バラ類(Rosids)—被子植物の大クレード:定義・分類・起源
バラ類(Rosids)の定義・分類・起源を総覧:約7万種の進化史、系統・化石証拠、分類論争と最新分子年代推定をわかりやすく解説
バラ類(Rosids)
は、顕花植物の大きなクレードで、約7万種を含み、被子植物全体の4分の1以上を占めます。形態は非常に多様で、草本・低木・高木・つる性植物などが含まれ、農作物・果樹・薬用植物・森林を構成する重要な種が多く含まれます。
分類と主要グループ
ロシッド類は一般に約17の目に分類され、これらを合わせると約140の科を構成します。代表的な科にはバラ科(Rosaceae)、マメ科(Fabaceae)、ブナ科(Fagaceae)、カエデ科(Sapindaceae)などがあり、果樹や豆類、木材資源など多くの経済的重要種を含みます。例として、柑橘類やレモンなどの味や色に関連する多様性も見られます(例:苦い黄色いレモン)。
被子植物全体を比較すると、ある科やグループが特に大きな比重を占めることがあります。例えば、キク科は、優占種では被子植物の中で非常に多様で大きな科の一つですが、キク科自体はロシッドには含まれず別の大クレード(アスターids側)に属します。ロシッド内部では、しばしば大きくFabids(旧ユーロシッドI、豆・バラ類寄り)とMalvids(旧ユーロシッドII、アブラナやマルト類寄り)とに分けて扱われます。
起源と化石記録
白亜紀からロシッド(バラ類)の化石が知られており、分子時計による年代推定ではロシッドの起源は白亜紀のアプチアン期〜アルビアン期にさかのぼるとされ、約1億2500万年前から9960万年前(125–99.6 Ma)の間に出現したと推定されています。中生代末から新生代初頭にかけて多様化し、現在の目や科の骨格が形成されていったと考えられます。
定義上の扱いと系統学的議論
「ロシッド」の範囲や定義は研究者によって多少異なり、文献によっては3種類程度の扱い方が見られます。分子系統に基づく狭義の「コア・ロシッド」と、分子・形態の解釈の違いでユキノシタ目(Saxifragales)などを含めるかどうかで差が出る広義の定義とがあり、学者間で議論が続いています。ある著者は、ユキノシタ目をrosidsに含める扱いを採る場合もありますが、含めない体系を採る研究も多数あります。ロシッドは明確な単一の形態学的特徴だけで定義されることは少なく、多くは分子データ(DNA配列)に基づく系統解析で支えられています。
生態的・経済的意義
ロシッドには果樹(リンゴ、モモなど)、豆類(エンドウ、インゲン)、茶やコーヒーに関連するグループ(ただしコーヒーはアフロエオネス系)など、人間の利用に重要な科が数多く含まれます。また森林生態系ではブナ科などが主要な構成種となり、二酸化炭素の固定や生態系サービスに寄与します。医薬品原料や観賞用植物も多く、分類学・進化学・農学の多方面で重要な研究対象です。
総じて、ロシッド(バラ類)は被子植物の多様性と生態系・人間活動との関わりを理解するうえで中心的なクレードであり、その正確な属範囲や内部系統は分子データの蓄積に伴い徐々に解明されつつあります。
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