トロント路面電車(市電)とは:北米最大の路線網、歴史と運行概要
トロント路面電車(市電)の北米最大路線網を徹底解説。歴史、路線図、運行データ、年間1億人超の利用実績、乗り換え・利用ガイドで市内移動をスマートに。
トロント市電システムは、カナダのオンタリオ州トロント市にある11の市電路線のネットワークである。南北アメリカ大陸では最大級の路面電車ネットワークで、日常の通勤・買物・観光などに広く利用されている。運営は市の公共交通機関である交通委員会(TTC)の一部で、公共交通網の中でバスや地下鉄と共通の料金体系と乗継制度を採用している。
概要と路線網
北米で普及しつつあるライトレールとは異なり、トロントの路面電車は主に街路上の専用軌道や混合交通区間を走行し、バスのような頻繁な停車を行う。停留所はおよそ685カ所あり、そのうち約8カ所は地下鉄駅と直接接続しており、地下鉄へのフィーダールートとしての役割も果たしている。路線は市中心部の繁華街や公園、臨海部などを結び、地域の短距離移動に適している。
- 路線数:11路線
- 停留所数:685か所(地下鉄接続停留所を含む)
- 軌道路線総延長:およそ82 km(約51 mi)
- 平均平日利用者数:30万人以上
- 年間利用者数:1億人以上
歴史
トロントの路面電車は、馬車を利用した馬車鉄道(ホースカー)として1861年に始まり、継続運行する路面電車システムの中でも歴史が長い。1891年にトロント鉄道会社に買収され、翌1892年に電化され、以後徐々に路線網が拡大していった。20世紀を通じて路面電車は市街地交通の基幹として発展し、複数の車両更新や路線改良を経て現代のネットワークになっている。
軌道と電力供給
トロントの路面電車は、標準軌(1435 mm)ではなく非標準の狭幅とも広幅とも異なる1495 mmの軌間で敷設されている(4 ft 10 7⁄8 inに相当)。この特殊な軌間は保守・車両調達に独自の条件を課す一方、長年にわたる路線継続性を支えてきた。
電力は各車両のトローリーポールを介してDC600Vで架空線から供給される方式が伝統的に用いられている。車両の一部にはモダンな集電方式(パンタグラフ等)を導入する計画や試験もあるが、既存架線・車両との互換性が考慮される。
車両(車両更新と特徴)
歴史的にはCLRV(Canadian Light Rail Vehicle)やALRVなどの高床車が長く使われてきたが、近年は完全低床の新世代車両へ置き換えが進んでいる。低床車はバリアフリー対応が進み、停留所と車内段差の解消により車椅子やベビーカーでの乗降が容易になっている。新車導入に伴い走行性能や快適性、乗客情報システムの改善が図られている。
運行と利用状況
トロント路面電車は日中は高頻度で運行され、中心部では短い運行間隔で便数が多いのが特徴だ。料金はTTCの共通運賃体系に基づき、PRESTOカード等の電子決済が利用できる(支払い・乗継ルールはTTCの規定に従う)。信号優先や専用走行区間の整備により定時性向上が図られている区間もあるが、中心街の交通混雑や交差点の影響で遅延が発生することもある。
課題と将来計画
トロント路面電車が抱える主な課題は以下の通りである。
- 混雑する市街地での遅延や定時性の確保
- 特殊な軌間や既存インフラに起因する車両調達・維持コスト
- 停留所のバリアフリー化・安全性向上の継続
これらに対処するため、専用軌道の拡張、信号制御の改善、低床車両導入、停留所・乗換施設の整備などが進められている。臨海部や郊外へのサービス拡張(ウォーターフロント地域の改善計画等)や、将来的な路線延伸・近代化プロジェクトも提案・検討されており、都市交通としての競争力向上が図られている。
まとめ
トロントの路面電車は、歴史と利用規模の両面で北米有数の存在であり、市内の短距離輸送を支える重要な公共交通モードである。伝統的な設備と近年の低床車両導入やインフラ投資が混在する中で、定時性と利便性の向上、アクセシビリティ確保が今後の主要課題となっている。
質問と回答
Q:トロントの路面電車とは何ですか?
A: トロント市電は、カナダのオンタリオ州トロントにある11路線の路面電車ネットワークです。トロント交通局の公共交通網の一部として運営されており、バスや地下鉄と共通の運賃体系を採用しています。
Q:どのような仕組みで運行されているのですか?
A:北米で普及しつつある最新のライトレールとは異なり、路面電車は市街地を走行し、バスタイプの停留所に頻繁に停車し、乗客は歩道で次の路面電車を待ち、車内で運賃を払います。
Q:停留所はいくつあるのですか?
A:685の停留所があり、そのうち8つは地下鉄と共用で接続されています。
Q: 主にどこに乗り入れているのですか?
A: 市内中心部やウォーターフロント地区を中心に運行しており、地下鉄へのフィーダー路線として機能しています。
Q: いつ開通したのですか?
A:1861年に馬車鉄道として開通しました。1891年にトロント鉄道会社に買収され、1892年に電化されました。
Q: 車両はどのような線路の上を走っているのですか?
A:車両は82km(51mi)、1495mmという規格外の軌間を走り、各電動車に取り付けられたトロリーポールを使って600V DCの架線から電気を集めます。
Q:1日/年間、どれくらいの人が乗っているのですか?
A:平日平均で30万人以上、年間では約1億人が乗車しており、世界でも有数の乗降客数を誇っています。
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