天文学では、アプシス(appsis)、複数形をアプサイドIPA: /apsɪdɪːz/)と呼びます。アプシスとは、天体の楕円軌道の引力中心(多くの場合はその系の質量の中心)からの距離が最大または最小になる点の総称です。最近点(近点)と最遠点(遠点)の二つがあり、軌道の主要軸に沿ってそれらを結ぶ直線をアプシデスの線と呼びます。

用語と対応

  • 近点(periapsis / pericentre):中心天体に最も近づく点。日本語では「近点」と訳されます。
  • 遠点(apoapsis / apocentre / apapsis):中心天体から最も遠ざかる点。英語では複数の綴りがありますが意味は同じです。
  • 特定の中心天体を示す名前も一般に使われます。例えば、地球を中心とする場合は perigee / apogee太陽を中心とする場合は perihelion / aphelion(ギリシャ語で「ήλιος hēlios = sun」)と呼びます。アポロ計画では月を指すときに pericynthion / apocynthion という用語が用いられました。

数学的表現と性質

楕円軌道に対して、軌道長半径を a、離心率を e とすると、近点距離 r_peri と遠点距離 r_apo は次のように表されます。

  • 近点距離: r_peri = a (1 − e)
  • 遠点距離: r_apo = a (1 + e)

ここから、離心率 e が 0(円軌道)のときは両者が等しくなり、e が増えるほど近点と遠点の差が大きくなることが分かります。

実例と応用

  • 地球の公転軌道では、近日点(perihelion)はおよそ 1 月上旬にあり距離は約 1.471×10^8 km、遠日点(aphelion)は 7 月上旬にあり約 1.521×10^8 km です(年による誤差あり)。
  • 水星の近日点は一般相対性理論の検証に使われた有名な現象の一つで、近日点移動(apsidal precession)が観測されます。
  • 二体問題では、軌道の中心が必ずしも一方の天体の中心とは限らず、共通重心(バリセントル)を中心にした運動となる点に注意が必要です。特に質量比が近い系(例:地球と月)ではバリセントルが重要です。

アプシス線の変化(近日点移動)

アプシデスの線は完全に固定されるわけではなく、摂動(他の天体の引力)、潮汐力、非球対称質量分布、そして一般相対性理論効果などによってゆっくりと回転(歳差的な移動)します。特に水星の近日点進行はニュートン力学だけでは説明できず、アインシュタインの一般相対性理論が補正したことで説明されました。

まとめ(ポイント)

  • アプシスは軌道上の最近点と最遠点の総称で、近点(periapsis)と遠点(apoapsis)がある。
  • 特定の中心天体ごとに名称があり、地球中心なら perigee/apogee、太陽中心なら perihelion/aphelion などが使われる。
  • 近点・遠点の距離は軌道長半径 a と離心率 e で r_peri = a(1 − e)、r_apo = a(1 + e) と表される。
  • アプシデスの線は外部摂動や相対論効果で時間とともに変化する(近日点移動)。