聖トマス・アクィナス:ドミニコ会の哲学者・神学者|『神学大全』と自然法
聖トマス・アクィナス—ドミニコ会の哲学者・神学者。『神学大全』と自然法論を中心に生涯・思想・影響をわかりやすく解説。
聖トマス・アクィナス(1225年 - 1274年3月7日)は、イタリア出身のカトリックのドミニコ会の司祭であり、キリスト教神学とアリストテレス哲学を統合した中世を代表する哲学者・神学者である。ロッカセッカ(Roccasecca)に生まれ、父ランドルーフ(アキノ伯)と母テオドラのもとで育った。
幼少期はモンテ・カッシーノのベネディクト会修道院で教育を受け、のちにナポリ大学で学問を修めた。大学時代にアリストテレス哲学に触れ、その深い思索から周囲には物静かでおとなしい人物と見られ、「鈍牛(愚鈍な牛)」とあだ名されたことでも知られるが、実際には後年に哲学と神学の重要な成果を残す才智を備えていた。彼は哲学、カトリックの神学、教会史、典礼、聖典や教会法など幅広い分野を学んだ。
1240年代には宗教生活への志向が強まり、新興のドミニコ会の修道士になる決意を固めた。しかし、家族は彼を俗世の地位に残そうとし、ベネディクト会の修道院長にすることを望んでいたため、トマスは一時的に自宅に閉じ込められるなどの反対に遭った。伝承では城を抜け出して逃亡し、最終的にドミニコ会に入会したとされる。その後はコルネリウス・アルベルトゥス(アルベルトゥス・マグヌス)らのもとで学び、パリ大学やコローニュなどで教鞭をとり、司祭に叙階された。
学問と主著
トマスは体系的な神学と哲学の著述で知られ、特に総合的な教理書であるサンマ神学書(一般には『神学大全(Summa Theologiae)』と呼ばれる)が最も有名である。ほかに『異教徒論(Summa contra Gentiles)』や多くの註解書・講義録を著し、聖書や教父著作、アリストテレスを体系的に解釈してキリスト教神学に取り入れた。
哲学面ではアリストテレスから受け継いだ形而上学・自然学の概念をキリスト教的世界観の中で再構築し、神の存在を示す宇宙論的な議論(いわゆる「五つの道」など)を提示した。これらの論証は、理性による神の認識の可能性を示す代表的な試みとして高く評価されている。
自然法・倫理・社会思想
アクィナスは、理性を通じて把握される道徳原理を重視し、いわゆる「自然法(natural law)」の理論を発展させた。彼の法の区分では、神の永遠法(eternal law)、自然法、人間法、そして神の啓示による神法(divine law)が区別される。
自然法に関しては、人間には生得的に備わる諸傾向(自己保存、生殖、社会性、真理の渇望など)があり、理性はこれらに従って善を選び取るよう導くと説いた。したがって彼は人間本性に対して比較的楽観的であり、理性と習慣を通じて徳(virtue)を育てることを強調した。
影響と評価
トマス・アクィナスの思想は中世以降のカトリック神学の基礎となり、近代に至るまで広く受容された。彼は教会によって列聖され、教義的貢献により教会博士(Doctor of the Church)として称えられ、「天使博士(Doctor Angelicus)」とも呼ばれることがある。彼の自然法論や倫理学は、ローマ法・国際法・近代自然法理論にも深い影響を与えた。
トマスの名を冠した教育機関は世界各地にあり、フィリピンのマニラにあるサント・トーマス教皇大学や各国の大学・研究所で彼の学説が研究され続けている。
以上のように、聖トマス・アクィナスは理性と信仰を調和させようとした中世最大級の思想家であり、その著作は今日でも哲学・神学・倫理学の重要な参照点となっている。

聖トマス・アクィナスの絵
質問と回答
Q:聖トマス・アクィナスとはどんな人ですか?
A:聖トマス・アクィナスは、イタリア出身のカトリックのドミニコ会司祭で、カトリックの聖人であり哲学者です。
Q: 彼はどこで生まれたのですか?
A:アキノ伯爵アンドルフとテアノ伯爵夫人テオドラの息子として、ロッカセッカで生まれました。
Q: 彼の家族は彼に何を期待していたのでしょうか?
A:両親は、叔父の跡を継いでベネディクト会の修道院長になることを期待していました。
Q: 大学ではどんなニックネームで呼ばれていたのか?
A: ナポリ大学では、知的で優秀な学生であったにもかかわらず、行動が鈍かったため、「ダム・オックス」というあだ名で呼ばれていました。
Q: 彼の最も有名な著書は何ですか?
A:彼の最も有名な著書は「Summa Theologica」です。
A::彼の名を冠した学校はいくつかありますか?Q::彼の名を冠した学校には、フィリピンのマニラにあるサント・トーマス教皇庁王立大学などがあります。
Q:アクィナスは自然法に関してどのようなことで知られているのでしょうか?
A:アクィナスは、自然法に関する研究でも知られています。彼は人間の本性を楽観的にとらえ、善を行い悪を行わないのが人間の本性であると考え
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