法の書(Liber AL vel Legis)とは?1904年クロウリーのテレマ聖典を解説
「法の書(Liber AL)」の全貌を1904年クロウリーの背景・章別解説でわかりやすく紐解くテレマ入門ガイド。
法の書』は、1904年にエジプトのカイロでアレイスター・クロウリーによって書かれた、テレマの中心的な聖典である。正式名称は『Liber AL vel Legis, sub figura CCXX, as delivered by XCIII=418 to DCLXVI』で、一般には『Liber AL vel Legis』または単に『Liber Al』と呼ばれている。4月8日、9日、10日の正午から1時間かけて書き下ろされた3章からなる。
成立の経緯(背景)
クロウリーはこの書が本人の意図や理解を超えた知的存在、後に自らの〈ホーリー・ガーディアン・エンジェル〉と同一視した存在(Aiwass/エイワス)によって口述されたと主張した。カイロ滞在中、彼と妻のローズ・ケリー(Rose Kelly)が中心となる一連の出来事のなかで啓示が与えられたとされる。クロウリーはこの体験を魔術的・宗教的転換点と捉え、以後テレマの教義体系を構築していった。
内容の概要
- 三章構成:それぞれの章は語り手(神格)の視点で書かれており、全体を通して新たな宗教的・倫理的原理が宣言される。
- 主な神格と中心概念:
- 第1章は〈ヌイト/Nuit〉(無限、天空の女神)の言葉であり、無限性や愛の原理が強調される。
- 第2章は〈ハディト/Hadit〉(中心点、個別の意識)の視点で、自己の中心と個別性、行為の自由が説かれる。
- 第3章は〈ラー=フー・ラート/Ra-Hoor-Khuit〉(ホルスを系譜に持つ戦う神)の口で、時代(エオン)の到来と新しい法(テレマ)の確立が宣言される。
- 有名な句:「Do what thou wilt shall be the whole of the Law.」(汝の意志するところを為せ、それが法の全てである)や「Every man and every woman is a star.」(各人は一つの星である)などが含まれ、テレマの倫理的核を成す。
- 象徴と言語:詩的で断片的な語り口、しばしば暗号的・象徴的表現を伴うため、解釈の余地が大きい。数秘やヘブライ語・ギリシア語の語呂合わせ(ゲマトリア)に基づく象徴も多く用いられている。
題名と数秘(簡潔な解説)
正式題名にある sub figura CCXX は「図(数)220」を示し、クロウリーの体系で重要な数的意味を持つ。題名中のローマ数字や等式(例:XCIII、DCLXVI、そして原文に見られる〈418〉など)は、クロウリーとテレマの象徴体系・ゲマトリアに関連して解釈される。代表的には XCIII(93) は〈テレマ〉や〈アガペー〉と結び付けられ、DCLXVI(666) はクロウリー自身が自らを示す数として知られる。418 はクロウリー体系で魔術的に重要視される数(しばしば「ABRAHADABRA」と関係づけられる)としてしばしば言及される。
出版史と版の違い
『法の書』は成立後、複数の版や注釈付きの出版が行われてきた。原文の断片的・手稿的な性格、さらにクロウリー自身による補注や解釈の付加により、版によって句読点・語句・注解の扱いが異なる。読者は版差や翻訳上の選択によって意味が変わり得ることに留意する必要がある。
受容と批判
- 影響:近現代の西洋オカルト運動に大きな影響を与え、クロウリーの活動した組織(A∴A∴、O.T.O.など)やその後継者たちを通じて広まった。現代のニューエイジや儀式魔術、実践的神秘主義にも影響を残す。
- 論争:「口述霊」なる啓示の起源、文体や伝統的宗教との類似、クロウリー個人の倫理観・生活様式などを巡り、学術的にも大衆的にも批判や疑義がある。翻訳や注解の差異が解釈論争を生むことも多い。
- 学術的研究:宗教学・文化史・文学の観点からの研究が進み、当時の文化的文脈やクロウリーの生涯との関連、近代魔術運動の位置づけが明らかにされつつある。
現代における読み方(入門指針)
- 初めて読む人は、まず日本語訳と原文の両方(可能なら対照)を参照するとよい。詩的・象徴的表現が多いため、逐語訳のみで意味を断定しないこと。
- 注釈付きの研究版や、複数の訳者による異なる解釈を比較することで、語句や構成の多義性を理解しやすくなる。
- 宗教的・魔術的実践の文脈で読む場合は、テレマの基本的原理(“意志(Will)”と“愛(Love)”の関係、個の尊重、自己実現の概念)を押さえておくとよい。
参考と注意点
『法の書』は宗教的啓示と個人的体験が入り混じったテキストであり、信仰的に受け入れられるか否かは個々の判断に委ねられる。学術的に取り扱う場合は史料批判と文脈分析を重視し、宗教的・文化的背景を踏まえた慎重な解釈が求められる。
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