シアルナーク(Siarnaq、土星XXIX)は、土星の不規則衛星の一つで、非球形をした小天体です。2000年にBrett J. Gladmanらのチームによって発見され、発見時の仮符号はS/2000 S 3とされました。観測から直径は約40kmと推定されています。

命名と分類

2003年8月に、イヌイットの神話に登場する名にちなんで正式に「シアルナーク」と命名されました。シアルナークは、軌道要素や色彩特性からイヌイット群(Inuit group)に属する順行性の不規則衛星と考えられており、同群の中では最大級の衛星です。イヌイットの伝承に由来する名称は、この群の他の衛星名と整合しています。

軌道と運動

シアルナークは土星から平均約17,500,000 km離れたところを周回し、公転周期は約895日です。軌道は順行性であり、赤道面に対してかなり傾いた軌道傾斜(数十度)と、やや高めの離心率を持っています。図では、他の土星の順行性不規則衛星との相対的な軌道配置が示され、軌道の離心率は近心から遠心に伸びる黄色の線分で表されています。

物理的性質と色彩

表面は薄赤色(赤みを帯びた色)で、これは望遠鏡による分光・カラー観測でも確認されています。特にパリアックやキビウックと似た色合いを示すため、これらの衛星が同じ起源を持つ可能性が示唆されています。直径約40km、低アルベド(暗い表面)という点も、他の不規則衛星と共通する特徴です。

起源について

軌道力学的なまとまりとスペクトル(色)の類似性から、シアルナークを含むイヌイット群は、かつて存在したより大きな天体が衝突などで破砕され、その破片が現在の衛星群を形成したという「破片起源(コリジョン)」説が有力です。現在の観測はこのモデルを支持しており、今後の高精度観測や分光観測で起源の詳細がさらに明らかにされることが期待されています。

シアルナークは、土星の周りにある多様な不規則衛星群を理解するうえで重要な対象であり、その軌道と表面特性の研究は外惑星衛星系の形成史をたどる手がかりとなります。