パウロ書簡とは|使徒パウロに帰された新約14書の定義と一覧

パウロ書簡は、新約聖書の14冊の書物のうち、ほとんどのキリスト教徒が使徒パウロによって書かれたと考えているものである。そのうちのいくつかは、キリスト教最古の文書である。これらの書簡は、キリスト教における多くの信念や論争を表しています。多くのキリスト教徒は、これらの書簡が神学や倫理学にとって非常に重要であると考えています。

第一テモテ、第二テモテ、テトスは、牧会書簡と呼ばれることもある。

新約聖書に登場する順番に、パウロ書簡を紹介する。

パウロ書簡の一覧(新約聖書の配列順)

  • ローマ人への手紙(ローマ) — 教義的まとめ、救いと信仰の義。
  • コリント人への手紙 第一(1コリント) — 教会問題、分裂、道徳と礼拝。
  • コリント人への手紙 第二(2コリント) — 使徒職の弁護、苦難と慰め。
  • ガラテヤ人への手紙(ガラテヤ) — 福音と律法の関係、信仰義認。
  • エフェソ人への手紙(エフェソ) — 教会論、キリスト者の一致と霊的歩み。
  • フィリピ人への手紙(フィリピ) — 喜び、謙遜、キリストの模範。
  • コロサイ人への手紙(コロサイ) — キリストの主権と異端の排斥。
  • テサロニケ人への手紙 第一(1テサロニケ) — 終末論的励まし、成長の勧め。
  • テサロニケ人への手紙 第二(2テサロニケ) — 終末に関する訂正と励まし。
  • 第一テモテ — 牧会指導、教会秩序と長老職・監督職について(牧会書簡)。
  • 第二テモテ — 個人的最終勧告、忠誠と伝道の勧め(牧会書簡)。
  • テトス — 教会の秩序と教理、良い行いの教え(牧会書簡)。
  • ピレモンへの手紙(フィレモン) — 個人的書簡、赦しと隣人関係。
  • ヘブライ人への手紙(ヘブライ) — キリストの侍祭性と旧約の完成(古来、パウロに帰されたこともあるが、現代の学問では作者は不明とされることが多い)。

パウロ書簡の形式と特徴

  • 形式:当時のギリシア語で書かれた手紙(書簡)という体裁で、挨拶、祈祷、本文、結語という構成が一般的。
  • 対象:教会(複数の手紙)や個人(テモテ、テトス、ピレモン)に宛てられ、教理・倫理・牧会的助言・個人的事情に触れる。
  • 言語と神学:ギリシア語圏の状況を背景に、救済論(義認)、教会の性格、キリスト論、聖霊論など重要な神学テーマを展開。

著者問題(学術的な見解)

  • 学術的にほぼ確実とされる書簡(いわゆる「真正パウロ書簡」):
    • ローマ、1コリント、2コリント、ガラテヤ、フィリピ、1テサロニケ、ピレモン — これら7通は多くの学者がパウロ自身の筆によるとみなす。
  • 議論のある書簡:
    • エフェソ、コロサイ、2テサロニケ — 文体・語彙・神学的傾向の違いから、パウロ直筆か使徒の周辺で成立した文書かで意見が分かれる。
    • 第一テモテ、第二テモテ、テトス(牧会書簡) — 多くの現代学者はパウロ直筆ではない、あるいはパウロの名で書かれた代理作(偽名作)である可能性を指摘する。理由は語彙・文体、教会組織の描写が後代的であるため。
    • ヘブライ — 古代にはパウロに帰された伝統もあるが、現代の学術的合意では著者不詳とされることが多い(言語・神学・文体の差)。

牧会書簡とは

第一テモテ、第二テモテ、テトスは、牧会書簡と呼ばれることもある。牧会書簡は個人宛てで、教会運営(長老・監督の任命)、教理の保守、偽教師への対処、信徒の生活指導など具体的な牧会上の助言が中心となるためこの名が付いている。伝承上はパウロが若い協力者テモテやテトスに宛てた指示とされるが、成立年代や著者については学問的に議論がある。

パウロ書簡の歴史的・宗教的意義

  • 初期キリスト教共同体の実情や論点を伝える一次資料として貴重。
  • 教理形成(救済論、教会論、倫理)に強い影響を与え、後世の神学や教会制度の基礎となった。
  • 礼拝、礼典、宗教教育、対外的証しにおいても引用や指導の根拠として広く用いられてきた。

まとめ(読者への注意点)

「パウロ書簡」と言うと伝統的に14通を挙げることが多いものの、現代聖書学では各書の成立時期や著者帰属について慎重な検討がなされている。信仰共同体や宗派によって受け取り方や配置(ヘブライ書の位置づけなど)に違いがあるため、注釈書や学術書、教会史の資料も合わせて参照すると理解が深まります。


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