ウィルガ・リバース(1919–2007)—ハーバード名誉教授・コミュニカティブ教授法の先駆者
ウィルガ・リバース:ハーバード名誉教授が切り開いたコミュニカティブ教授法の革新と言語教育の遺産を解説。
ウィルガ・リバース(Wilga Rivers、1919年4月13日 - 2007年6月23日)は、オーストラリアの学者、作家。ハーバード大学ロマンス語・文学部名誉教授。彼女は言語教育について研究し、執筆した。オーディオリンガル方式からコミュニカティブ、インタラクティブな言語教育への転換を早くから支持した。オーストラリアのメルボルンに生まれ、マサチューセッツ州ウォータータウンで死去。
略歴
リバースは20世紀後半における第二言語習得と言語教育の重要な論者の一人です。生誕地のメルボルンで育ち、後に研究と教育の場をアメリカに移して、ハーバード大学で教鞭をとりました。学界では教育実践と理論を結びつける仕事で知られ、退任後は名誉教授としてその業績が広く評価されました。
研究と教育的貢献
リバースの最も重要な貢献は、従来のオーディオリンガル(模倣とパターン練習中心)の教授法から、実際のコミュニケーションを重視するコミュニカティブ・アプローチへの転換を促した点です。彼女は以下の点を強調しました。
- 意味のある相互作用を通じた学習(学習者が実際に伝えたい内容を表現する機会の重要性)
- 統合的な技能指導(聞く・話す・読む・書くを切り離さず、それぞれが相互に支え合う形で教授すること)
- 文法教育の位置づけ(文法は目的ではなく、コミュニケーションを支える手段として文脈の中で教えるべきであること)
- 教師の役割の再定義(講述者・模範提示者から、学習を促進するファシリテーターへの転換)
実践的な指導法と教材開発
リバースは研究理論だけでなく、現場で使える具体的な教授法や教材の開発にも取り組みました。教室で広く使われる手法として、以下のような活動を支持しました。
- ロールプレイやシミュレーションによる実践的練習
- タスク型学習(問題解決や情報交換など、目的志向の活動)
- 協働学習(ペアワーク・グループワーク)による相互フィードバックの促進
- 教室外の実際の言語資料(新聞、映像、会話記録など)の活用
著作と影響
リバースは教育現場や教師養成向けに多数の本や論文を執筆し、その多くが言語教育の理論と実践を結びつける参考資料として広く参照されました。彼女の考え方は、カリキュラム設計、教師教育、教材開発に大きな影響を与え、世界中の外国語教育の現場に取り入れられています。
遺産と評価
リバースの遺した業績は、コミュニカティブ・アプローチを基礎とする現代的な言語教育の理論と実践に深く根付いています。教師が学習者のコミュニケーション能力を育てるための具体的な技法や教育観は、今日でも教師養成プログラムや現場の指導に反映されています。彼女の功績は教育界で高く評価され、多くの研究者や実践者に影響を与え続けています。
ライティング
- "The Psychologist and the Foreign-Language Teacher".シカゴ大学出版会、1964年
- "Teaching Foreign-Language Skills".シカゴ大学出版局、1968年、1981年。
- "A Practical Guide to the Teaching of English as a Second or Foreign Language".オックスフォード大学出版局, 1978.
- "Communicating Naturally In A Second Language".ケンブリッジ大学出版局、1983年
- "Interactive Language Teaching".ケンブリッジ大学出版局, 1987.
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