Mortier de 12 pouces Gribeauval(グリボーバル式12プース迫撃砲)は18世紀後半に用いられたフランスの迫撃砲で、Jean Baptiste Vaquette de Gribeauvalが提唱したGribeauvalシステムに基づいて設計・製造された攻城・陣地攻撃用の大砲群の一員である。名称の「12プース」は砲弾の直径を示す古いフランスの単位で、1プース(1インチ)=約2.707cmのため、12プースは約32.48cmに相当する。Gribeauvalシステムでは砲を一枚の金属塊から鋳造し、その内部を穿孔して砲身とする方式が採られ、これにより従来よりも軽量で生産や整備が容易な兵器が実現された。
設計と特徴
モルティエ・ド・12プースは高角射(傾斜の大きい軌道)で爆砲(爆発弾)を投射する迫撃砲であり、城壁や陣地内部を直接狙うために用いられた。主な設計上の特色は次の通りである。
- チャンバー形状:グリボーバル式の12プースは円筒形のチャンバー(発射室)を採用していた。円筒形チャンバーは発射効率が良く、初期には広く使われたが、火薬の燃焼や摩耗によってチャンバーが早くすり減る欠点もあった。
- 材質と製造:砲身は一枚鋳造(単体鋳造)され、内面を機械で穿孔して仕上げる方式で作られた。素材は一般に青銅(真鍮)あるいは鋳鉄で、用途や時代によって差がある。
- 口径と弾薬:12プースの口径は約32.48cm。発射される弾は爆薬入りの砲弾(投爆弾/bomb)、焼夷弾や破片弾、場合によっては近接防御用の散弾など多様で、砲弾の重量は弾種や時代で変わるが数十キログラムに達することが多い。
- 射程と運用特性:迫撃砲は高角発射を行うため飛翔距離は比較的短めで、有効射程は数百メートルから1キロメートル前後(装薬量・砲弾の重量・仰角に依存)とされる。着弾は垂直に近い角度になるため、敵の陣地内部や城壁の背後を直接狙える。
- 搭載と移動:攻城用途では頑丈な木製または金属製のプラットフォーム上に据え付けられ、反動を受け止めるための支持構造が必要だった。沿岸防備用に特化した個体は強固な金属製プラットフォームや固定架台に組まれ、艦船への斉射や港湾防御に用いられた。
運用と戦歴
モルティエ・ド・12プース・グリボーバルは18世紀末から19世紀前半にかけて、主に攻城戦と沿岸防衛で用いられた。代表的な運用例としては、1780年から82年にかけてのアメリカ独立戦争でフランス軍が同盟軍支援の一環として投入した際に使用されたことが知られている。とくに1781年のヨークタウン包囲戦では、包囲砲撃や施設破壊のためにモルティエ類が運用され、敵陣内部に効果的な被害を与えた。
その後もモルティエ・ド・12プースはフランス革命戦争およびナポレオン戦争期にかけてフランス軍の攻城戦力や要塞砲兵隊で用いられた。高角射撃能力により城壁背後や掩蔽された目標への攻撃に適していたが、携行性の面では野戦用の軽砲に比べ劣ったため、主に固定的または限定的に配備された。
欠点と発展(ゴーマー式への移行)
円筒形チャンバーの摩耗は運用上の大きな課題であり、発射を重ねるごとにチャンバー内径が拡大してしまうため、火薬の燃焼効率や初速が低下して精度が落ちる問題があった。これを改良するために19世紀初頭にはチャンバー形状を円錐(漏斗)状にしたゴーマー(Gomer)式のような新方式が登場した。ゴーマー式はチャンバーの摩耗を抑えつつ粉末の燃焼効率を向上させ、より軽量で信頼性の高い迫撃砲設計へつながっていった。
まとめ・歴史的意義
モルティエ・ド・12プース・グリボーバルは、Gribeauvalシステムの標準化と生産性改善の恩恵を受けた代表的な攻城兵器であり、18世紀末から19世紀初頭の諸戦役で有用な役割を果たした。円筒チャンバーの長所と短所を抱えつつ、後の技術(ゴーマー式など)へと発展する過程において重要な過渡的兵器であった。沿岸防備型の固定型号から陣地攻撃用まで用途は多岐にわたり、当時の砲兵戦術と攻城技術の一翼を担った。

