、GAの重力影響を示しています。元の記述にあるように、位置関係によっては秒速700 kmから-700 km程度の偏差が見られます。
  • GA領域は局所的な重力場の中心的存在であり、我々の運動(局所速度場)は銀河分布や背景放射(CMB)の双極子(dipole)観測とも整合します。

発見と歴史的背景

グレートアトラクターは1970〜80年代にかけて、銀河の赤方偏移測定と速度分布の解析からその存在が示唆されました。赤方偏移だけでなく、各銀河の距離推定と比較することで、ハッブル流からの系統的な逸脱が明らかになり、背後に大質量があることが示されました。

赤方偏移と運動の説明

GAに含まれる銀河も宇宙膨張に伴って赤方偏移しますが、観測される赤方偏移(見かけの速度)はハッブル膨張速度に「特異速度」が重畳したものです。つまり、両者の合成として見えるため、ある方向では見かけ上の後退速度が小さくなったり、逆に近づいて見えたりすることがあります。赤方偏移(あるいは速度偏差)の正負は、局所的な位置関係と重力場の向きによって決まります。

観測の課題と現在の理解

  • グレートアトラクターの研究は、天の川座標系での視界遮蔽(ミルキーウェイの塵や星のために「回避帯(Zone of Avoidance)」が生じる)によって難しくなっています。このため赤外線やX線、電波観測で見えにくい領域を探査する必要があります。
  • 近年では、GAは単独で銀河群を引き寄せる唯一の源というより、より大きな構造(例えばシャプレー超銀河団など)からの寄与も大きいと考えられています。2014年の「ラニアケア超銀河団(Laniakea)」の定義などで、我々の局所流がより大きな重力井戸の一部であることが示され、GAの役割は再評価されています。

今後の観測と研究の方向

より深い赤外線・X線サーベイや大規模な銀河赤方偏移測定、HI(電波)観測によって、回避帯の向こう側にある銀河団やダークマター分布を詳しく描く試みが続いています。これにより、GAの正確な質量分布、距離、そしてシャプレー超銀河団など他の大規模構造との関係がさらに明らかになる見込みです。

まとめ:グレートアトラクターは、我々の近傍宇宙における大規模な質量集中であり、その重力が銀河の運動に顕著な影響を与えています。可視光では見えにくい領域が多いため観測は難しいものの、複数波長での観測と大規模構造の解析により、現在もその正体と影響が徐々に解き明かされています。