アメリカ合衆国住宅都市開発省(HUD)とは:設立・歴史・役割の解説
HUD(アメリカ合衆国住宅都市開発省)の設立背景・歴史と政策・役割をわかりやすく解説。住宅政策や都市開発の変遷と現状を総覧する入門ガイド。
アメリカ合衆国住宅都市開発省(HUD)(United States Department of Housing and Urban Development、略称HUD)は、アメリカ合衆国連邦政府の内閣府の一つで、住宅政策と都市開発に関する連邦の主要な執行機関です。設立当初は都市問題への総合的な対応も重視していましたが、時代とともに公的住宅支援、住宅金融支援、低所得者向け支援など住宅分野の業務が中心になっています。
設立の経緯と法的根拠
1965年9月9日、リンドン・ジョンソン大統領が住宅都市開発省法(Pub.L. 89-174)に署名したことにより、HUDが創設されました。法律では制定日から60日以内に施行されることが定められていましたが、都市問題解決のための連邦政府の役割に関する特別研究グループの報告書の完成を受け、実際の施行は1966年1月13日まで延期されました。以後、HUDは連邦政府の住宅政策と都市開発政策の中心機関として機能してきました。
主な役割・業務
- 低所得者向け住宅支援:公営住宅の運営支援や住宅選択バウチャー(Section 8)など、低所得世帯の住宅確保を支援するプログラムを実施します。
- 住宅金融の支援・保証:連邦住宅局(FHA)を通じた住宅ローン保険や、住宅購入・リフォームを促進するための保証制度を提供します。
- 地域・都市政策支援:Community Development Block Grant(CDBG)などを通じて都市再生、地域インフラ整備、経済開発を支援します。
- 公正な住宅機会の確保:差別禁止と公正な住宅取引の監督を行うFair Housing and Equal Opportunity(FHEO)による取締・支援を行います。
- 住宅に関する調査・政策研究:Office of Policy Development and Research(PD&R)などが市場動向や政策効果を分析し、政策立案を支援します。
- ホームレス対策・災害復興支援:ホームレス支援プログラム(Continuum of Care等)や、災害時の住宅支援も重要な役割です。
主要プログラムの例
- FHAローン保険(Federal Housing Administration)
- 住宅選択バウチャー(Section 8)
- 公営住宅プログラム(Public Housing)
- Community Development Block Grant(CDBG)
- HOME Investment Partnerships Program(HOME)
- Continuum of Care(ホームレス支援)
組織と長官(Secretary of HUD)
HUDは米国住宅都市開発長官(Secretary of Housing and Urban Development)によって率いられ、長官は大統領の指名を受け上院の承認を経て就任します。長官の下には各種局(Office)やプログラム管理部門、監査・調査機関などが配置されています。例として、2008年4月18日にブッシュ大統領が米国中小企業庁の前長官であるスティーブ・プレストンをHUD長官に指名し、上院承認の後2008年6月6日に宣誓が行われました。
近年の動向と政策課題
- 住宅価格・賃料上昇と可負担性の問題:都市部を中心に住宅価格や賃料が上昇し、低所得層の住居確保が大きな課題になっています。HUDはバウチャー制度の拡充や地域支援策、低所得向け住宅供給の促進を通じて対応しています。
- ホームレス対策の強化:ホームレス人口の削減に向けた資金配分やプログラム連携(地方自治体・非営利団体との協働)が進められています。
- 公正な住宅と人種的公平性(racial equity):歴史的な住宅差別の是正を目的に、差別的慣行の監視・対処や地域間格差是正の方針が強化されています。
- 災害復興とレジリエンス:気候変動に伴う災害リスクに対応するため、住宅の耐災害化や復興資金の管理が重要になっています。
- パンデミック後の住宅安定化措置:COVID-19の影響を受けた住民への家賃支援や立ち退き防止策、緊急住宅支援プログラムの運用が行われました。
批判・課題
- 資金配分や運用の遅延・非効率性に対する批判が度々出ていること。
- 十分な予算配分がなされない地域では住宅供給や維持管理が困難になる点。
- 地方自治体や民間セクターとの連携・調整の難しさ。
- 歴史的に続く住宅分離(segregation)や差別的な取り扱いの解消が依然として課題であること。
参考・関連事項
- HUDの施策は連邦・州・地方の政策や民間金融機関、非営利団体と密接に連携しており、単独での解決は困難です。政策の効果は地域差が大きい点に留意が必要です。
- HUD長官は大統領の住宅政策の方向性を示す重要な役職であり、行政の変化に応じて優先課題も変更されます。
HUDは「住宅の確保」と「公正な住宅機会の保障」を中核に、低所得者支援、地域再生、災害対応、差別撤廃など多面的な役割を担っています。政策や予算配分、実務運用の改善は継続的な課題であり、連邦・地方・民間の協働が今後も重要となります。
質問と回答
Q:米国住宅省とは何ですか?
A:米国連邦政府の内閣部局で、住宅と都市に関する政策を立案・実行するために1965年に設立されました。
Q:住宅金融庁とは何ですか?
A:米国住宅省の前身です。
Q:現在の住宅省の主な業務は何ですか?
A:都市開発機能を大幅に縮小し、現在は主に住宅に焦点を当てています。
Q:米国住宅省の設立はいつですか?
A:1965年9月9日、リンドン・ジョンソン大統領が住宅都市開発省法(Department of Housing and Urban Development Act Pub.L.89-174)に署名し、設立されました。
Q:住宅省の設立期限はいつでしたか?
A: 制定日の翌日から11月8日までと規定されています。
Q:HUDは誰が運営しているのですか?
A: HUDは米国住宅都市開発長官によって管理されています。
Q: ブッシュ大統領は誰をHUD長官に指名しましたか?
A: 2008年4月18日、米国中小企業協会の元管理者であるスティーブ・プレストンがブッシュ大統領によってHUD長官に指名されました。
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