キサントフィルとは|黄色色素の定義と働き 葉での役割とクロロフィルとの違い

キサントフィル|黄色色素の定義と働き、葉での役割やクロロフィルとの違いを図解でわかりやすく解説し、生成条件や光の影響を詳述

著者: Leandro Alegsa

キサントフィルとは、自然界に存在する黄色い色素の一種です。ほとんどの緑色植物の葉に含まれ、通常はクロロフィルの緑色に覆われて見えにくくなっています。しかしキサントフィルはクロロフィルと化学構造や機能が異なり、合成や蓄積のされ方は光条件や植物種によって変わります。クロロフィルは一部の段階で光を必要とするため、極端な暗所(エチオピア)や秋にクロロフィルが分解されると、相対的にキサントフィルなどの黄色い色素が目立つようになります。

名前の由来は、ギリシャ語の「黄色」(xanthos, ξανθός)と「葉」(phyllon, φύλλον)である

主な種類と代表例

  • ルテイン(lutein) — 葉緑体や光合成複合体に多く存在する代表的なキサントフィル。
  • ゼアキサンチン(zeaxanthin) — 高光ストレス時に増加し、光保護に関与する。
  • ビオラキサンチン/アントラキサンチン(violaxanthin / antheraxanthin) — ゼアキサンチンと可逆的に変換されることで「キサントフィルサイクル」を構成する。
  • ネオキサンチン(neoxanthin)など、構造的に酸素含有基を持つカロテノイド群が含まれる。

葉での役割

  • 光捕集(アクセサリー色素):クロロフィルが吸収しにくい波長域の光を補い、光合成に利用できる範囲を広げます。
  • 光保護(非光化学的消光、NPQ):過剰な光エネルギーを熱として散逸させ、光合成系の機器(特に光化学系II)を保護します。これにはビオラキサンチン⇄アントラキサンチン⇄ゼアキサンチンの可逆反応(キサントフィルサイクル)が重要です。
  • 抗酸化作用:活性酸素種の消去を助け、膜脂質やタンパク質の酸化的損傷を抑えます。
  • 膜の構造安定化:光合成膜(チラコイド膜)に埋め込まれ、タンパク質複合体の配置や機能を安定させます。

クロロフィルとの違い

  • 化学的特徴:クロロフィルは環状のマグネシウム錯体(ポルフィリン環)を持つ一方、キサントフィルは長いイソプレノイド骨格に酸素を持つカロテノイドの酸化型(カロテノイド類)です。
  • 吸収スペクトル:クロロフィルは赤・青領域を強く吸収し緑色を反射するのに対し、キサントフィルは青域の光を吸収して黄色〜オレンジ色に見えます。
  • 機能の違い:クロロフィルは光エネルギーを直接電気化学エネルギーに変換する反応中心色素として不可欠。一方、キサントフィルは補助的な光捕集と主に光保護・抗酸化の役割を担います。

季節変化(秋の色づき)と見え方

秋に葉が黄色やオレンジに変わるのは、クロロフィルが分解されて光合成が停止する一方で、分解されにくいカロテノイド(キサントフィルやカロテン類)が葉に残るためです。これにより普段は隠れている黄色が表面化します。

キサントフィルサイクル(光環境への応答)

強光下では、ビオラキサンチンが段階的に脱エポキシ化されてアントラキサンチン、さらにゼアキサンチンへと変換されることで、過剰なエネルギーを効率よく熱として散逸します。光が弱くなると酵素反応により逆方向に戻り、光捕集効率を回復します。

植物外での利用と人間への影響

  • ルテインやゼアキサンチンはヒトの網膜(黄斑)に蓄積され、紫外線やブルーライトによる酸化的損傷から目を守るとされるため、サプリメントや食品の機能成分として注目されています。
  • 食材ではホウレンソウ、ケール、ブロッコリー、卵黄などに多く含まれます。

合成と測定

キサントフィルは植物体内でイソプレノイド合成経路(プラスチド内のMEP経路)から作られるカロテノイドの一種です。研究や品質管理ではHPLC(高速液体クロマトグラフィー)や吸収・蛍光スペクトルによって同定・定量されます。

まとめ

キサントフィルは単に「黄色い色素」ではなく、光合成の効率化や光ストレスからの保護、抗酸化など重要な生理機能を持つカロテノイドです。クロロフィルとは別の役割を担い、季節や光環境に応じて植物の色や機能に大きく寄与します。

卵黄の色は、キサントフィル色素によるものです。Zoom
卵黄の色は、キサントフィル色素によるものです。



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