概要
『ハエ男の恐怖』は、カート・ニューマン監督、ジェームズ・クラヴェル脚本による1958年のアメリカのSFホラー映画である。物語は、実験的な瞬間移動装置が誤作動し、恐ろしい事故を引き起こす科学者を中心に展開する。空想科学的な発想と個人的な悲劇を結びつけた作品として、都市背景にはモントリオールへの明確な言及があり、手堅い高概念の設定を、密度の高い人物主導のサスペンスへとまとめ上げた点で記憶されている(モントリオール)。
あらすじと主題
物語は、物質転送実験によって一人の男と普通のイエバエが融合したあとに生じる、身体的・心理的な変化を徐々に追っていく。作品は1950年代に可能だった実用的なメイクアップと特殊効果を前面に出し、ボディホラー、罪責感、科学的責任といった要素を扱う。批評家や映画史家はしばしば、この映画を20世紀半ばの技術への不安や、科学実験の倫理的限界と結びつけて位置づけている。
制作と作風
比較的少ない予算で製作されたジャンル映画として、本作は狭い研究室セット、俳優の近接した演技、そして経済的な語りによって支えられている。メイクアップや変身場面は、露骨な流血表現よりも暗示と衝撃を最大化するように演出されており、当時のスタジオ製ホラーに一般的な手法が取られている。
公開、続編、リメイク
オリジナル版は2本の続編を生み、シリーズとしても長く知られるようになった。後続作には『帰ってきたハエ男』と『ハエ男の呪い』があり、中心となる発想の変奏を続けている。また、1986年にはデヴィッド・クローネンバーグ監督によるリメイクが登場し、より明示的なボディホラー表現で知られるようになった。
評価と遺産
公開当時の評判は称賛と留保が分かれたが、本作はその後も影響力のあるジャンル作品として残り続けている。SFとホラーがどのように交差するかを論じる際にしばしば引き合いに出され、技術的傲慢さがもたらす個人的な代償を描く後続の映画やリメイクにとって、今なお基準点のひとつとなっている。