アメリカ合衆国の内閣(通常は「内閣」と簡略化される)は、アメリカ合衆国連邦政府の行政府で最も上級の任命された役員(閣僚)から成り、大統領に助言・協力して行政を運営します。その起源は初代大統領であるジョージ・ワシントンが設けた幕僚にまで遡ります。ワシントンは創設期に、国務長官トーマス・ジェファーソン、財務長官アレキサンダー・ハミルトン、国防に相当する職務を担った(当時は「戦争長官」)ヘンリー・ノックス、司法長官エドモンド・ランドルフらを任命し、大統領の助言と行政運営の中心を成しました。
内閣の法的地位と慣行
合衆国憲法には「内閣」を明文で定めた条文はありません。内閣は慣行(慣例)として発達した制度であり、大統領が必要に応じて閣僚を集めて政策討議や助言を受けます。内閣の構成や会合の頻度、議題は大統領次第で変わります。
構成(現代)
通常の「内閣」は以下の要素で構成されます。
- 副大統領(法的には閣僚というより行政の第一副官だが、多くの場合内閣会議に参加する)
- 15の行政省(各省の長が閣僚) — 現在の主要な省は次の通り:
- 国務省(Secretary of State / 国務長官)
- 財務省(Secretary of the Treasury / 財務長官)
- 国防省(Secretary of Defense / 国防長官)
- 司法省(Attorney General / 司法長官。英語表記はAttorney Generalであり「長官」)
- 内務省(Secretary of the Interior / 内務長官)
- 農務省(Secretary of Agriculture / 農務長官)
- 商務省(Secretary of Commerce / 商務長官)
- 労働省(Secretary of Labor / 労働長官)
- 保健福祉省(Secretary of Health and Human Services / 保健福祉長官)
- 住宅都市開発省(Secretary of Housing and Urban Development / HUD長官)
- 運輸省(Secretary of Transportation / 運輸長官)
- エネルギー省(Secretary of Energy / エネルギー長官)
- 教育省(Secretary of Education / 教育長官)
- 退役軍人省(Secretary of Veterans Affairs / 退役軍人長官)
- 国土安全保障省(Secretary of Homeland Security / 国土安全保障長官)
これらに加え、大統領が「Cabinet-level」(内閣相当)と位置づける職(例:大統領首席補佐官、国家安全保障担当補佐官、環境保護局長、裁量予算局長など)も存在し、会議に参加することがあります(ただし法的な地位は各省長と同一ではありません)。
任命と上院の承認
閣僚は大統領が指名し、その後上院の助言と承認("advice and consent")を受けなければなりません。通常は上院の委員会で公聴会が開かれ、背景や政策姿勢が審査されます。上院本会議での採決は原則として単純多数(過半数)で行われ、承認されれば宣誓して職務を開始します。大統領が上院の閉会中に行う「recess appointment(不在任命)」により一時的に就任させることも歴史的に行われてきましたが、その効力・範囲は議会や最高裁判所の判断で制限されています。
称号について
多くの閣僚は日本語で一般に「~長官」と訳されますが、英語の正式称号は Secretary(省の長)や Attorney General(司法長官)です。歴史的には郵便局長を除いて、ほとんどの主要な役職が「長官(Secretary)」の称号を持ちます。郵便局長(Postmaster General)は1971年の郵便改革法以降、独立した機関の責任者となり、以後は常に内閣の正式メンバーではありませんでしたが、創設期には内閣的役割を果たしていました。
役割と機能
- 大統領への助言:外交、経済、国防、国内政策など各分野で助言を行う。
- 政策の立案と実行:各省の長として法律や大統領命令に基づく行政の執行、規制の作成、予算執行を監督する。
- 危機管理:国防・災害対応などの緊急時に指揮系統の一翼を担う。
- 対外代表:国務長官は外交を代表するが、他の閣僚も国際会議等で政府を代表することがある。
会合と実務
内閣会議の形式や頻度は大統領毎に異なります。ある大統領は定期的に閣僚会議を開催して協調を図る一方で、別の大統領は個別のミーティングや主要閣僚のみでの協議を重視します。閣僚は日常的には各省内で部下を通じて業務を行い、政策決定においては大統領、ホワイトハウスのスタッフ、閣僚間の調整が重要になります。
大統領継承順位と閣僚
大統領が死亡・辞任・罷免等で職務不能となった場合の継承順位は憲法と法律で定められており、副大統領、下院議長、上院仮議長の後に閣僚が続きます。閣僚の継承順位は各省の設立順(国務、財務、国防、司法、内務、農務…)に基づいています。
補足:内閣の流動性
内閣は固定的な組織ではなく、行政の必要や政治状況に応じて大統領が新たな「内閣閣僚級」ポストを置いたり、誰を内閣会議に招くかを決めたりします。また、上院が承認しなかった候補が辞退・撤回されることや、閣僚が政治的理由や個人的理由で辞任することもあります。
まとめると、アメリカの内閣は憲法上の明文化された機関ではないものの、行政運営における中核的存在であり、大統領の指名と上院の承認により構成される国家の主要な執行部隊です。











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