位置と地形的特徴
サルガッソ海(Sargasso Sea)は、北大西洋の中央部に位置する、ジャイアの内部にある海域です。西はメキシコ湾流(Gulf Stream)、北は北大西洋海流、東はカナリア海流、南は北大西洋赤道海流に囲まれており、これらの流れが閉じた循環を作ることで比較的静穏な海域を生み出しています。こうした海流のシステムが北大西洋の大きな渦(ジャイア、gyre)を形成し、海藻や漂流物が集積する場になっています。
大きさと水質
サルガッソ海の規模はおおよそ幅700スタットマイル、長さ2,000スタットマイル(幅約1,100 km、長さ約3,200 km)とされます。沿岸をもたない海域として「海」と呼ばれる点が特徴的で、しばしば「海岸のない唯一の海」と表現されます。バミューダはこの海の西縁に近く、歴史的・生態学的に関連が深い位置にあります。
サルガッソ海の海水は深い青色で透明度が高く、光学的に見て非常にクリアです。水中の視界は条件によって最大で約200フィート(約61メートル)に達することが観測されています。これは低栄養塩(oligotrophic)でプランクトン量が少ないためでもあります。
歴史と名称
ポルトガルの航海者たちが15世紀にこの海域を記録し、海に浮く特徴的な褐藻に因んで名付けました。浮遊する海藻群はヨーロッパ語で「サルガッソ(Sargassum)」と呼ばれ、現地で見られる主なものはサルガッサムという浮遊性の褐藻(例:Sargassum natans、S. fluitans)です。
生態系と生物相
サルガッソ海は浮遊性藻場(sargassum mats)を核とする独特の生態系を持ちます。これらの藻場は小型の魚類、甲殻類、軟体動物、浮遊性の甲殻類、さらには渡り鳥や海鳥の止まり場として機能し、豊かな生物多様性を支えています。
- ウナギ類:サルガッソ海はヨーロッパウナギとアメリカウナギの生活史にとって極めて重要です。両種の幼生(レプトセファルス)はこの海域で孵化し、北大西洋の海流に乗ってそれぞれヨーロッパ沿岸や北米東岸へ移動します。成熟後は繁殖のために再びサルガッソ海へ戻ると考えられています(産卵の場としての重要性)。
- ウミガメ:産卵後の幼亀(特にアカウミガメなど)はサルガッソ海に漂う藻場に shelter(隠れ場)を求め、成長するまで捕食者から身を守ります。藻場は餌資源も提供します。
- 浮遊生物コミュニティ:藻場には小魚、ヨコエビ類、カイアシ類などが付着・生息し、それを捕食する大型魚や海鳥も集まります。
脅威と保全
サルガッソ海には以下のような現代的課題があります。
- プラスチックごみやマイクロプラスチックの蓄積:海流が漂流ゴミを集めるため、プラスチックによる生態系への影響が懸念されています。
- 気候変動:海水温の変化や海流の変化はサルガッソ藻場の分布や種の移動に影響を及ぼす可能性があります。
- 大型船舶や漁業活動、外来種:藻場の破壊や生態系構造の攪乱を引き起こす可能性があります。
これらを踏まえ、2014年のハミルトン宣言(Hamilton Declaration)に基づくサルガッソ海保全の取り組みや、国際的な研究・監視プロジェクトが進められています。持続可能な管理と科学的理解の深化が保全の鍵です。
研究と見どころ
サルガッソ海は古くから航海と神話の対象となり、現代では生態学的・海洋学的研究の重要なフィールドです。浮遊藻場の生物学、ウナギの回遊経路、プラスチック汚染の影響評価、海流変動の長期観測など、多様な研究テーマが存在します。観光的には海が非常に透明であること、独特の浮遊藻景観や海洋生物を観察できる点が特徴です。

