過剰請求(オーバーチャージ)とは|カルテル被害の定義・算定方法・賠償とラーナー指数

過剰請求(オーバーチャージ)とは何か、算定方法・ラーナー指数との関係、賠償請求の実務と判例をわかりやすく解説。

著者: Leandro Alegsa

過剰請求(オーバーチャージ)とは、価格協定(カルテル)によって実際に支払われた価格と、もしカルテルが存在しなかった場合に支払われていたであろう競争的な価格(いわゆる「ベンチマーク価格」「であろう価格」)との差額を指す経済・法律用語です。具体的には、カルテルが設定した高い価格により、買い手(あるいは売り手)が余分に支払った金額の総和が過剰請求額になります。こうした過払い分は、民事の反トラスト(独占禁止)訴訟における損害賠償請求の主要な基礎となります。米国の連邦反トラスト法(例:Clayton Act 第4条に基づく判例や制度)では、カルテルによって実際に被った損害が法廷で証明されれば、原告はその損害額の3倍(トリプルダメージ)を請求できる場合があります。

過剰請求の算定方法(基本式)

過剰請求は、単位当たりの過剰額と取引量を掛け合わせて合計します。基本的な表現は次の通りです。

  • 単位当たり過剰請求額 = 実際の市場価格(PM) − 競争的ベンチマーク価格(PC)
  • 総過剰請求額 = (PM − PC)× 取引数量(Q)
  • 過剰請求比率(%) = (PM − PC)/PC

例:PM = ¥120、PC = ¥100、Q = 1,000個なら、単位当たり過剰 = ¥20、総額 = ¥20,000、過剰請求比率 = 20% となります。

ラーナー指数との関係

過剰請求比率は市場力を示す指標の一つであり、経済学でよく使われるラーナー指数(Lerner index)と密接な関係があります。どちらも分子に(PM − PC)を使いますが、分母の取り方が異なります。

  • 過剰請求比率 = (PM − PC)/PC
  • ラーナー指数 = (PM − PC)/PM

両者とも、市場が完全競争であるか、カルテルが価格に影響を与えない場合にはゼロになります。ラーナー指数は通常 0 から 1 の間に収まり(完全独占に近づくと1に近づく。ラーナー=(P−MC)/P の場合、限界費用 MC が非負であることから上限1)、一方で過剰請求比率はベンチマーク価格 PC が極めて小さい(ほぼゼロに近い)場合には理論上上限がなく大きくなり得ます。したがって、過剰請求比率は「何倍の割増が行われたか」を直感的に示す一方、ラーナー指数は「価格が自己の価格に対してどれだけ割高か」を示す指標と考えるとわかりやすいです。

競争的ベンチマーク価格(PC)の推定方法

過剰請求を算定する上で最も重要かつ難しいのが「もしカルテルがなかったらどの価格になっていたか(PC)」の推定です。主な方法には次のものがあります。

  • 過去の価格推移を用いる前後比較(before-and-after)
  • 類似市場や地域を対照とする差分の差分法(difference-in-differences)や合成コントロール法
  • コストベースの推定(限界費用や平均費用に基づくコスト構造の推定)
  • 入手可能な内部資料(カルテル文書、会議記録等)や競争当事者間の行動証拠
  • 需要・供給を同時推定する回帰モデルや構造推定(構造推定モデルによりカルテル行為の価格影響を推定)

どの方法を使うかはデータの可用性や市場の性質によります。裁判では複数の方法を併用して頑健性を示すことが多いです。

法的救済と実務上のポイント

  • 損害額の計算:単位当たりの過剰額×数量に加え、利息や弁護士費用、場合によっては法域に応じた倍賞(例:米国のトリプルダメージ)を含めて請求されることがあります。
  • パッシングオン(転嫁)の問題:買い手が過剰分を最終消費者に転嫁した場合、その分を差し引くかどうかは法域によって扱いが異なります。例えば米国の最高裁判例や州法、各国の間で直接購入者と間接購入者の回復の可否に違いがあります(例:Illinois Brick の問題など)。
  • 証拠の重要性:カルテルの存在と価格影響を立証するために、ドキュメント、メール、価格データ、会議記録、独占的行動の再現性を示す経済分析が必要です。
  • 集団訴訟・時効:カルテル被害は多くの場合多数の被害者に広がるため、クラスアクションや団体訴訟が利用されます。時効や申立期間にも注意が必要です。

限界と注意点

過剰請求の算定は理論的には明確でも、実務では次のような困難があります。

  • 適切なベンチマーク価格の不確実性(複数の合理的推定があり得る)
  • 市場構造の変化や外生的要因(需要ショック、原材料価格変動など)の分離
  • データの欠損や集計の問題(製品差異、品質の違いなど)
  • 被害の間接性(中間業者による転嫁など)に関する法的取扱いの違い

まとめると、過剰請求(オーバーチャージ)はカルテル被害の中心的な損害指標であり、算定には正確なベンチマーク価格の推定と堅牢な経済分析が不可欠です。法的救済の範囲や算定方法は国や裁判制度によって異なるため、具体的事案では専門家(経済学者・弁護士)による個別の分析と戦略が重要になります。

質問と回答

Q:経済用語でオーバーチャージとは何ですか?


A: 過大請求とは、価格カルテルによって買い手または売り手が実際に支払った金額と、カルテルがない場合に支払ったであろう金額との差のことです。

Q: 民間反トラスト法違反訴訟で原告が回収できる損害賠償の主要な構成要素は何ですか?


A: カルテルの顧客が支払った過払い金の総額が、私的独占禁止法違反訴訟で原告が回収できる損害賠償の主要な構成要素です。

Q: カルテルによる過大請求の場合、米国連邦反トラスト法上、買い手は何を請求されるのでしょうか?


A: カルテルによる過大請求によって損害を受けた買い手は、米国連邦反トラスト法に基づき、法廷で証明できる過大請求額の3倍を請求する権利があります。

Q: ラーナー指数とは何ですか?


A:ラーナー指数とは、経済学で最も一般的な市場支配力の指標で、分子は(PM-PC)(PMは観察された市場価格、PCは競争的ベンチマーク価格)、分母は(PM)です。

Q:過大請求比率とは何ですか?


A:過大請求比率とは、経済学における市場支配力の指標で、分子は(PM-PC)(PMは観測市場価格、PCは競争指標価格)、分母は(PC)です。

Q: 市場が完全に競争しているとみなされる場合や、カルテルが価格上昇に効果がない場合とはどのような場合ですか?


A:市場が完全競争である場合、あるいはカルテルが価格引き上げに有効でない場合は、ラーナー指数、過大請求率ともにゼロとなります。

Q: ラーナー指数の上限はどのくらいですか?


A:ラーナー指数の上限は1です。これは、ある市場で純粋な独占価格が設定されたときに発生します。過大請求には上限がありません。


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