スコットランドの「Not proven」評決とは|意味・陪審制度・歴史解説
スコットランドの独特な「Not proven」評決を意味・陪審制度・歴史から図解で分かりやすく解説。制度の違いや実務上の影響が一目でわかる。
Not provenの意味と法的効果
Not provenはスコットランドの刑事手続における三つの評決の一つで、直訳すると「立証されていない」または「証明されていない」という意味です。法的には「Not proven」も「Not guilty(無罪)」と同様に被告の有罪を認めない結論(釈放・免責)をもたらします。つまり、被告は有罪にはならず、通常は同じ罪で再び有罪に問われることはできません(例外的な改正や新証拠の扱いについては別途法制度による)。
陪審制度と評決の仕組み
スコットランドの刑事事件の陪審は、イングランドなどと異なり次の特徴があります。
- 陪審員は15人で構成され、陪審員は単純多数決で評決を下します。
- 有罪とするには少なくとも8人の賛成が必要です(15人中8票以上)。その基準に満たなければ有罪とはならず、結果として無罪のいずれかの評決になります。
- スコットランドの評決の表現は伝統的に三択で、「有罪(Guilty)」、「無罪(Not guilty)」、「Not proven」があり、いずれの無罪評決でも法的には被告は解放されます。
「Not proven」と「Not guilty」の違い
- 法的効果:どちらも被告に有罪の帰結を伴わない(有罪にならない)点で同等です。
- 意味合い・印象:「Not guilty」は陪審が被告の無罪を認めた、あるいは検察の証明が満たされなかったと積極的に受け取られることが多いのに対し、「Not proven」は「検察側が証明できなかったが、陪審は被告が無罪と断言できない」という微妙な疑念を伴う場合に使われることが多く、社会的な烙印(スティグマ)を残すという批判があります。
- 実務上の差:被告の法的地位(無罪と同等)に差はありませんが、その後の社会的・メディア上の受け止め方や民事責任を問われる場面で影響することがあります。
歴史と呼称
三つの評決体系はスコットランド法の伝統に根ざしており、外部からはしばしば特徴的に見られます。国外では「証明されていない評決」と呼ばれたり、スコットランド内では俗に「私生児評決」と呼ばれることがあります。これはセルカーク裁判所の保安官であったサー・ウォルター・スコットが使った表現に由来するとされ、英語では“bastard verdict”(非正統の評決)などとも言われてきました。
論争と改正の動き
「Not proven」をめぐっては賛否両論があります。
- 支持する意見:疑わしい事件で有罪を避ける「安全弁」として機能し、誤判のリスクを下げる効果があると主張されます。
- 批判的意見:無罪でありながら「Not proven」という形で曖昧な評決が付くことで被告の評判が回復されにくく、法の下の無罪という原則の分かりやすさを損なう、陪審のメッセージが不明瞭になる、という問題が指摘されています。
- このためスコットランド内では廃止や見直しを求める議論や調査が度々行われており、制度改善の検討が継続しています。
まとめ
Not provenはスコットランド固有の評決スタイルで、法的には無罪(有罪でない)を意味する一方、社会的な意味合いや陪審の示す「疑念」を残す特殊な評決です。陪審の人数や過半数の要件などスコットランド独自の手続と相まって、司法制度の特色となっており、現在も国民的・学術的に議論が続いています。
百科事典を検索する