カンタベリー大司教とは:英国国教会の長 — 歴史・役割・選出方法
概要
カンタベリー大司教は、イングランド国教会の精神的指導者であり、英国国教会の母体である教会の長格の存在です。大司教の公的な居所は古都カンタベリーに由来しますが、日常の本拠はロンドン南部のランベス宮殿にあります。大司教は形式的にはイギリスの君主(教会の「最高統治者」)により任命されますが、実際の選出手続きや首相との連携など現代的な慣行があります。
歴史
カンタベリー大司教の職位は597年に創設されました。その年、聖アウグスティヌスがローマ教皇の派遣を受けイギリスのケント地方に到着し、現地での布教にあたりました。ケント王エセルバートが改宗すると、周囲の人々も共にキリスト教を受け入れ、アウグスティヌスはケント王国の最初の司教となり、後にカンタベリーの大司教として認められました。それ以来、カンタベリーには大司教の座が続いています。
中世にはカンタベリー大司教は英国内で最も権威ある聖職者の一人であり、長らくローマ教皇と緊密な関係を保っていました。しかし16世紀に入ると、ヘンリー8世の下でイングランド教会はローマ教会から断絶(宗教改革)し、教会の最高権威はローマ教皇からイングランドの君主へと移りました。以後の大司教は、カトリック時代とは異なる立場で教会を率いることになります。宗教改革期の代表的人物にはトマス・クランマー(在任1533–1555)などがいます。
役割と権限
カンタベリー大司教の役割は多岐にわたります。現代における主な職務は次の通りです:
- 教会内での精神的・典礼的指導:教区教会の典礼、教義、牧会に関する指導を行います。
- 管轄と監督:カンタベリー大司教はカンタベリー管区(イングランド南部・中部の多数の教区)を監督します。北部はヨーク大司教が担当します。
- 司教の任命・叙聖に関与:新しい司教の選定に関与し、叙聖・任命の場で重要な役割を果たします。
- 国事儀式での役割:新しい君主の戴冠式では冠を置くという重要な儀礼を行います。
- 国会での公的地位:大司教は貴族院(上院)のメンバー(Lords Spiritual)であり、国家的課題について発言します。
- 国際的・合同教会でのリーダーシップ:世界的な聖公会(アングリカン・コミュニオン)では「first among equals(第一の平等者)」として象徴的な影響力を持ち、ランベス会議(Lambeth Conference)などの開催や総説的な調整に関与しますが、全教会を一手に支配する最高権威ではありません。
カンタベリー教区内では、大司教を補佐するために複数の補佐司教(suffragan bishops)や代理司教が置かれ、日常の diocesan 業務を分担しています。たとえばカンタベリー教区では補佐的な役割を担う司教が存在します。
選出方法(現代の手続)
現代では、カンタベリー大司教の選出は教会と政府間の慣行に基づく複合的な手続きで行われます。中心的な機関は教会内の代表組織である「Crown Nominations Commission(王冠指名委員会)」で、司教団や総会(General Synod)の代表、被選挙区の聖職者・信徒代表などから構成されます。委員会は候補者名を選定し、その推薦が内閣(首相)へ送られ、最終的に君主が公式に任命します。実務上は、首相が君主に助言して形式的な任命が行われるという流れです。
この方式は長年にわたる慣行の結果であり、過去には政府の影響が大きかった時期もありましたが、近年は教会側の関与が強まるよう制度が整えられています。
拠点・称号・法律上の地位
大司教の正式な座はカンタベリー大聖堂(カンタベリー・カテドラル)にあり、ここが象徴的な司教席(cathedra)です。一方で日常業務と対外的活動の本拠はランベス宮殿(Lambeth Palace)にあります。教会内での敬称は英語で "The Most Reverend"、また口語的には "His Grace"(閣下)とされることが多いです。
大司教は貴族院の定員の一部を占める「Lords Spiritual」の一員であり、教会と国家の接点に立つ公的立場を持ちます。なお、ウェールズの教区は1920年にウェールズ教会(Church in Wales)として分立するまではカンタベリー管区に含まれていました。
近年の大司教
現在のカンタベリー大司教は、ジャスティン・ウェルビーです。ウェルビーは元にしてはダラム大司教であり、2013年3月21日にカンタベリー大司教に就任しました。現代の大司教は国内外の対話、社会問題への発言、エキュメニズム(教会一致運動)や国際支援活動など多方面で活動しています。
まとめ(ポイント)
- カンタベリー大司教は歴史的に英国内で重要な宗教的地位を占める。
- 597年のアウグスティヌス以来続く伝統を持ち、宗教改革以降はイングランド国教会の指導的立場となった。
- 現代の選出は教会側の指名委員会と政府・君主の手続きが組み合わさって行われる。
- 役割は国内の牧会指導と国家的儀礼、さらに世界の聖公会に対する象徴的なリーダーシップを含む。
(注)本文中の歴史的・制度的説明は概説であり、細部の制度運用や慣行は時代や政権によって変わることがあります。


ローワン・ウィリアムズ 前大司教
その他のサイト
- 公式サイト
質問と回答
Q:現在のカンタベリー大司教は誰ですか?
A: 現在のカンタベリー大司教はジャスティン・ウェルビーで、2013年から就任しています。
Q: カンタベリー大主教は何年に創設されましたか?
A: カンタベリー大主教の職は597年に設立されました。
Q: 聖アウグスティヌスはどのようにしてイングランドに来たのですか?
A: 聖アウグスティヌスは597年にローマ教皇の要請でイギリスに渡り、地元の人々をキリスト教徒にするよう説得する使命を負いました。
Q: 英国国教会はいつローマ・カトリックから離脱したのですか?
A: 英国国教会は16世紀初頭にローマ・カトリックから離脱した。
Q:大司教は何を監督しているのですか?
A: 大司教はイングランド南部、中部、ヨーク教区、その他の北部教区(ソドー島、マン島を含む)のすべてのイングランド国教会の教区を監督しています。
Q: ランベス宮殿はどこにあるのですか?
A:ランベス宮殿はロンドン南部に位置しています。