シュリ・マハー・ボーディー(アヌラーダプラ)—世界最古の人為植樹である菩提樹
スリランカのアヌラーダプラにある無花果の聖なる木、スリ・マハ・ボーディ。最初の仏陀が悟りを開いたという有名な菩提樹(ボダイ・ツリー、学名:Ficus religiosa)の苗木を、ミヒンドゥ(マヒンダ)とサンガミッタ・マハ・テーロが持ち帰り植えたと言われています。紀元前288年に植樹され、植樹年代が判明している現存する人間の植えた木としては世界最古のものであると広く知られています。
歴史と由来
伝承によれば、インドの菩提樹(ブッダが悟りを開いたとされるボダイガヤの木)の一部がアショーカ王の娘・サンガミッタによってスリランカに持ち込まれ、当時の王デーワナンピヤ・ティッサ(Devanampiya Tissa)の時代に植えられました。これによりスリランカに仏教が定着し、以後この木は仏教信仰の象徴として崇敬されてきました。
宗教的・文化的意義
スリ・マハ・ボーディは、現在もスリランカの仏教徒にとって最も神聖な対象の一つで、国内外から多くの巡礼者が訪れます。特にポーサン(Poson)祭や満月(ポヤ)の日などの宗教行事では、木の周りで祈りや供養が行われ、経が唱えられます。多くの信者が供え物をし、袈裟や傘(チャトラ)を捧げるなどして尊崇を示します。
構造と保護
この菩提樹は地上約6.5mの高いテラスに植えられ、周囲を手すりで囲まれていた。現在は神域として囲いが設けられ、近接して小さな礼拝所や供物台が配置されています。木を保護するための壁や囲いは歴代の王や信者によって修復・補強されてきました。この壁はキルティ・スリ・ラジャシンハ王の時代に、木を襲うかもしれない野生の象から守るために作られましたという記録も残されています。
長い歴史の中で、天候、昆虫、病害、さらには人為的な被害や政治的混乱などによる脅威にさらされてきました。それに対して王や僧侶、近代の保存団体が交代で保護・修復を行い、必要に応じて枝を支える支柱や剪定、病害対策などの保存措置が取られています。また、系統を保つための接ぎ木や挿し木による繁殖も行われ、ボダイの血統を後世に伝える努力が続けられています。
世界遺産と観光
スリ・マハ・ボーディは、アヌラーダプラの古都全体の宗教的景観とともに、ユネスコの世界遺産に含まれる重要な要素です。境内は静謐で宗教的な雰囲気が濃く、考古学的遺跡や仏塔群と合わせて訪問者に深い印象を与えます。
参拝と見学のポイント
- 参拝時は服装に注意し、肌の露出を控える、帽子は外す、靴を脱いで境内に入るなどのマナーを守ってください。
- 写真撮影やビデオ撮影に制限がある場合があります。僧侶や礼拝中の人々の邪魔にならないよう配慮しましょう。
- 早朝や夕方の静かな時間帯は特に荘厳な雰囲気を味わえます。混雑する祭礼日や祝日は参拝の行列が長くなることがあります。
- 現地では保存のためのルール(立ち入り禁止区域、触らないことなど)に従ってください。多くの場合、寄付や献灯による支援が受け入れられています。
現在の課題と保全活動
長寿であるがゆえに、老朽化や環境変化、観光による影響など保全上の課題が絶えません。スリランカ政府、仏教界、国際的な保存団体などが協力して継続的なモニタリングや研究、修復・保護計画を進めています。将来にわたりこの聖樹を守るためには、生態学的管理と参拝者教育の両立が重要です。
スリ・マハ・ボーディは単なる古木ではなく、仏教の伝来と発展を象徴する生きた遺産です。歴史的・宗教的価値を理解し、敬意をもって接することが、訪れる者に求められます。


Jaya Sri Maha Bodhi, Anuradhapura Sri Lanka.
歴史
この木は、最初の仏陀が悟りを開いたインド・ブッダガヤの「ジャヤ・シリ・マハー・ボディ」の南枝と言われている。
紀元前3世紀、アショーカ帝の娘で仏教の尼僧の教団を創設した彼らのサンガミッタによって、スリランカに仏陀のイチジクの木が持ち込まれた。
紀元前249年、デーヴァナンピヤティッサ王によってアヌラーダプラのマハメガバナ公園にジャヤ・シリ・マハー・ボディが植樹された。
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