シロテテナガザル(Hylobates lar)とは:特徴・生態・分布・寿命
シロテテナガザルの特徴・生態・分布・寿命を写真とデータで解説。樹上での生活・鳴き声・家族行動や保全・飼育のポイントまでわかる入門ガイド。
シロテテナガザル(Hylobates lar)は、テナガザル科の霊長類で、東南アジアの熱帯林に暮らすよく知られたテナガザルの一種です。動物園でも比較的よく見られます。
特徴
体型:体は比較的小型で、長い腕を使った樹上生活(ブラキエーション)に適応しています。体長はおよそ40〜60cm、体重は個体や地域差があり約4〜8kg程度とされます。腕は脚よりもかなり長く、木から木へと器用に渡ります。
毛色:個体や地域によって毛色に差があり、黒褐色、暗褐色、淡褐色など多様です。顔の周りに白い輪がある個体が多く、これが和名の由来となっています(「シロテ」は“白い手”や“白い顔の縁”の意で呼ばれることがあります)。
鳴き声:高く遠くまで届く大きな鳴き声(歌)を出すことで知られ、つがいでデュエット(相互の歌)を行い、縄張りやペアの絆を維持します。
生態・行動
昼行性で、主に木の上で生活します。ほとんどの時間を高い樹冠で過ごし、単独ではなく通常はつがいや小さな家族群で生活して縄張りを持ちます。縄張りは鳴き声やアクティブな行動で他群と区別されます。
- 食性:主に果実(特に熟した果実)を食べますが、葉、花、種子、時に昆虫や小動物も摂取します。
- 移動:長い腕を使ったブラキエーションで素早く移動し、枝から枝へと大きく飛び渡ります。
- 社会構造:多くは一夫一婦制に近いつがいか、親子を中心とした小家族で生活します。縄張りの防衛やコミュニケーションに鳴き声を活用します。
分布と生息地
東南アジアの熱帯雨林に分布します。分布域にはタイ、ミャンマー、ラオス、マレーシア、インドネシア(スマトラ島など)などが含まれ、低地から丘陵の森林に生息します。森林伐採や生息地の断片化により分布域は局所化していることが多いです。生息地は主に熱帯雨林に依存しています。
繁殖・寿命
繁殖:妊娠期間はおよそ7か月で、通常は1頭の幼獣を産みます。子は母に依存して育ち、授乳や親の世話を受けながら成長します。性成熟まで数年かかり、個体間で交配や子育てのタイミングは異なります。
寿命:野生では約25年と報告されることが多いですが、飼育下では環境によっては30年以上生きる個体もあります。
保全状況と脅威
シロテテナガザルは生息地破壊(森林伐採・農地開発)、密猟、ペットとしての捕獲や野生動物取引などの脅威に直面しています。これらにより個体数が減少し、地域によっては深刻な影響を受けています。IUCNレッドリストでは絶滅の危険性が高い区分に挙げられている地域個体群もあります。
保全対策としては、保護区の設定・管理、違法取引の取り締まり、生息地の回復・再森林化、地域住民との協力による保全活動、飼育下での繁殖プログラムなどが行われています。個人としては、野生個体をペットにしないことや森林保全を支援することが重要です。
飼育下で見るポイント
動物園などでの飼育では、広い樹上空間の提供や種の社会構造に配慮したペアまたは家族単位での展示が求められます。豊富な植栽や遊具で運動機会を確保し、果実や葉を中心としたバランスの良い食餌を与えることが健康維持に重要です。
以上がシロテテナガザル(Hylobates lar)の主な特徴・生態・分布・寿命および保全に関する概要です。保全状況は地域や最新の調査で変わるため、詳しい状況は専門機関の最新データを参照してください。

シンシナティ動物園のクライミング・ラーギボン
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