シングルとは 音楽シングルの定義 A面とB面の歴史・形式・役割

定義と起源

ポピュラー音楽のマーケティングでいうシングルとは、通常1曲または2曲だけを目玉としてリリースするレコードのことを指します。レコードやディスクの最初の曲(普通は最も積極的にプロモーションされ、メディアやラジオで頻繁に流れる曲)はA面と呼ばれ、シングルに収録された他の曲はB面と呼ばれます。

このA面/B面という考え方は、シェラックやビニールレコードの時代に始まりました。物理的なディスクには表裏の2つの再生可能な面があり、そこに異なる楽曲を収められたことからA面・B面という区別が生まれました。

A面とB面の役割と性質

伝統的にA面は「ヒットを狙う主力曲」であり、レコード会社やアーティストがラジオやテレビで積極的に宣伝します。対してB面は、アルバム未収録の別テイク、インストゥルメンタル、ライブ録音、あるいは他のアルバムからの選曲など、補完的・実験的な位置づけで用いられることが多くありました。B面から思わぬヒットが生まれることもあり、B面が評価されてA面以上に人気を得る例もあります。

現代の物理メディアやCDのシングルでは、A面とB面というラベルがそのまま維持されることもあれば、同じ楽曲の複数バージョン(ラジオ・エディット、アルバム・バージョン、リミックスなど)を収録する形態もあります。ときには同一演奏者による追加録音や未発表曲をB面に充てることで、コレクターや熱心なファンへの訴求を図ります。

形式の多様化:EP・マキシ・カセット・CD・デジタル

2〜3曲以上を収録した小容量のレコードは一般にEP(エクステンデッド・プレイ)と呼ばれ、4曲以上を収録することもありますが、フルアルバムほどの収録時間はありません。ほかにも「マキシ・シングル」と呼ばれる、リミックスや別テイクを多く収めた長めのシングル盤、カセット・シングル(通称cassingle)、CDシングルなど、メディアの変化に応じてシングルの形態は変化してきました。

デジタル配信やストリーミング時代になると、シングルは単曲で配信されることが一般化しました。従来のA面/B面の概念は薄れる一方で、アーティストはボーナストラックや限定配信曲、リミックスを用いてシングルの価値を高める方法を採っています。チャート集計のルールもダウンロードやストリーミングを取り込む形で変化しており、リリース形態自体がマーケティング戦略に深く関わるようになっています。

ビジネス面と印税(ロイヤリティ)

ビニール・シングルの時代、多くの国ではレコードの両面に収録された曲に対して機械的印税が支払われる仕組みがあり、表向きにはA面とB面の印税は「平等に」支払われていました。しかし実際の経済的影響はラジオやメディアでの露出に左右され、A面がより多く放送されれば作詞作曲者への放送権料(パフォーマンス・ロイヤリティ)はA面に偏ることになります。こうした事情を知る制作者が、売上を増やすためにB面をうまく活用することもありました。

さらに、プロデューサーやレーベルはB面を使ってスタジオの余剰録音を商品化したり、別のソングライターやセッション・ミュージシャンの露出を図ったりしました。フィル・スペクターは、彼がプロデュースするシングルのB面に短いジャム・セッションをあてることもありました。

競争・文化的影響と実例

シングルのA面を得ることはバンド内の作詞作曲者にとって名誉と収入の両面で重要でした。多くの場合、新曲をA面に選ぶチャンスはバンドのメンバーやソングライターのチーム内での競争を生みます。有名な例として、ビートルズジョン・レノンとポール・マッカートニーはそれぞれより多くのA面曲を手がけようと切磋琢磨しました。同時に、ジョージ・ハリスンのようにA面に選ばれる機会が少なかったメンバーもいますが、時に彼らの曲が大ヒットすることもありました。

また、モンキースの例では、マイケル・ネスミスが自作曲をバンドのシングルに載せたがり、A面が取れなければB面でも構わないと考えていました。プロデューサーや音楽監督との間で起きる意見の対立は、バンド運営やレーベルとの関係に緊張を生むことがあります(このケースではドン・カーシュナーとの対立が知られています)。

その他の慣行と現在の状況

  • ダブルA面:両面ともに等しくプロモートされるリリース形態。どちらの曲もシングルとしての価値を持ち、チャートやラジオでの扱いが分散することがあります。
  • リミックス/マキシ形式:ダンス市場やクラブ向けに、同一曲の複数バージョンを収録したマキシ・シングルが用いられることが多いです。
  • コレクター性:限定盤のB面や未発表曲はコレクターや熱心なファンにとって重要な要素で、アーティストのブランド価値向上に寄与します。
  • デジタル以降の変化:ストリーミング中心の現在では、単曲リリースが中心になりB面の概念は薄れましたが、代わりに「デラックス盤のボーナストラック」「限定配信曲」「シングルに付随するミュージックビデオやリミックス」などがその役割を担っています。

まとめると、シングルは音楽のプロモーション手段として長い歴史を持ち、物理メディアの特性(A面とB面)から生まれた多くの文化的慣習やビジネス慣行が、メディアの変遷とともに形を変えつつ今も残っています。

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  • アルバム
  • 拡張プレイ

質問と回答

Q:ポピュラー音楽マーケティングにおけるシングルとは何ですか?


A: ポピュラー音楽マーケティングにおけるシングルとは、1曲または2曲のみを収録したレコード盤のことを指します。

Q: シングルに収録されている2曲は何と呼ばれていますか?


A: 最初の曲(通常、最も宣伝効果があり、メディアでよく耳にする曲)をA面と呼び、それ以外の曲をB面と呼びます。

Q: 現代のコンパクトディスク・シングルは、レコード・シングルとどう違うのですか?


A: 現代のコンパクトディスク・シングルは、A面、B面ともに複数のバージョンが収録されていたり、同じ演奏者による追加録音が収録されていることもあります。これは、再生可能な2つの面を持つレコード・シングルでは不可能なことです。

Q: ビートルズのジョン・レノンとポール・マッカートニーは、なぜお互いより良い曲を書こうとしたのでしょうか?


A:ビートルズのジョン・レノンとポール・マッカートニーは、お互いより良い曲を書いて、より多くのA面を獲得しようとしました。

Q:レコード盤のA面、B面のロイヤリティはどのように支払われたのですか?


A:シングル盤の場合、A面、B面の印税は均等に支払われました。

Q:2曲、3曲以上収録されているレコードにはどんなものがありますか?


A:2~3曲以上収録されたレコードは、通常EP(Extended Playの略)と呼ばれ、4曲以上収録されることもありますが、アルバムほど多くはありません。

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