ミー散乱(Mie散乱)とは:定義・原理とレイリー散乱との違い

ミー散乱(Mie散乱)の定義と原理を図解でわかりやすく解説。波長と粒子径の関係やレイリー散乱との違い、式や応用例まで網羅。

著者: Leandro Alegsa

ミー散乱とは、光が物体に当たったときに散乱する様子のことです。ドイツの物理学者Gustav Mieにちなんで名づけられた。この理論は、すべての波長の光と、すべての大きさの物体に有効です。もし物体が光の波長よりずっと小さい場合は、レイリー散乱理論もかなり有効です。

対象物が大きいと、光は対象物の多くの場所に当たります。散乱のかなり良い式があります。

基本的な原理とサイズ指標

ミー散乱は、マクスウェル方程式を用いて、等方的な均質球(理想的には半径 r、複素屈折率 m を持つ)に入射した平面波の散乱場と内部場を厳密に求める解析解です。解は球面調和関数やベッセル関数(球ベッセル関数、ハンケル関数など)の級数展開として表され、各項に対応する係数を a_n, b_n として計算します。

解析上もっとも重要な無次元量はサイズパラメータ x で、次のように定義されます:
x = 2π r / λ(ここで r は粒子半径、λ は媒質中の光の波長)。

レイリー散乱との違い(簡潔な比較)

  • 有効領域:レイリー散乱は x ≪ 1(粒子が波長より十分小さい)で成り立ち、散乱強度がおよそ λ^−4 に比例するため短波長(青色)が強く散乱されます。一方、ミー散乱は x が 0.1〜数十、数百に至るまで幅広い x に対応します。
  • 波長依存性:ミー散乱では波長依存性が弱く、特に粒子が波長より大きい場合はほとんど波長に依存しないため、雲が白く見える理由(雲中の水滴は波長に対して大きい)を説明します。
  • 角度分布:レイリー散乱はほぼ等方的だがわずかに後方に偏ります。ミー散乱では強い前方散乱(入射方向近くへの散乱)が生じ、散乱の位相関数は角度によって複雑に変化します。
  • 偏光と共鳴:ミー散乱は偏光依存性やサイズ共鳴(フラウンホーファーやウッドのような構造)を示し、散乱断面が波長や粒子サイズに応じて振動的に変化します。

重要な量と用語

  • 散乱断面積(C_sca):粒子が散乱する光の有効面積。
  • 吸収断面積(C_abs):粒子が吸収する光の有効面積。
  • 消光断面積(C_ext):C_ext = C_sca + C_abs(散乱と吸収の合計)。
  • 効率係数(Q):断面積を幾何学的断面 π r^2 で割った無次元量(例:Q_sca, Q_abs, Q_ext)。
  • 非対称パラメータ g:位相関数の平均余弦で、前方散乱の程度を示す(g = 0 等方、g → 1 強い前方散乱)。

数値計算と適用範囲の限界

ミー理論は球形粒子に対する厳密解であり、均質球や同心多層球に対して広く使われます。実際の粒子が非球形である場合は、以下のような他の数値法が使われます:

  • T-マトリクス法(回転対称あるいは準定常な散乱体)
  • 離散双極子近似(DDA:複雑な形状の粒子)
  • 有限要素法(FEM)や境界要素法(BEM)

現象的な特徴と実例

  • 雲や霧:水滴が光の波長より大きいためミー散乱が支配し、ほぼ波長に依存しない散乱が起こって白く見える。
  • エアロゾルと大気光学:大気中の微粒子(エアロゾル)のサイズ分布解析やリモートセンシングにミー理論が利用される。衛星や地上観測での光学的厚さや偏光観測の解釈に重要。
  • 生体光学:細胞や組織中の散乱はミー散乱近似で扱われることが多く、光学イメージングや光学トモグラフィでの信号解釈に寄与する。
  • 材料解析・粒子計測:レーザー回折法による粒径分布測定はミー散乱理論を用いて測定データを逆解析する。

実務的な注意点

  • ミー散乱の計算はサイズパラメータ x や屈折率の実数・虚数成分に敏感で、広いサイズ分布を持つ媒質では混合則や積分を用いた平均化が必要です。
  • 観測データ(偏光、角度依存性、波長依存性)を組み合わせると、粒子のサイズ分布や複素屈折率をより確実に推定できます。
  • 球形近似に依存するモデルは非球形粒子や集合体(クラスタ)が支配的な場合に誤差を生じるため、形状を考慮したモデル選択が重要です。

ミー散乱は古典的で強力な理論であり、光学・大気科学・生物物理学・計測工学など多くの分野で実用的に使われています。理論の背景(級数解の導出、係数 a_n, b_n の計算)や数値実装については多くの教科書やソフトウェア(公開のミー散乱コードやライブラリ)が利用可能です。



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