破傷風とは|原因・症状・治療・予防接種の基礎知識

破傷風は、筋肉が収縮してしばらくその状態が続く病気です。 多くは創傷(切り傷・刺し傷・刺し込まれた異物が残った深い傷など)からの感染で起こり、進行すると全身の筋肉の硬直やけいれんを引き起こします。

原因

主な原因は、嫌気性細菌であるクロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani)が傷口で増殖し、神経毒を産生することです。これがテタノスパスミンによって神経伝達を阻害し、筋肉の不随意収縮(けいれん)や強直を引き起こします。土壌や動物の糞便などに常在している芽胞が創傷を通じて体内に入ることで発症します。

主な症状

  • 潜伏期は通常数日から数週間(平均7~10日)で、創傷の深さや部位によって異なります。
  • 初期症状:顎のこわばり・開口困難(いわゆるロックジョーという症状)、首や顔の筋肉の硬直。
  • 進行すると:嚥下困難、表情筋のこわばり、全身性の筋強直、痛みを伴うけいれん発作。
  • 重症例では呼吸筋や誤嚥による呼吸不全、骨折や横隔膜不全などを来たし、死亡に至ることがあります。
  • 新生児破傷風:臍部から感染して哺乳困難や全身けいれんを起こし、高い致死率を示します(特に予防接種が普及していない地域で問題)。

診断

診断は主に臨床所見(典型的な筋硬直や開口障害、創傷の既往)に基づきます。創からの菌の分離は必ずしも成功せず、検査だけで確定するのは難しいことが多いです。血清学的検査は有用ですが、急性期の診断は臨床判断が中心になります。

治療

  • 創傷管理:異物除去、十分な洗浄・デブリードマン(壊死組織の除去)。
  • 受動免疫療法:未免疫・不完全な免疫歴の患者や重症例にはヒト破傷風免疫グロブリン(TIG)を投与し、血中のテタノスパスミンを中和します。
  • 抗菌薬:嫌気性菌をターゲットにした抗生物質(例:メトロニダゾールなど)で菌の増殖を抑えます。
  • 筋けいれんの抑制:ベンゾジアゼピン系などの鎮静・筋弛緩薬を使用。
  • 支持療法:重症例では集中治療室で気道確保(気管内挿管や人工呼吸管理)、栄養管理、体位管理を行います。
  • ワクチン接種:回復期にワクチン(不活化破傷風トキソイド)を接種して免疫を確立させます。

予防

破傷風は予防接種で高い予防効果が期待できます。日常の創傷処置(早期洗浄・消毒)も感染リスクを下げます。特に破傷風の予防接種歴が不明または不十分な場合、怪我をした際には速やかに医療機関で評価を受けることが重要です。感染は、適切な予防接種と曝露後の予防によって防ぐことができます。

一般的なワクチンの考え方:小児期にジフテリア・破傷風・百日咳を含む混合ワクチン(DPTなど)で基礎免疫を付け、その後定期的(多くの国で成人は10年ごと)にブースター接種を行います。妊婦への適切なワクチン接種は新生児破傷風の予防にも有効です。具体的な接種スケジュールや曝露後対応は各国・地域のガイドラインに従ってください。

予後と注意点

早期に適切な治療が行われれば回復することが多いですが、重症例では長期間の集中治療やリハビリが必要となることがあります。予防接種の有無や受傷部位、治療開始の早さが予後を左右します。庭仕事や屋外作業をする人、農業従事者、刺創を受けやすい人はワクチン接種歴を確認しておくことをおすすめします。

破傷風に苦しむ患者を描いたチャールズ・ベル卿の絵画(1809年)。Zoom
破傷風に苦しむ患者を描いたチャールズ・ベル卿の絵画(1809年)。


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