カラシュ族とは — パキスタン山岳の少数民族|言語・宗教・文化
パキスタン・チトラールのカラシュ族:言語・宗教・文化、起源と生活を写真付きで深掘りする解説。
カラシュ族(Kalash: Nuristani: Kasivo)またはカラシャ族は、ヒンドゥー・クシュの山岳民族である。彼らはパキスタンのカイバル・パクチュンフワ州のチトラール地区に位置する三つの隔絶した谷(Bumburet、Rumbur、Birir)を中心に暮らしている。伝統的な暮らしは山岳地帯の農牧や季節労働、そして観光に支えられている。
言語
カラシュ族は、インド・アーリア語族のダルディック語族の語に属するカラシャ語(Kalasha、Kalasha-mun)を話す。カラシャ語は語彙・音韻などで周辺のコワール語(Khowar)や他の地域言語と影響を受け合っており、多くのカラシュ人は二言語または三言語(カラシャ語+コワール語+ウルドゥー語やパシュトー語)で日常生活を営む。国際的にはカラシャ語は話者数が少なく、消滅危機の懸念がある言語として注目されている。
宗教・祭礼・社会
多神教の人々は伝統的に山の精霊や祖先崇拝を基盤にした宗教的儀礼を保ち、神殿(小さな祠)や聖なる場所で年中行事を行う。代表的な祭りには春の豊穣を願う「Chilam Joshi(チラム・ジョシ)」(5月ごろ)や、冬の収穫・新年を祝う「Choimus/Chawmos(チョイムス/チャウモス)」などがあり、歌や踊り、供物の儀式が行われる。祭礼では伝統衣装をまとった女性たちが重要な役を担い、地域文化の根幹を成している。
近年、改宗や同化の圧力が強く、周辺のムスリム集落との関係も社会的に複雑である。元の資料には「カラシ多神教の人々は約30000人、イスラム教徒は3000人しかいません。」といった表記が見られるが、より信頼できる現地調査・人口推計では、パキスタン国内の伝統的なカラシュ人口は一般に約3,000〜4,000人程度とされ、実際の信仰形態は改宗・通婚等により地域ごとにさまざまであることが指摘されている。カラシュの伝統宗教を捨ててイスラムに改宗した個人や家族は、伝統共同体からの社会的排除や居住上の摩擦を経験する場合があり、これが宗教行事や文化の維持に影響を与えている。
文化・風俗・外見
カラシュの伝統衣装は色鮮やかで、特に女性の頭飾り(ビーズや貝殻をあしらった黒い被り物)や刺繍入りの長衣が有名で、観光客にも人気がある。家屋や祭具、口承文学(神話・歌・物語)を通じて独自文化が伝えられている。観光の普及は経済的支援となる一方で、生活様式や宗教儀礼の商業化という課題ももたらしている。
「ギリシャ人の末裔だ」という伝承は昔からあり、外見に幅があることからそのような見立てが語られてきた。実際にカラシュの人々の容姿は多様で、薄茶色の肌、茶色の目、黒髪の人々が多い一方で、白い肌や青い目、金髪に近い色を持つ人も見られる。近年の遺伝学的研究は、西ユーラシア系の遺伝的影響が一定程度あることを示しているものの、「ギリシャ起源」説を単純に裏付けるものではなく、複数の地域集団との混合の結果と考えられている。
現状と保全の取り組み
カラシュ文化・言語は人口規模の小ささ、改宗・同化圧力、経済的変化、観光化などにより脆弱化している。政府や国内外のNGO、研究者が言語記録、文化保存、教育支援、持続可能な観光の導入などの活動を行っており、地域住民自身による文化継承の試みも続いている。訪問する際は地元の習慣・宗教感情を尊重し、無断で写真を撮らない、祭礼を商業化しすぎないなどの配慮が求められる。
総じて、カラシュ族はヒンドゥー・クシュ山中に残る文化的に独自性が高い少数民族であり、その言語・宗教・慣習は学術的・文化的に重要であると同時に保護・支援が必要な状況にある。

パキスタン、チトラール近郊の伝統的なカラシュのドラマーの少年
関連ページ
- ヌリスタニ族
百科事典を検索する