ショパン ワルツ 変ニ長調 作品64第1番(ミニッツ・ワルツ/小犬のワルツ)解説

ショパン『ワルツ 変ニ長調 作品64-1(小犬のワルツ)』の作曲背景(マルキーニョス由来)・楽曲構成・演奏時間・聴きどころを丁寧に解説。

著者: Leandro Alegsa

「ミニッツ・ワルツ」は、フレデリック・ショパン「ワルツ 変ニ長調」作品64 第1番の愛称です。1847年に作曲されたピアノ独奏曲で、通称「小犬のワルツ」(仏語Valse du petit chien)とも呼ばれます。この愛称は、作曲当時ショパンが小さな犬が自分の尻尾を追いかける様子を見ていたという逸話に由来します。その小犬は「マルキーニョス」と伝えられ、ショパンの友人であるジョージ・サンドの飼い犬でした。ショパンは数通の手紙でこの犬について触れており、1846年11月25日の手紙には「マルキーニョスが私に会いたがっていて、私の家のドアを嗅いでくれたことに感謝している」と書いています。

作曲と出版

このワルツはBreitkopf & Härtel社から出版され、三曲組のワルツ集Trois Valses, Op.64の一曲として世に出ました。出版社が付けた"Minute"という愛称は「非常に小さい(小さな)」という意味合いの語に由来しており、演奏時間が1分(minute)であることを示すものではありません。確かに楽譜のテンポ記号はMolto vivace(英語:とても速い、とても生き生きとした)ですが、ショパンがこの曲を1分で演奏することを意図したわけではなく、一般の演奏はおおむね1分半から2分半程度です。

形式と楽曲の特徴

拍子記号は3/4で、典型的なワルツの「オム・パ・パ(1拍目にアクセント)」のリズムを基礎にしています。楽曲はおおむね三部構成(ABA形式)で書かれており、以下のような特徴があります。

  • Aセクション(主題):左手の「オム・パ・パ」の伴奏に乗って、右手で八分音符と三連符を入り混ぜた渦巻くような装飾的なラインが展開します。軽快さと流麗さが要求され、メロディーの歌わせ方と装飾音の明瞭さの両立が大切です。
  • Bセクション(中間部):Aとは対照的に、より歌うようで一貫したリズムの進行が現れ、ハーモニーやテクスチャーに落ち着きが見られます。中間部の終わりには長いトリルや装飾が入り、Aに戻るための橋渡しになります。
  • 終結:再現部を経て、下降する音階的な動きや短い終結部で曲を締めくくります。全体としては軽やかで華やかな短形作品ですが、細部の表現が豊かな演奏効果を生みます。

演奏と解釈のポイント

  • テンポと表情:Molto vivaceの指示に従いつつも、単なる速度競争にならないよう心がけます。フレーズごとの呼吸や軽いルバートで歌い回しを作ると効果的です。
  • ペダリング:和声の変化が速いため、踏み替え(レガートのための短い踏み替え)を丁寧に行い、装飾音で和声をぼかさないようにします。だらしなく全体を踏み続けると細部が濁るので注意。
  • 右手の装飾線:三連符や細かい音形は軽やかに、しかし明確に。メロディーラインを歌わせる一方で、装飾音が背景に沈みすぎないようバランスを取ります。
  • 左手のバランス:伴奏の「オム・パ・パ」を明確に保ちながら、低音が重たくならないように。左手のリズムが躍動感を支えます。
  • テクニック的練習法:難しい部分はゆっくりから始め、指の独立、手首の柔軟性、部分反復で体に入れる。トリルや装飾は別々に練習してから楽曲に戻すと効果的です。

難易度とレパートリー的位置づけ

技術的には中級から上級向けの作品とされ、テクニックの華やかさと表現力の両方が試されます。短い曲ながら、演奏者の音色感・テンポ感・ペダリング技術が顕著に表れるため、コンサートの encore(アンコール)やピアノ発表会でも人気の高いレパートリーです。

文化的影響と使用例

このワルツは映画やテレビのサウンドトラックなど大衆文化でも頻繁に用いられており、若い世代にも親しまれています。例として、ドラマやシリーズ「プリティ・リトル・ライアーズ(Pretty Little Liars)」「The Girlfriend Experience」「ワン・ツリー・ヒル(One Tree Hill)」「セックス・アンド・ザ・シティ(Sex and the City)」などで使用されています。

参考となる録音や演奏家

録音は多岐にわたり、演奏家によってテンポや表情の解釈が大きく異なります。例えばアーサー・ルービンシュタイン、ウラディミール・ホロヴィッツ、マルタ・アルゲリッチなどの名演から、現代の若手ピアニストの演奏まで聴き比べることで、この曲の多様な表現可能性を理解できます。

最後に、このワルツは短く親しみやすい一方で、作曲上の技巧と表現の妙が凝縮された作品です。テクニックの習得だけでなく、ワルツ特有のリズム感や歌心を育てる教材としても非常に有用です。

ミニットワルツのオープニング部分Zoom
ミニットワルツのオープニング部分

質問と回答

Q:フレデリック・ショパンの「ワルツ ニ長調 作品64 第1番」の愛称は?


A: "Minute Waltz" は、フレデリック・ショパンのワルツ ニ長調 作品64 第1番の愛称です。

Q:誰が書いたのですか?


A:フレデリック・ショパンが1847年に書いたものです。

Q:どのような楽器で演奏されているのですか?


A:ピアノのための作曲です。

Q:なぜ「小犬のワルツ」と呼ばれることがあるのですか?


A:これは、ショパンが作曲中に、尻尾を追いかける小犬を見ていて、その小犬が、彼と親交のあった友人ジョルジュ・サンドの愛犬マルキのものだったからだそうです。

Q:このワルツは誰が発表したのですか?


A: Breitkopf & Härtel社からワルツ集「Trois Valses」作品64の一部として出版されています。Trois Valses, Op.64と呼ばれるワルツ集の一部である。


Q:一般的な演奏時間はどのくらいですか?


A:一般的な演奏時間は、1分半から2分半です。

Q:このワルツはどのような形式なのでしょうか?


A: ワルツは3連符またはABA形式で書かれており、Aセクションは8分音符と3連符がオムパパのリズムで渦を巻くように並んでいるのが特徴で、次にBセクションは一貫した2分音符と4分音符のパターンで構成されており、再びAセクションに戻って繰り返し、下降音階で終わります。


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