マンタ(Manta)とは?最大のエイの特徴・種類・生息地・生態まとめ
マンタ(Manta birostris)はエイの中で最大の種のひとつで、翼(胸鰭)を広げた全幅が最大7.6メートル、体重は約1,300キログラムに達する個体が報告されている。世界の熱帯海域を中心に分布し、サンゴ礁や沿岸域、沖合の湧昇域などプランクトンが豊富な海域でよく見られる。サメ類、エイ類、スケート類(Elasmobranchii)の中では脳と体の比率が比較的大きく、深く潜る個体でも脳が機能的に保たれていることが観察されている。
特徴
マンタは扁平で大きな胸鰭を左右に広げて「飛ぶ」ように泳ぐ姿が特徴。頭部には先端を丸めた2本の「頭帆(セファリックフィン)」があり、これを使って水と餌を口に導く。口は前方に大きく開き、櫛状の鰓板(フィルタープレート)で微小なプランクトンや小魚を濾し取るフィルターフィーダー(濾過摂食)である。体色や背面の模様は個体ごとに異なり、識別に使われる。
種類と分類
一般的にマンタは少なくとも2種が知られており、沖合を回遊するジャイアントマンタ(Manta birostris)と、沿岸のサンゴ礁などに留まる傾向のあるリーフマンタ(Manta alfredi)が区別されている。現在、属名や系統関係の見直しが行われており、分類学的な扱いが変更される可能性がある(近年ではManta属を他のエイ属に統合する提案などが出ている)。
生息地・分布
- 主に熱帯および亜熱帯の沿岸域から沖合まで幅広く分布する。
- サンゴ礁周辺、河口近傍、海流や湧昇が発生する地点(プランクトンが集まる場所)に集まりやすい。
- 個体によっては広域回遊を行い、餌場や繁殖地を季節的に移動する。
生態(食性・行動)
- 主にゾープランクトン、動物プランクトン、小型の甲殻類や小魚を濾し取って摂食する。頭帆を使って効率よく水流を口へ導く。
- 「バレルロール」などの摂食行動を示し、集中して餌を食べるために同じ場所でぐるぐる回ることがある。
- クリーニングステーション(イソギンチャクやサンゴ、岩周りにいるクリーナーフィッシュが付着生物や寄生虫を取る場)に個体が定期的に訪れ、共生的な行動が観察される。
- 群れを作ることもあり、特に餌場や交尾期に多く見られるが、単独行動をとる個体もいる。
- 天敵は限られており、イタチザメや大型のサメ類、シャチなどが稀に捕食することがある。
繁殖
マンタは胎生(胎内で卵が孵化して稚魚が生まれるタイプ)の生殖様式を持ち、妊娠期間はおよそ1年程度と推定されている。出産間隔は長く、一般に少数(通常1頭、まれに2頭)の仔を産むため、成長と繁殖の速度が遅く個体数回復に時間がかかる。
保全と脅威
- 漁業での混獲や標的漁(鰓板などを求める目的)、船舶との衝突、海洋汚染や生息地の劣化が主な脅威である。
- ワシントン条約(CITES)で国際取引の規制対象になっているなど、国際的に保護の必要性が認識されている。各国や地域で保護区域や漁獲規制が導入されている例もある。
- 生息環境の変化や気候変動により餌の分布が変わると、回遊や繁殖に影響が出る可能性がある。
人間との関係
- ダイバーやスノーケラーに人気の被写体であり、エコツーリズムの資源として重要視される。適切な観光ルールを守ることで地域経済と保全を両立させる取り組みが進められている。
- 一方で一部地域では鰓板を目的とした漁業が行われ、生息数の減少や乱獲の問題が指摘されている。
観察のポイント
- 個体ごとの背面模様は識別に使われ、個体識別調査により回遊経路や個体群動態が明らかになっている。
- クリーニングステーションや湧昇域、潮の当たる礁池周辺では高確率で観察できることが多い。
総じてマンタは大型で目を引く魅力的な生物であると同時に、成長や繁殖が遅いため人為的圧力に弱い。保全のためには漁業管理、保護区設定、観光のルールづくりなど複合的な対策が重要である。

再生メディア マンタの動画