ARCNET(アークネット)とは — LANプロトコルの歴史・仕組み・用途解説

ARCNET(アークネット)の歴史・仕組み・用途を詳解。スター型トポロジー、トークンパッシング、産業・組み込みでの現役活用まで解説。

著者: Leandro Alegsa

Attached Resource Computer NETwork(略称:ARCNETまたはARCnet)は、ローカルエリアネットワーク用の通信プロトコルです。ARCNETは、マイクロコンピュータ向けのネットワークシステムとして1970年代後半に開発され、1977年ごろに商用展開されて以来、1980年代のオフィスオートメーション分野で広く普及しました。その後、プロトコルの持つ低遅延・決定性と簡単な物理構成が評価され、組み込みシステムや産業用オートメーションの分野でも長く使われました。

歴史と発展

ARCNETは1970年代にDatapoint社などの手で開発され、初期のパーソナル/マイクロコンピュータ間通信を手軽に実現する手段として普及しました。1990年代には伝送速度や物理媒体を改良した派生仕様(高速化版やツイストペア、光ファイバー対応など)が登場し、理論上は最大で約20Mbpsまで対応する実装も存在しました。しかし、汎用のTCP/IP対応や高速化が進んだこと、低コストのイーサネット機器が普及したことで一般的なLAN用途では次第に置き換えられていきました。

仕組み(トークンパッシングとトポロジ)

ARCNETは論理的にトークンパッシング(順番にトークンを受け取ったノードだけが送信できる方式)を採用しており、これにより衝突(コリジョン)が発生しません。結果として、遅延のばらつきが小さく、リアルタイム性や決定性が要求される用途に向いています。

  • トークン方式の利点:衝突による再送が不要なため、レイテンシの予測性が高く、産業制御や計測系に適する。
  • トポロジ:ARCNETは物理的にはスター型(集中型ハブ=スターカプラを用いることが多い)で構築されることが一般的でした。論理的にはリングのようにトークンが順に渡る設計です。これによりケーブル敷設やノードの追加・交換が比較的容易でした。

物理層・速度・アドレッシング

初期のARCNET実装では同軸ケーブル(同軸ケーブル)が使用されましたが、後にツイストペアや光ファイバー上でも利用できるようになりました。代表的な特徴は以下の通りです:

  • 初期速度は比較的低く、標準的実装は数Mbpsオーダー(典型的には約2.5Mbps)でした。
  • その後の改良版では伝送速度を引き上げた実装(最大で約20Mbps程度の製品例あり)も登場しました。
  • ノードの識別には小さなサイズの物理アドレス(1バイト程度のノードID等)を用いることが多く、中規模ネットワークの管理が容易でした。

用途・メリット・デメリット

  • メリット
    • トークンパッシングにより衝突が発生しないため、通信の遅延が予測しやすい。
    • スター型の物理構成によってノードの追加・交換・保守が比較的簡単。
    • 実装がシンプルで、組み込み機器や産業用途への組み込みが容易。
  • デメリット
    • 伝送速度でイーサネット等に劣る(大量データ転送には不向き)。
    • 汎用ネットワーク技術(TCP/IPやスイッチングEthernet)の普及により、汎用性とコスト面で不利になった。

現在の利用状況

今日では、オフィスの一般的なLANでは主にイーサネットが支配的ですが、ARCNETはその決定性やシンプルさから、産業用制御機器や古い組み込みシステム、特定の機器群の分野で今も残存していることがあります。たとえば工場の制御ネットワーク、ビルオートメーション、専用の計測システムなど、リアルタイム性や信頼性が優先される環境で採用例が見られます。

まとめ:ARCNETは、初期のマイクロコンピュータ時代に普及したLANプロトコルで、トークンパッシングとスター型の簡単な物理構成により、保守性と決定性に優れた特徴を持ちます。速度面や汎用性でイーサネットに及ばない一方、産業用途など特定の領域では現在でも実用的な選択肢となり得ます。

AMIGAコンピューター用のアークネットアダプター。隣の小さなカードはクレジットカードの大きさZoom
AMIGAコンピューター用のアークネットアダプター。隣の小さなカードはクレジットカードの大きさ

質問と回答

Q:ARCNETとは何ですか?


A:ARCNETは、ローカルエリアネットワークで使用される通信プロトコルです。

Q:ARCNETが普及したのはいつ頃ですか?


A:ARCNETが普及したのは1980年代です。

Q:ARCNETはもともと何に使われていたのですか?


A: ARCNETは元々オフィスオートメーションに使用されていました。

Q: ARCNETは現在もどこで使われているのですか?


A:ARCNETは、現在でもホームオートメーションや特定の産業用アプリケーションで使用されています。

Q: ARCNETはどのようなトポロジーを使用していますか?


A: ARCNETはスター型トポロジーを採用しています。

Q:ARCNETはどのようなメカニズムを使用していますか?


A: ARCNETはトークンパッシングメカニズムを使用しています。

Q:ARCNETは他のネットワークプロトコルと比較して、速度はどうですか?


A: ARCNETはEthernetなどの他のネットワークプロトコルに比べて非常に遅く、最大でも20Mbit/s程度の速度です。


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