ハッブル超深層フィールド(HUDF)は、フォルナックス座付近のごく狭い領域を長時間露光して得られた、これまでで最も深いハッブル宇宙望遠鏡の画像の一つです。極めて暗い銀河や初期宇宙の天体を多数とらえており、宇宙の初期段階(光が放たれてから約数億年〜十数億年後に相当する時期)の姿を観測することができます。

観測期間と機器

HUDFの観測は2003年9月24日から2004年1月16日まで行われ、合計で数百回に及ぶ個別露光を積み重ねて得られました。観測には主にハッブルの高性能カメラであるACS(Advanced Camera for Surveys)が使われ、近赤外線を補うためにNICMOS(Near Infrared Camera and Multi-Object Spectrometer)も使用されました。観測では合計でおよそACSが11.3日分、NICMOSが4.5日分に相当する露光が行われ、合計で約15〜16日分の総露光時間に相当します。

視野・位置

HUDFの視野は非常に狭く、天球上での大きさはおおむね約3.4分角×3.4分角(面積にして約11平方分角)です。これは身近な比喩では、1メートル離れたところに置いた紙の1×1ミリの正方形よりも小さい角サイズに相当します。位置は、オリオン座の南西にある南半球のフォルナックス座付近で、赤経(RA)3時間32分40秒、赤緯-27°47'29"(J2000)にあります。画像は、左上の角が天球上で北を指すように回転(位置角 -46.4°)して配置されています。中心付近の基準星は USNO-A2.0 0600-01400432(見掛け上の等級 18.95)です。

写っているものと選択理由

HUDFの領域には約1万個に及ぶ銀河が写り込んでいます。観測領域は、前景の明るい恒星の少ない「空の暗いパッチ」を選んであり、遠方銀河を邪魔なく観測できるようになっています。これらの銀河の多くは非常に微光で小さく、光が宇宙膨張で赤方偏移しているため赤外側にシフトしています。地上望遠鏡でも赤外線観測で検出できる天体はありますが、HUDFは可視光から近赤外までの高解像度観測でこれらを一貫して捉えた点で重要でした。

観測手法とフィルター

ACSでは複数の可視光フィルター(一般にF435W、F606W、F775W、F850LPなど)を用いて多波長撮像を行い、NICMOSや後のWFC3/IRによる近赤外観測でさらに遠方かつ高赤方偏移の候補天体を探しました。多波長データにより、天体の色(スペクトル的な性質)から赤方偏移推定や星形成率、塵の存在の推定が可能になります。

科学的意義と後続調査

  • HUDFは、初期銀河の形態(渦巻きや楕円だけでない多様な形)や小さな原始的銀河の存在を明らかにし、銀河形成・進化の過程を研究する重要な基礎データを提供しました。
  • 高赤方偏移の銀河候補が多数見つかり、宇宙再イオン化や初期の星形成活動のタイムスケールに関する制約に貢献しました。
  • HUDFの成果は、その後の更なる深観測(例:後続のWFC3を用いた深宇宙観測やHUDF09/HUDF12などの拡張調査)や、のちに打ち上げられたより感度の高い望遠鏡(例:JWST)による研究へつながっています。

観測回数と露光

この画像を得るためにハッブルは地球を約400周する間に合計で約800回の個別露光を行いました。個々の露光を積算して得た深い画像により、個々の露光では見えないような非常に暗い銀河まで検出することができました。

HUDFは「非常に狭い空域を徹底的に深く見る」ことで宇宙の初期段階を解き明かすことを目的としたプロジェクトであり、そのデータは多くの論文や解析、後続観測の基礎資料として現在も利用されています。