タウンクライヤー(街頭宣告人)は、町や自治体、あるいは公式な機関に雇われて公示・宣言を行う役職です。かつては識字率が低く、印刷物が普及していなかった時代に、政府や自治体の知らせを市民に伝える重要な情報伝達手段でした。法廷や公式行事でのアナウンスを担当することもあり、18世紀以来の伝統的な服装や儀礼を今に残しています。
歴史と起源
街頭宣告の伝統は中世ヨーロッパにさかのぼります。王室や領主、自治体の命令・法令・公告を大勢の前で読み上げることが公の通知手段でした。掛け声の「Oyez」は、アングロ・ノルマン語に由来し、「聞け」や「聞いてくれ」という意味の呼びかけです(語源は古フランス語・ラテン語にさかのぼります)。
役割と職務
- 公告の読み上げ:法律や布告、選挙結果、結婚や死去に関する公示、祭事や市場開催の告知などを読み上げる。
- 式典・儀礼の司会補助:開会式や記念行事での案内、王室・市庁舎など公的行事の演出。
- 治安や秩序の維持(歴史的役割):人々を集めて知らせることで混乱を防ぎ、権威のある情報源として機能した。
- 記録と保存:読み上げた公告はしばしばProclamation Book(宣告録)などに記録された。例えば19世紀初頭のチェスターのProclamations Bookには、掛け声が "O Yes, O Yes!" として記録されている例が残る。
衣装と道具
伝統的なタウンクライヤーの服装は目立つことを意図しており、次のような要素が特徴です:
- ローブ:赤や金を基調とした長いローブ。18世紀以降の典型的な礼装として定着しています。
- ブリーチ(短ズボン):白いブリーチや膝丈のズボンを着用することが多い。
- 帽子:三角帽(トリコーン)など、当時の紳士装に由来する帽子を被る。
- 靴・ブーツ:黒いブーツや飾りのついた革靴。
- 道具:ハンドベルや杖(スタッフ)を持ち、ベルで人々の注意を引いてから告知を行う。
掛け声「Oyez」の意味と使われ方
Oyez, Oyez, Oyez!という掛け声は「聞け、聞け、聞け!」という意味で、読み上げを始める前に静粛と注目を求めるために用いられます。法廷や公的な場でも同様の呼びかけが使われることがあり、儀礼的・象徴的な挨拶として現在も残っています。
近代におけるタウンクライヤー
印刷物や放送、インターネットの普及により情報伝達の方法は変わりましたが、タウンクライヤーは観光資源や伝統の担い手として存続しています。今日では次のような活動が一般的です:
- 観光イベントや祭りでのパフォーマンスやアトラクション
- 市の行事、公式開会式での伝統的役割の再現
- チャリティーイベントや地域PRでの出演
- タウンクライヤー同士のコンテスト(口上の明瞭さ、大きさ、衣装の優雅さなどを競う)
その他の注目点
- 法的保護:歴史的にはタウンクライヤーは公式の立場であったため、邪魔をする行為に対して罰則が設けられていた地域もある。
- 国際的な存在:イギリスが最もよく知られますが、かつての大英帝国圏やヨーロッパの諸都市、現在はイベントとして世界各地に類似の役職が見られる。
- 文化的価値:識字率向上以前の情報伝達のあり方を示す文化遺産であり、地域の歴史を伝える象徴でもある。
以上のように、タウンクライヤー(街頭宣告人)は歴史的な情報伝達者として始まり、現代では伝統の保存や地域振興・観光の一環として役割を変化させながら存続しています。
