潤滑の定義と仕組み:摩擦・摩耗を減らす潤滑剤の種類と用途

潤滑の基本原理と仕組みを図解で解説。摩擦・摩耗を抑える潤滑剤の種類・用途と選び方まで実践的に紹介。

著者: Leandro Alegsa

潤滑とは、表面同士がスムーズに動くようにするための物理的なプロセスである。表面と表面の間に潤滑油の薄い膜を張ることで、表面の摩擦や摩耗を減らし、温度の上昇を抑えることができる。潤滑剤の膜は、固体と液体の分散体、液体と液体の分散体(グリース)、例外的に固体や気体もある。

例えば、機械に使われる目の涙の働き、関節の滑液の働きなどです。

潤滑の主な作用とメカニズム

潤滑にはいくつかの代表的なメカニズムがあり、用途や条件によって支配的な作用が変わります。

  • 流体潤滑(ハイドロダイナミック潤滑):速い相対運動と適切な粘度の潤滑剤によって、滑走面同士が完全に分離される状態。油膜が荷重を支え、摩擦・摩耗を大幅に低減する。
  • 弾性流体潤滑(EHD):高荷重下のローラーやギアなどで、潤滑剤の粘性上昇と接触部の弾性変形が組み合わさって油膜を形成する。自動車の歯車やベアリングで重要。
  • 混合潤滑:油膜で一部は分離されるが、表面の微視的な凹凸同士が接触する領域もある中間状態。摩耗を抑えるには添加剤の働きが重要。
  • 境界潤滑:低速や高荷重で油膜が十分に確立できない場合、添加剤や固体潤滑剤が表面に吸着して直接的に摩擦を低減する。

潤滑剤の種類と用途

  • 鉱物油および合成油:一般的な機械油、圧縮機油、タービン油、送油系統など。合成油は極低温や高温での性能が優れる。
  • グリース:油を増粘剤で固相に近い形にしたもの。保持性が高く、シール周りや軸受に使われる。
  • 固体潤滑剤:グラファイト、二硫化モリブデン(MoS2)、PTFEなど。高温や真空、電気接触部で使用される。
  • 気体潤滑:空気や窒素を潤滑媒体として利用する例。食品機械やクリーン環境、空気軸受など。
  • 特殊流体・バイオ潤滑:食品機器向けの食品対応油、環境配慮型の生分解性潤滑剤、医療用途では体液に近い成分の滑液など。

潤滑剤に求められる重要な性質

  • 粘度と粘度指数:適切な油膜形成のための基本特性。温度変化に対する粘度の安定性(粘度指数)が高いほど幅広い温度で性能を維持する。
  • 油膜強度・せん断安定性:高荷重やせん断条件下で油膜が壊れないこと。
  • 酸化・熱安定性:高温での分解やスラッジ生成を抑える性質。
  • 腐食防止性:金属表面を保護し、腐食を防ぐ添加剤の有無。
  • 低温流動性(流動点)と引火点:低温時の始動性や安全性に関わる。
  • 添加剤の役割:摩耗防止剤(例:ZDDP)、極圧剤、摩擦改質剤、消泡剤、酸化防止剤などが性能を補助する。

選定のポイントとメンテナンス

  • 使用環境(温度、荷重、速度、汚染物の有無)に合った種類と粘度を選ぶこと。
  • オイル分析(油中の金属粒子、劣化度、添加剤残存など)を定期的に行い、異常の早期発見に役立てる。
  • フィルトレーションや密封の適切な管理で汚染物(ほこり、水分、金属粒子)を除去すると寿命が延びる。
  • 用途に応じた給脂・交換間隔の設定と記録を行うこと(ベアリング、変速機、油圧装置など)。

具体的な用途例

潤滑は自動車のエンジンやトランスミッション、産業用ベアリング、歯車、油圧システム、真空・クリーンルーム装置、食品機械、医療機器まで幅広く使われます。先に触れたように、機械に使われるだけでなく、目の涙や関節の滑液のような生体内の潤滑も、摩擦・摩耗を抑え組織を保護する重要な役割を果たします。

環境・安全上の配慮

  • 廃油処理や漏えい防止、適切な保管で環境汚染を防ぐこと。
  • 生分解性を持つ潤滑剤や低毒性の添加剤が求められる分野が増えている。
  • 作業時は発火点や蒸気の危険性を考慮し、適切な保護具と換気を行う。

まとめると、潤滑は単に「油を塗る」ことではなく、摩擦・摩耗を抑え装置の効率と寿命を向上させるための材料選定、メカニズム理解、適切な維持管理を含む総合的な技術です。用途に応じた潤滑剤の選択と定期的なメンテナンスが、信頼性の高い運転とコスト低減につながります。

船舶用蒸気機関クランクシャフトの潤滑。潤滑油の入った2本のボトルはピストンに取り付けられ、エンジンの運転中に移動する。Zoom
船舶用蒸気機関クランクシャフトの潤滑。潤滑油の入った2本のボトルはピストンに取り付けられ、エンジンの運転中に移動する。

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