参与観察とは 定義・方法・歴史とエスノグラフィーの基礎

参与観察とは定義・方法・歴史とエスノグラフィーの基礎をわかりやすく解説、実践手順や著名な先駆者の事例を紹介し文化人類学やフィールドワーク入門に最適

著者: Leandro Alegsa

参与観察(参加者観察とも呼ばれる)とは、人々のグループやコミュニティについての情報を得るための質的研究手法です。研究者は対象となるグループの通常の環境に入り、実際にその場で生活したり活動に参加したりしながら、メンバーの行動や交流、価値観、実践を長期間にわたって観察します。こうして得られるのは、外部から見た記述ではなく、グループの内側から見た世界観や日常の意味づけの理解です。参加者観察の目的の一つは、そのグループの人々の視点から世界を理解することにあります。

基本的な方法と手順

典型的な参与観察の流れは次のとおりです。

  • 研究計画と予備調査:研究目的の明確化、フィールド(観察場所)の選定、事前文献調査。
  • 現地への導入:ゲートキーパー(コミュニティ内のつなぎ役)や参加者と関係を築き、研究の目的や範囲を説明する。
  • 観察と参加:日常活動や儀礼、会話などに参加・観察し、現場の出来事を詳細に記録する。
  • データ記録:フィールドノート、インタビュー記録、写真・音声・映像、物的資料を収集する。
  • 分析と報告:現場で得た記述を整理し、コード化・比較・解釈してエスノグラフィー(民族誌)や論文にまとめる。

データ収集と記録の実際

参与観察では、記録を残す方法が研究の質を左右します。主な記録手段は次の通りです。

  • フィールドノート:日々の観察、会話の要点、研究者の感想や疑問を詳細に書き留める。観察日誌とも呼ばれます。
  • インタビュー:形式化されたものからインフォーマルな会話まで幅広く用い、相互補完的に用いることが多いです。
  • 音声・映像記録:発話や行為の細部を後で確認するために録音・撮影する。ただし倫理的配慮が必要です。
  • 物的資料:道具、文書、掲示物など、現場で見つかった資料を保存・分析します。

参与の度合い(研究者の役割)

参与観察では、研究者の関与の度合いがさまざまです。代表的な分類は次のようなスペクトラムです。

  • 完全参加者(完全に参加する):研究者が外部研究者であることを隠し、実際のメンバーとして活動に完全に入る。
  • 参加者–観察者:参加が主体だが、研究者であることは明かしている場合もある。日常に深く入ることで内側から理解を深める。
  • 観察者–参加者:観察が主体で、限定的に参加する。研究者の立場と距離をある程度保つ。
  • 完全観察者(非参加者):参加はせず、外部から観察だけを行う。

どの立場を取るかは研究目的・倫理・安全などによって決められます。立場は固定されず、研究過程で移動することもあります。

成果物:エスノグラフィー

参与観察による主な成果は、研究者が観察したことや聞き取ったこと、解釈を文章にまとめたレポートで、これをエスノグラフィー(民族誌)と呼びます。エスノグラフィーは単なる記録ではなく、フィールドでの経験に基づく理論的な解釈や文化的意味づけの提示を含みます。参与観察者は、数ヶ月から何年もそのグループと一緒に暮らすことがあり、研究者がグループと一緒にいる期間が長ければ長いほど、得られる情報の深さと信頼性が増すことが一般的です。

歴史と主要人物

20世紀前半、人類学者のブロニスワフ・マリノフスキー(Bronisław Malinowski)、マーガレット・ミード(Margaret Mead)、エドワード・エヴァンズ=プリチャード(Edward Evans‑Pritchard)らが参与観察を本格的に導入し、フィールドワークを通じて文化理解を深める方法を確立しました。彼らの研究は、現場での長期滞在と現地語での交流を重視する点で画期的でした。以降、文化人類学では参与観察が主要な文化理解の手法として広く用いられるようになりました。

