簡易英語(Simplified Technical English)とは|ASD‑STE100の定義と技術マニュアルのルール
ASD‑STE100(簡易英語)とは?技術マニュアル向けの承認語彙と書き方ルールを分かりやすく解説し、誤解防止・翻訳効率化・読解向上を実例で紹介。
簡易英語(Simplified Technical English、STE)は、技術文書(取扱説明書、整備マニュアルなど)を明確で一貫性のあるものにするための承認された語彙と書き方のルールです。これらのルールは、技術者がマニュアルを書くのを助け、読者の誤解を減らし、翻訳や機械処理を容易にすることを目的としています。
- 疑念を減らすことができます。
- 読書を速くすることができます。
- 第一言語(母国語)が英語ではない人の理解を助けることができます。
- 人間の翻訳を楽にすることができます。
- コンピュータによる翻訳や機械翻訳をより良いものにすることができます。
ASD‑STE100(簡易英語の標準)とは
ASD‑STE100は、現在広く使われている簡易英語の標準規格です。規格は承認済み単語のリスト(Approved Word List)と、語の用法・文の書き方に関する詳細なルール(Writing Rules)を含みます。規格に従うことで、技術文書の明瞭さと一貫性を高め、安全性や作業効率の向上にも寄与します。
主なルールと特徴
- 承認語彙の使用:許可された単語だけを使うか、許可された意味でのみ使う。 同じ単語でも複数の意味がある場合、使用が制限されることがあります。
- 短く、直接的な文:1文につき1つの考えを示し、文は短くわかりやすく。命令文(imperative)や現在形を多用します。
- 曖昧さの排除:代名詞やあいまいな表現を避け、対象を明示する(例:itを避け、具体名詞を使う)。
- 能動態の推奨:可能な限り能動態で書き、誰が何をするかを明確にする。
- 一貫した用語管理:同じ概念には常に同じ用語を使い、同義語の乱用を避ける。
- 数値・単位・名前の明確化:計測値や単位、製品名や部品名は規則に従って書く。
具体例:単語の使い分け
ルールを使うと、単語の意味の違いを明確にして誤解を防げます。例えば「close / closed / near」の使い分け:
- 動詞 close(例:"Do not close the door.")は「閉める」という動作を表します。
- 形容詞 closed(例:"The door is closed.")は「閉まっている(開かない)」の意味で使います。
- 形容詞 close は「近い」を意味しますが、ASD‑STE100ではこの意味での close の使用は避け、代わりに near(例:"Do not go near the door.")を使うことが指定される場合があります。
このように語の使い分けを規定することで、「ドアを開けたままにしろ」と「ドアから離れていろ」のような誤った解釈を避けられます。
歴史と管理体制
簡易英語の開発は1970年代に始まり、その後航空宇宙・防衛産業向けに体系化されました。かつてはAECMA(欧州航空宇宙工業会)が中心となっていましたが、現在はASD(AeroSpace and Defence Industries Association of Europe)が規格を管理しています。ASDの下にあるSTEMG(Simplified Technical English Maintenance Group)が、ASD‑STE100の改訂・維持管理を行い、定期的に語彙やルールの更新をしています。
実務上の利点
- 理解しやすい文書による安全性の向上(誤操作や誤解の減少)
- 熟練度や母語に依存しないマニュアルの品質維持
- 翻訳コストと翻訳エラーの削減(機械翻訳の品質向上にも寄与)
- 保守・整備作業の効率化(指示の明確化で作業時間短縮)
実践のコツ(著者向け)
- ASD‑STE100の承認語彙リストを参照して用語を選ぶ。
- 1文1メッセージを守り、可能な限り短い文にする。
- 代名詞を使う場合は、その指示対象が明確であることを確認する。
- 命令は明確な動詞で書き、必要ならば対象と方法を具体的に示す(例:"Tighten the screw to 3 N·m.")。
- 図や番号参照を併用して、テキストだけで判断させない。
よくある間違い(例)
- あいまいな代名詞:"It is hot." → "The exhaust pipe is hot."
- 複雑な説明の詰め込み:"If the valve is leaking, and the temperature is over 60°C, then you must..." → 分割して手順化する。
- 同義語の乱用:同じ部品を複数の語で呼ぶと読者が混乱する。
まとめ
ASD‑STE100に基づく簡易英語は、技術文書の明確化・標準化に非常に有効です。承認語彙と明確な書き方のルールを守ることで、読者の理解が容易になり、翻訳や整備作業の品質と効率が向上します。技術文書を作成・管理する組織は、ASD‑STE100を参照し、社内の文書作成ガイドラインに組み込むことを検討してください。
関連ページ
- 基礎英語
- 構成言語
- 特別英語
質問と回答
Q: 簡略化された英語とは何ですか?
A: 簡略化された英語は、エンジニアがマニュアルを書くときに、世界中の人が読めるようにするために作られた、承認された単語と書き方のルールです。
Q: 簡略化された英語を使うメリットは何ですか?
A: 簡略化された英語を使うことの利点には、疑問を減らす、速く読めるようにする、英語を母国語としない人の理解を助ける、人間にとって翻訳を容易にする、コンピュータ支援翻訳や機械翻訳をより良くするなどがあります。
Q: 簡略化された英語は、どのように誤解を減らすのですか?
A: 簡略化英語のルールでは、誤解を減らすために、どの単語をどのように使えばよいかを規定しています。例えば、動詞close(「ドアを閉めないでください」)の使用は認められていますが、形容詞close(「ドアは閉まっていません」)の使用は禁止されています。その代わりに、この意味には形容詞near(「ドアに近づかないでください」)を使うように指定しています。こうすることで、読者は「ドアを開けておけ」という指示なのか、「ドアから離れろ」という指示なのかを確認することができます。
Q: 誰が簡略化した英語を開発し始めたのですか?
A: 1970年代に簡体字の開発が始まり、現在も続けられています。AECMA (European Association of Aerospace Manufacturers) はその作業を始め、ASD (AeroSpace and Defence Industries Association of Europe) はSTEMG (Simplified Technical English Maintenance Group) というメンテナンスグループを持ち、簡体字の作業を続け、ASD-STE100 -最新版のメンテナンスを行っています。
Q: AECMAとは何の略ですか?
A: AECMAは、「European Association of Aerospace Manufacturers」の略です。
Q: ASDとは何の略ですか?
A: ASDは「AeroSpace and Defence Industries Association of Europe」の略です。
Q: STEMGとは何の略ですか?
A: STEMGは「Simplified Technical English Maintenance Group」の略です。
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