パンテオン(ローマ)—古代ローマのドーム建築と歴史

パンテオン(ローマ)のドーム建築と歴史を詳解。保存状態の良い古代ローマ建築の設計・構造・変遷と宗教的転用を解説。

著者: Leandro Alegsa

パンテオン(「すべての神々の神殿」の意味)は、ローマにある建物である。もともとは古代ローマの神々の神殿として建てられ、紀元前1世紀末から1世紀初頭にマルクス・アグリッパによって創建されたとされますが、現存する建物は西暦126年頃のハドリアヌス帝の時代に再建されたものです(前期の建物は火災などで数度焼失しました)。建物正面の破風に残る銘文「M·AGRIPPA·L·F·COS·TERTIVM·FECIT」は、アグリッパによる創建を伝えています。今日では、当初どのような神々が祀られていたのか細部まで確実にわかっているわけではありませんが、パンテオンは多神教の祭祀の場として重要な役割を担っていたことは確かです。

歴史と用途の変遷

パンテオンはローマの建築物の中で最も保存状態の良いものの一つで、建設されて以来、ほぼ連続して使用されてきました。7世紀(西暦609年)にローマ・カトリック教会の施設として転用され、聖母と殉教者に捧げる教会「Santa Maria ad Martyres」となったことが保存に大きく寄与しました。以後、宗教的施設としての維持管理が続き、屋根材や内装の一部が取り替えられたり撤去されたりしながらも、建物の基本的な構造はよく保たれています。

また、パンテオンは数多くの著名人の墓所にもなっています。例えばルネサンス期の巨匠ラファエロの墓があることで知られ、近代イタリア王国の初代国王ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世やウンベルト1世、王妃マルゲリータなどもここに埋葬されています。

設計者と建築的議論

現在の建物の設計者については議論が続いており、トラヤヌスの建築家であるダマスカスのアポロドロスが関与したとする説もあれば、ハドリアヌス帝の側近やハドリアヌス自身が設計に深く関与した可能性を指摘する研究者もいます。ハドリアヌスは建築に強い興味を持っていたことが史料から知られており、学界では「ハドリアヌス自身が設計したわけではない」とする見解が有力になってきている一方で、建築上の革新や意匠は帝の影響を受けていると考えられています。

外観と構成

パンテオンは正面に大きなポルティコ(柱廊)を備え、その後方に円筒形のロトンダ(回廊)と巨大なドームが乗るという、前方が平面的、後方が円形の対比が特徴です。ポルティコの柱は一部が単一石から切り出された赤いエジプト産花崗岩(モノリシックな柱)で組まれており、破風には先述のアグリッパの銘文があります。

寸法とドームの特徴

パンテオンはローマで最も古いかつ最大級のドーム建築の一つです。オカルス(天窓)までの高さと内部空間の直径はともに約43.3メートル(142フィート)で、内部の空間はほぼ完全な球の一部を成しています。オカルスの直径は約8.8メートルとされ、中心から天井へ自然光が差し込みます。

パンテオンのドームは、現存する最大の非鉄筋コンクリートによるドームであり、ローマ時代のコンクリート工学の到達点を示しています。ドームは外側から見れば一体化して見えますが、内側は六角形・四角形の格子状のコッファー(くぼみ)によって装飾され、これが構造的にも軽量化の役割を果たしています。ドームの厚さは基部で厚く、頂部に向かって薄くなり、一般に基部で約6.4メートル、頂部では約1〜1.5メートル程度まで薄くなるとされています。

材料と構法

パンテオンは主に古代ローマの「ローマン・コンクリート」(火山灰(ポッツォラーナ)を混ぜたコンクリート)で造られていますが、内部にはさまざまな材料が巧みに使い分けられています。ドーム下部は重い骨材(石材)を含むコンクリート、上部に行くほど軽い骨材(軽石や軽石混合の骨材、たとえば軽石・膨張した岩石〈pumice〉)を使うことで自重を減らす工夫がなされています。床下や壁の構造にはレンガ凝灰岩が交互に用いられ、外装や基礎にはトラヴェルティンなどの石材も使われています。原文にもあるように、ユトランド考古学協会の調査やその他の研究で、ドームの下部がコンクリートでできていて、レンガと凝灰岩が交互に積層されていることが確認されています。

ドームには内部に環状の応力を受け止める働きをする帯状の構造(いわゆるリーニングビームや巻き上げ構造)や、外周壁内に配置されたアーチと空隙により荷重が分散されています。また、オクルスがあることでドーム頂部の重量を減らす効果もあります。

光・雨・内部空間

オクルスは光源としての役割だけでなく、天候によっては雨が差し込むこともあります。床は傾斜と排水孔を備え、室内に入る雨水は自然に排水されるようになっています。内部は高い壁に沿って多数のニッチ(龕)が設けられ、像や祭壇が置かれていました。天井のコッファーや大理石による床仕上げ、様々な色の大理石が用いられた内装は、古代ローマの豪華さを今に伝えます。

近世以降の改変と保護

中世以降も幾度か修復や改変が行われました。17世紀にはポルティコの一部のブロンズ装飾が取り外され、別の教会施設のために再利用されたことが記録されています(例えば教皇ウルバヌス8世の時代に一部のブロンズが取り外され、サン・ピエトロ大聖堂の台座などに転用されたという史実が知られています)。その後も保存と修復が続けられ、現在に至るまでローマの主要な観光・礼拝施設として機能しています。

建築史上の意義

パンテオンはその優れた構造と均整の取れた空間美により、ルネサンス以降の建築家に大きな影響を与えました。ブルネレスキやラファエロ、後の新古典主義の建築家たちがパンテオンを模範とし、ドーム設計や空間の扱いに関する学習の対象としました。現代においても、古代ローマの技術と美意識を示す代表例として、建築史・土木工学の分野で重要視されています。

パンテオンという言葉は、転じて「多くの著名人が埋葬されている建物」や「偉人を祀る殿堂」を指す語として用いられることがあります。

夜のパンテオンのポルティコZoom
夜のパンテオンのポルティコ

ジャニクルの丘から見たパンテオンのドーム。Zoom
ジャニクルの丘から見たパンテオンのドーム。

質問と回答

Q:パンテオンとは何ですか?


A:パンテオンはローマにある建物で、元々は古代ローマの神々を祀る神殿として建てられたものです。

Q: パンテオンはいつ再建されたのですか?


A: パンテオンは、ハドリアヌス帝の時代、紀元126年ごろに再建されました。

Q: パンテオンのデザインは何に起因するのでしょうか?


A: パンテオンの設計は、トラヤヌスの建築家ダマスコのアポロドロスによるものとされることもありますが、ハドリアヌス帝の建築家が設計したとも言われています。

Q:パンテオンはずっと使われてきたのですか?


A: はい、建設以来、パンテオンは常に使用されています。

Q:現在、パンテオンは何に使われているのですか?


A:7世紀以降、パンテオンはローマ・カトリック教会として使用されています。

Q: パンテオンのドームの特徴は何ですか?


A:パンテオンのドームは、主に無筋コンクリートでできた最大のドームです。しかし、他の材料も含まれており、ローマに現存する最古のドーム型建築物です。

Q:「パンテオン」とはどういう意味ですか?


A:パンテオンとは、有名な死者が埋葬されている建物という意味で使われることもありますが、この場合はすべての神々の神殿のことを指しています。


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