周期彗星とは?定義・短周期・長周期・命名法と代表例(シューメーカー・レヴィ等)
周期彗星の定義から短周期・長周期の違い、命名法、代表例(シューメーカー・レヴィ等)まで図解と一覧でわかりやすく解説
周期彗星とは、太陽の周りを公転している彗星のことを指します。一般的には、公転周期がおよそ200年以下のものを短周期彗星、200年以上かかるものを長周期彗星と分類します。短周期彗星は比較的軌道が安定しており、将来の位置をかなりの精度で予測できますが、長周期彗星は惑星の重力摂動や彗星自身のガス放出による非重力効果の影響を強く受けるため、軌道計算が非常に難しくなります。
短周期・長周期の意味と起源
短周期彗星の多くは木星族彗星(Jupiter-family comets)に属し、周期は数年から数十年程度で、木星近傍での重力作用を受けやすいです。一方、長周期彗星はオールトの雲など遠方の領域から飛来することが多く、そのため一度しか観測されない場合や、次回回帰まで何千年もかかる場合もあります。
命名法と番号付けの仕組み
彗星の正式名称は国際天文学連合(IAU)やその下部組織である小惑星センター(MPC)が管理しています。一般的な表記は、必要に応じて番号を前に付け、スラッシュ(/)の後に接頭辞と発見者名(あるいは年・暦符号)を続けます。代表的な例として、2P/Encke や 27P/Crommelin のように、軌道が確定している周期彗星には番号が与えられます(例:1P/Halley)。
発見者の名前は通常最大で三名までがハイフンで結ばれて付されます。たとえば、シューメイカー・レヴィ彗星は、ユージン・シューメイカー、キャロライン・シューメイカー、デビッド・レヴィの名に由来します。軌道を計算して回帰を予測した人の名が付くこともあり、これが 27P/Crommelin や 2P/Encke 等の由来です。
接頭辞(スラッシュの前の文字)の意味
彗星名でスラッシュの前に付く記号は彗星の種類や状態を示します。主な接頭辞は次のとおりです。
- "C" は非周期彗星(回帰が確認されていないか、周期が非常に長い彗星)を示します。
- "P" は周期彗星(回帰が確認され、番号が付与される場合もある)を示します。
- "D" は失われた、または崩壊して現在存在しないと考えられる彗星を示します(Destroyed / Disappeared)。
- "X" は、信頼できる軌道が計算できなかった彗星(主に歴史的に観測されたもので観測データが不十分なもの)を示します。
- "A" は当初彗星と思われていたが、実際にはマイナーな惑星であることが判明した天体を示します。
補足として、慣例上「周期彗星」に含められる条件は単純な周期年数だけではありません。例えば一度以上の回帰が観測・確認された場合は周期彗星として扱われ、恒久番号(例:1P、2P)が与えられます。一方で、回帰の確認までに非常に長い時間(一般に数十年以上)を要する軌道の彗星は、一定のリストでは回帰が確認されるまで「C」の接頭辞のまま扱うことがあります(ごく一部のリストでは約30年などの基準が使われることがあります)。
同名彗星と番号の扱い(例:シューメーカー・レヴィ)
発見者やチーム名が同じである場合、同じ名前の彗星が複数存在することがあります。たとえば「シューメーカー・レビ(Shoemaker–Levy)」の名を持つ彗星は複数あり、便宜上番号で区別されます。ニール(NEAT)にも多くの彗星があり、24個の「ニート彗星」が知られます。MPC は周期彗星に対しては番号付きの接頭辞を付けるか、完全な表記(例:181P/Shoemaker-Levy や 192P/Shoemaker-Levy)を使用しますが、どちらも「Comet Shoemaker-Levy」を指します。
非公式の呼称として「シューメーカー・レヴィ彗星6」「シューメーカー・レヴィ彗星1」といった番号付けを行うこともあります。さらに、周期的ではないシューメーカー・レヴィ彗星も番号順の列に含められているため、番号には空白があるように見えることがあります。たとえば C/1991 B1 はシューメーカー・レヴィ2 と 3 の間に位置し、C/1991 T2 は 5 と 6 の間、C/1993 K1 と C/1994 E2 はシューメーカー・レヴィ9の後に来る、といった具合です。
代表的な周期彗星の例と観測の重要性
よく知られた周期彗星の例には、1P/Halley(ハレー彗星)、2P/Encke、9P/Tempel(探査対象となったもの)などがあります。周期彗星は繰り返し観測できるため、彗星の進化や表面の変化、崩壊・分裂の過程、非重力効果の実測などを通じて彗星物理の理解を深める重要な対象です。特に探査機による接近観測や分光観測は、彗星の組成やダスト放出の性質、揮発物質の比率などを直接調べる手段として有効です。
まとめると、周期彗星の分類と命名は観測の蓄積に基づいており、短周期・長周期の区別、接頭辞(C/P/D/X/A)や番号付けのルールを理解することで、彗星の性質や将来の回帰予測、歴史的な発見記録の整理が行えます。

ハレー彗星
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質問と回答
Q: 周期彗星とは何ですか?
A:太陽の周りを回る彗星のことです。200年以内に一周する短周期軌道と、200年以上かけて一周する長周期軌道がある。
Q: シューメーカー・レビー彗星は誰にちなんで名づけられたのですか?
A: シューメーカー・レビー彗星は、ユージン・シューメーカー、キャロライン・シューメーカー、デビッド・レビーの3人の名前にちなんで名づけられました。
Q: 長周期彗星の軌道を計算するのは難しいのでしょうか?
A: 長周期彗星の軌道は、惑星からの重力や彗星自身から放出されるガスや物質などの影響で変化するため、非常に困難です。
Q: 短周期彗星はどの程度正確に予測できるのでしょうか?
A: 短周期彗星は非常に正確に予測することができます。
Q: 小惑星センターは彗星に関してどのようなことをしているのですか?
A:国際天文学連合に属する小惑星センターは、彗星を命名する際に、異なる番号の接頭辞を付けたり、フルタイトルを使用したりしています。例えば、181P/シューメーカー・レビーと192/シューメーカー・レビーは、どちらも「シューメーカー・レビー彗星」と呼ばれることになります。
Q: 周期彗星の非公式な番号付けはあるのでしょうか?
A:はい、181Pはシューメーカー・レビー彗星6、192Pはシューメーカー・レビー彗星1というように、周期彗星には非公式な番号付けがあります。
Q: 彗星の名前をつけるとき、「/」の前の文字は何を意味するのですか?
A: 彗星に名前をつけるとき、「/」の前の文字は、非周期的なものを「C」、周期的なものを「P」、失われたり崩壊したものを「D」、軌道が計算できないもの(通常は歴史的)を「X」、彗星と思われていたが実は小惑星だったものを「A」と、それぞれ意味するものがあります。
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