倫理的配慮と課題

参与観察には倫理的な配慮が不可欠です。主な注意点は次のとおりです。

  • 参加者の同意(インフォームドコンセント):可能な限り研究の目的や手法を説明し、同意を得ること。
  • プライバシーと匿名化:個人が特定されないように配慮する。特にデリケートな情報は慎重に扱う。
  • 害を及ぼさないこと:研究がコミュニティや個人に不利益を与えないようにする。
  • 研究者の安全:危険な環境でのフィールドワークでは自己防衛・退出計画が必要。
  • 観察者の役割と正直さ:研究者であることを隠すか公表するかは倫理的判断が求められる。

利点と限界

参与観察の主な利点と限界は次の通りです。

  • 利点:深い文脈理解、日常の細部を捉える能力、参加者の視点に近い記述が得られる。
  • 限界:研究者バイアス(解釈の偏り)、観察者効果(人々の行動が変わる可能性)、結果の一般化が難しい、時間とコストがかかる。

現代的な展開と応用分野

参与観察は人類学だけでなく、社会学、教育学、看護学、医療研究、ビジネス分野(マーケットリサーチやユーザーエクスペリエンス調査)など多様な分野で使われます。近年はオンラインコミュニティやSNSを対象とする「デジタルエスノグラフィー」も発展しており、物理的な場だけでなく仮想空間での参与観察が行われています。

実践のためのポイント(チェックリスト)

  • 研究目的と問いを明確にする。
  • フィールドでの信頼関係構築に時間をかける。
  • 詳細なフィールドノートを継続してつける。
  • 観察とインタビューを組み合わせる(方法の三角測量)。
  • 倫理的配慮を最優先に、必要に応じて承認や同意を文書化する。
  • 自らの立場(反射性)を記録し、解釈に対する自己評価を行う。

参与観察は時間と労力を要する方法ですが、現場の複雑な意味構造や人々の内的視点を深く理解するために非常に有効な手法です。得られたエスノグラフィーは、文化や行動の具体的で生きた記述を通して、新たな理論的示唆を提供します。

隠密参加観察

Covert participation observation(秘密参加観察)では、研究者はグループと生活を共にしますが、グループには研究していることを伝えません。研究は秘密裏に行われます。この方法は、研究されていることを知らなければ、人々は通常とは異なる行動を取らないので良い方法です。隠密参加型観察の問題点としては、非倫理的になる可能性があることです。被験者は、自分が研究されていることを知らないので、研究者に同意を与えることができません。

あからさまな参加観察

あからさまな参加型観察では、研究者はグループの人々に自分たちが研究されていることを伝えます。この方法の問題点は、自分が研究されていることを知ると、人々が行動を変えてしまう可能性があることです。あからさまな参加型観察では、隠密観察のような倫理的な問題はなく、研究者は、人々が嘘をついているところを観察することができます。

質問と回答

Q: 参加者観察とは何ですか?


A: 参加者観察とは、ある集団の人々について、彼らの普段の環境で一緒に生活することで情報を得る方法です。

Q: なぜ人々は参加型観察をするのですか?


A: 参加型観察は、その集団の人々が毎日行っていることを観察することで、その集団の人々の視点から世界を理解するために使用されます。

Q: 参加型観察の成果物は何ですか?


A: 参加型観察の成果は、通常、エスノグラフィーと呼ばれる、研究者が見たものについての文章になります。

Q: 参加型観察は、どれくらいの期間、グループと一緒に生活することができますか?


A:参加型観察者は、数ヶ月から数年間、グループと一緒に生活することができます。

Q:20世紀前半に参加型観察を始めた人類学者は誰ですか?


A: 20世紀前半に参加型観察を始めた人類学者は、ブロニスワフ・マリノフスキー、マーガレット・ミード、エドワード・エバンス=プリチャードです。

Q:文化人類学者の主な研究方法は何ですか?


A: 文化人類学者の主な研究方法は、参加型観察です。

Q: 参加型観察では、研究者は普段の生活環境の中で、ある集団と一緒に生活する必要がありますか?


A:はい、参加型観察は、研究者が普段の環境の中で人々と一緒に生活することを必要とします。


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