ホプロン(古代ギリシャの盾)完全ガイド:構造・歴史・装飾とホップライト

古代ギリシャの盾“ホプロン”の構造・歴史・装飾とホップライトの役割を詳解。ラムダや小フクロウ等の象徴も紹介。

著者: Leandro Alegsa

古代ギリシャは「ホプロン」または「アスピス」と呼ばれていた。ホップライト(ギリシャの兵士)の語源はこの言葉にあります。ホプロンは、個人の防御具であると同時にフォーメーション(特にファランクス)全体の防御を成り立たせる重要な装備でした。

構造(素材と形)

ホプロンは主に木材で作られ、外側に薄い革や布が貼られ、必要に応じて外面に薄いブロンズの板が張られることがありました。典型的な特徴は以下の通りです。

  • 形状:円形で内側がやや凹んだ曲面(コンケーブ)に作られ、身体を包み込むようにして防御効果を高めていました。
  • 大きさ:直径はおおむね約0.9〜1.1メートル程度(個体差あり)。
  • 重量:復元例や文献からはおよそ7〜9kg程度と推定されます(構成材料や金属の有無で変動)。
  • 構成:複数の木板を接着して形成し、布(リネン)で裏表を補強、革で被い、必要箇所に金属を補強することが一般的でした。
  • 握り(保持機構):内側には腕を通すための「ポルパックス(porpax=腕輪状の帯)」と、外縁付近の「アンティラベ(手で握る把手)」という二つの保持要素が併用され、左腕で盾を固定して右手で槍を扱えるように設計されていました。

戦術的役割(ファランクスと防御)

ホプロンは単なる個人防具ではなく、ホップライト同士が盾を重ね合わせて作る「盾壁(シールド・ウォール)」の要でした。各兵士は左手で盾を持ち、右手に槍(ドリス)や短剣を持って陣形を保持・攻撃しました。整然としたファランクスは盾の重なりによって相互に守られ、前方からの射撃や突撃に対して高い防御力を発揮しました。

装飾と象徴

ホプロンの表面には都市国家や個人のシンボルが描かれることが多く、部隊や出身を示す識別標でもありました。

  • スパルタンの最も有名な装飾は大文字のラムダ(Λ)で、ラケダイモン(Lacedaemon)を示す標でした。
  • 紀元前5世紀後半以降、アテネのホープライトは通常、小さなフクロウ(アテナの聖なる鳥)やアテーナイの象徴を用いることが多く、都市の誇りを示しました。
  • テーバンのホープライトの盾には、スフィンクスや、ヘラクレスの棍棒(クラブ)など神話・英雄像が描かれる場合もありました。
  • その他にも部隊記号、個人の紋章や宗教的モチーフ、幾何学模様などが多様に用いられ、戦場での識別や士気の喚起に役立ちました。

歴史的変遷

ホプロンはアルカイック期から古典期にかけて発展し、都市国家の市民兵主体の戦術とともに最も発達しました。時代が下ると戦術の変化に伴い盾の形状や使われ方も変化します。

  • 前7–5世紀(アルカイック〜古典期):大型の円形ホプロンが主流で、ファランクス戦術の中心。
  • 前4世紀以降:マケドニアの長槍(サリッサ)を用いる戦法の普及や、より機動的な部隊運用により、一部でより小型・軽量の盾が使われるようになりました。
  • ヘレニズム期以降:地域・時期によって盾の形状や装飾が多様化し、ローマ時代の装備との交錯で伝統的ホプロンは徐々に姿を変えていきます。

出土資料と美術表現

木製の盾は有機材であるため完全な形で残ることは稀ですが、ブロンズの当て板や金属製の縁取り、陶器の描写、レリーフなどから細部が復元されています。古代の壺絵や彫刻はホプロンの形状や装飾、持ち方を知る上で重要な一次資料です。考古学的には金属製の小さな装飾品や盾の金属部分が出土する例があります。

ホップライトとの関係(社会的側面)

ホップライトは市民兵として自費で装備を整えた階層が多く、盾はその中でも最も高価で重要な装備でした。盾を意味する言葉がそのまま兵種名(ホップライト)になったことは、ホプロンがホップライトのアイデンティティと戦術にとって不可欠であったことを示しています。

まとめると、ホプロン(アスピス)はその構造・装飾・戦術的役割を通じて古代ギリシャの軍事文化を象徴する防具でした。都市国家ごとの装飾は所属や信仰を示し、ファランクス戦術における盾の機能は戦闘の勝敗を左右するほど重要でした。

オリンピックのレースで選手が持っていたホプキンスの盾Zoom
オリンピックのレースで選手が持っていたホプキンスの盾

質問と回答

Q: ギリシャの盾は何と呼ばれていましたか?


A: ギリシャの盾はホプロンまたはアスピスと呼ばれていました。

Q:ホプロンは何でできていたのですか?


A:ホプロンは木でできており、外面に青銅の薄板を貼った盾もありました。

Q:ホプロンは何のために作られたのですか?


A:ホプロンの盾は、ホプリトの集団が相手軍に押し込むために作られたもので、彼らの最も重要な装備でした。

Q: ホプロンの盾はどのように運ばれたのですか?


A: ホプロンの盾は左手に持っていました。

Q: ホプロンの盾に施された最も有名な装飾は何ですか?


A: ホプロンの盾の最も有名な装飾は、スパルタの大文字のラムダ(Λ)です。

Q: ホプロンの盾には他にどんな装飾が使われていましたか?


A: アテネ人は小フクロウ(アテナの聖なる鳥)を、テバ人はスフィンクスやヘラクレスの棍棒を使用しました。

Q: スパルタ人はホプロンの盾をどのように使っていたのですか?


A: スパルタ人はホプロン・シールドを攻撃用の武器として使っていました。


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