ビクトリー・スルー・エア・パワー(1943年)—ウォルト・ディズニーの戦時プロパガンダ映画
1943年のディズニー戦時プロパガンダ映画『ビクトリー・スルー・エア・パワー』—デ・セヴェルスキー原作、チャーチルやルーズベルトに影響を与えた歴史的アニメ、オスカー候補。
Victory Through Air Powerは、1943年のウォルト・ディズニー・テクニカラー・アニメーション映画である。1942年に出版されたアレクサンダー・P・デ・セヴェルスキーの著書「Victory Through Air Power」が元になっている。デ・セヴェルスキーが映画に出演している。本作は、当時のディズニーの通常の娯楽アニメーションとは趣を異にし、アニメーションと実写(デ・セヴェルスキー自身の講演映像や資料映像)を組み合わせた説得的なプロパガンダ映画として作られた。
あらすじ(概要)
映画は、デ・セヴェルスキーの提言を視覚的に示すことを目的とし、長距離爆撃や制空権の重要性、航空力によって戦争の勝敗が左右されるという主張を分かりやすく解説する。実写の講演パートと、空襲や安定した補給線、工業都市の攻撃といった軍事概念を象徴的に表現するアニメーション・シーケンスが交互に展開される。基本的には、空の優位を確保することが戦争終結への鍵である、というメッセージを一般大衆と政策決定者に向けて訴える内容になっている。
制作と背景
1941年12月8日、ディズニー・スタジオはアメリカ政府の宣伝マシーンに変身した。第二次世界大戦の映画の多くは訓練用に作られたが、『ビクトリー・スルー・エア・パワー』のような映画は、アメリカと連合国の国民の士気を高めると同時に、戦略的な考え方を広める目的で制作された。ウォルト・ディズニー自身やスタジオのスタッフは、政府や軍と協力して多くの戦時映像作品に携わり、本作もその一環として企画・製作された。
反響と影響
本作は公開当時、一般観客向けの娯楽映画とは明確に一線を画していたため、賛否両論を呼んだ。映画は政治的メッセージを強く打ち出しており、同作を観たとされるウィンストン・チャーチルやフランクリン・D・ルーズベルトはこの映画から影響を受けたと伝えられているが、その具体的な影響の度合いについては歴史家の間で議論がある。
また、この映画はアカデミー賞のドラマチックまたはコメディー映画の音楽賞にノミネートされるなど、芸術面でも一定の評価を受けた。
評価と遺産
現代の視点から見ると、『ビクトリー・スルー・エア・パワー』はプロパガンダ映像としての性格が強く、ディズニー作品としては異色の存在である。映像表現の巧みさやアニメーションを用いた説得力は評価される一方で、軍事的解決を単純に肯定する点や一面的な戦略論の提示については批判もある。歴史的には、第二次世界大戦期のアメリカにおける映画と政府・軍の関係、プロパガンダの役割を考えるうえで重要な資料とされる。
今日では一般的な知名度は高くないものの、戦時下の文化政策や映像メディアの政治的利用を考察する際にしばしば取り上げられる作品である。
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