Microsoft Visual C++とは:概要、機能、歴史とC規格・ライブラリの対応
Microsoft Visual C++の概要・機能・歴史を解説。C規格(C99/C11)や標準ライブラリ対応状況、互換性や導入のポイントをわかりやすく紹介。
Microsoft Visual C++は、Microsoft社が提供するC/C++向けの統合開発環境(IDE)およびコンパイラ群です。主にC言語やC++での開発に用いられ、コード編集、ビルド、デバッグ、プロファイル、パッケージ化までを包含するツール群が統合されています。書き込まれたコードのバグを検出・解析するためのデバッグ機能や、補完機能(IntelliSense)、静的解析、パフォーマンス解析など、プログラマーに役立つ機能が豊富に用意されています。製品は試用版や有償版のほか、機能限定ながら無償で使えるCommunity版(以前のExpress版に相当)も提供されています。
主な構成要素と機能
- MSVCコンパイラ(cl.exe):C/C++の翻訳・最適化を行うコンパイラ。本体はコマンドラインツールですが、Visual Studio IDEに統合され使いやすくなっています。
- ランタイムライブラリ(CRT / STL):C標準ライブラリやC++標準ライブラリ(Microsoftの標準ライブラリ実装)を提供します。これらはビルド時および実行時に必要になります。
- デバッガ:ブレークポイント設定、ステップ実行、コールスタックの解析、変数ウォッチ、メモリ/ヒープ診断などを備えます。
- プロファイラ・診断ツール:実行時のパフォーマンス分析やメモリリーク検出などを行うツール群。
- ビルド/プロジェクトシステム:MSBuildによるビルド管理、ソリューション/プロジェクト単位の設定、NuGetパッケージ管理など。
- デバッグ用CRT/診断機能:デバッグ版のCRTには追加チェック(ヒープ検査、アサート等)が組み込まれており、バグ発見に有効です。
歴史の概略
この製品はかつて「Microsoft C/C++」と呼ばれ、主にC言語向けのコンパイラとして始まりました。以降、Windowsアプリケーション開発の中心的なコンパイラとして進化し、1990年代から2000年代にかけてVisual Studioファミリの主要コンポーネントとして統合されてきました。バージョンを重ねるごとにC++言語標準(C++11/14/17/20等)のサポートを順次強化し、IDEの機能も充実しました。
C規格・標準ライブラリの対応状況
Visual C++(MSVC)は歴史的に、C言語の最新標準(特にC99)に対する言語機能や標準ライブラリの完全実装が遅れていたことで知られます。
- 言語(文法)面:MSVCは長らくC99の多くの言語機能を完全実装していませんでした。近年はC言語の互換性改善に取り組んでおり、徐々にC99/C11の一部機能がサポートされていますが、C99/C11の全ての拡張を網羅しているわけではありません。C11の新機能についても対応は限定的です。
- 標準ライブラリ(CRT)面:Visual C++はバージョンを跨いでC標準ライブラリ関数の追加・改善を行ってきました。特にVisual Studio 2015で導入されたUniversal CRT(UCRT)により、多くのC99相当のライブラリ関数が提供され、従来よりも標準準拠度が向上しました。結果として、2013〜2015年以降のリリースでC99関連のライブラリ関数が一気に利用可能になったケースが多く見られます。
- 実務上の注意:Cの最新規格(C11など)の全面的・最新の言語機能やライブラリを必要とするコードを書く場合、MSVCでは一部動作しない・代替実装が必要になることがあります。移植性を考える際は、コンパイラのサポート表(各Visual Studioのドキュメント)を確認してください。
実行に必要なランタイムと配布
作成したプログラムが実行時に必要とするランタイムライブラリが対象の環境に存在しないと、実行できない場合があります。そのため多くのアプリケーションはVisual C++ Redistributable(再頒布可能パッケージ)をインストール要件として指定しています。主なポイントは次のとおりです:
- WindowsにプリインストールされているCRT(msvcrt.dll等)と、Visual C++が提供するランタイム群は異なる場合があります。
- VS2015以降はUCRTの導入によりランタイムの配置・互換性モデルが変更され、配布方法や依存関係が簡素化されましたが、適切なRedistributableをインストールすることが推奨されます。
- 配布方法としては、インストーラにRedistributableを同梱する、静的リンクでCRTを埋め込む、あるいは配布対象マシンに事前にパッケージを入れておく等があります。それぞれ利点・欠点(ファイルサイズ、セキュリティパッチの適用、DLL競合)があります。
互換性と利用上のポイント
- Windowsネイティブの開発(GUI/コンソール/サービス/ドライバー等)には非常に馴染み深く、豊富なサンプルやライブラリ、Microsoft自身のツールと密に統合されています。
- クロスプラットフォーム開発やPOSIX互換性が重要な場合は、コードの一部を書き換えたり、追加の互換レイヤ(Boostやlibc互換ライブラリ)を使う必要がある場合があります。
- 最新のC++標準サポート状況(C++11/14/17/20など)は比較的早く取り入れられており、モダンC++を書くうえでの選択肢として有力です。ただしC言語の最新仕様の一部は限定的なので、C特有の最新規格を前提にしたコードは注意が必要です。
まとめると、Microsoft Visual C++はWindows向けC/C++開発の代表的なツールチェーンであり、IDE・コンパイラ・ランタイム・デバッグ機能が揃っています。C言語の最新規格(特にC99/C11)への対応状況は以前より改善されていますが、完全互換を前提にする場合は各バージョンのドキュメントでサポート状況を確認してください。プログラムの実行には対応するVisual C++ランタイム(Redistributable)が必要になることが多い点にも注意が必要です。
質問と回答
Q: Microsoft Visual C++とは何ですか?
A: Microsoft Visual C++は、マイクロソフト社製のコーディング環境で、主にCやC++でのコーディングに使用されます。
Q:Microsoft Visual C++はどのようなツールを提供していますか?
A:Microsoft Visual C++は、書かれたコードのバグを見つけるのに役立つデバッグツールなど、プログラマーに役立つツールを提供します。
Q:Microsoft Visual C++は無償で入手できますか?
A: はい、Microsoft Visual C++は、試用版と無料版の両方があります。
Q: すべてのプログラムは、Visual C++ ライブラリパッケージがコンピュータにインストールされていないと実行できないのでしょうか?
A: 一部のプログラムでは、Visual C++ ライブラリパッケージがコンピュータにインストールされていないと動作しないものがあります。
Q:Visual C++の旧バージョンは何と呼ばれていましたか?
A: Visual C++の前のバージョンはMicrosoft C/C++と呼ばれ、元々はC言語で書かれたコードをコンパイルするために使用されていました。
Q:Microsoft Visual C++の最初のバージョンは、いつ正式にリリースされたのですか?
A: Microsoft Visual C++の最初のバージョンは、1993年の2月に正式にリリースされました。
Q:Visual C++は、C99標準ライブラリを完全にサポートしていますか?
A: Visual C++は、2015年にC99標準ライブラリのフルサポートを搭載しました。しかし、C99リビジョンに取って代わったC11リビジョンは、将来のバージョンで追加する予定があるものの、最近のVisual C++のバージョンではまだサポートされていません。
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